第55話 雫ちゃんは負けず嫌い
俺は気持ちが乱れながらも、なんとか後半のバイトを乗り切ることが出来た。
今日はみんなのサポートもあり、ミスはせずに済んだ。
みんなは、俺の不調を〈PV映像〉の疲れからくる集中力の欠如だと考えているだろうが、事実は全く違う。
もしこのことを蜜柑以外の人に話したら、店の雰囲気は一瞬で最悪になるだろう……。
俺は閉店作業を済ませ、2階に上がる。
みんなは既にバイトは上がっている。
「爪が甘いねぇ〜、浦島さんは」
このリビングから、聞き慣れない男の声が聞こえてくる。
「田嶋先輩……毎回のことですけど、オセロ強いですね」
俺は光の溢れる、リビングの扉を開くと、賑やかな光景が目に映った。
どうやらバイト上がりの雫ちゃんと田嶋先輩がオセロ対決をしていたようで、蜜柑もその様子を近くで見守っていた。
「あ、つばさ、お疲れ様〜。お前もオセロやらないか?」
声の主は、田嶋先輩であった。
「つばさくん、お疲れ様! 田嶋先輩、めちゃくちゃ強いんだよ」
リビングに入った途端、二人に勝負を勧められる。
「に、西城さん……これ、冷たいお茶です」
「桃果ちゃん、ありがとう!」
桃果ちゃんが氷入りの緑茶を出してくれた。
その緑茶をガブ飲みしていると、今日の夜ご飯が目に入ってきた。
「昨日作った料理か! なんて豪華なんだ」
並んでいるのは、唐揚げ、チキン南蛮、カレー、鶏皮チップスなどなど……。
相変わらず、これでもかというほどの「鳥料理パレード」である。
「そういえば、先輩はなぜいるんですか?」
「そりゃあ、こんなに料理があったら、四人じゃ食べきれないでしょうが」
確かに、机の上には凄まじい量の料理が並んでいる。
しかし、先輩は知らないのだろう。
蜜柑も桃果ちゃんも、かなりの大食いであることを。
「そうですね……多分、大丈夫だと思いますけど」
俺はそう返しながら、二人の大食いコンビの方を向いた。
「な、何よ……その視線は……」
「な、何かすごく失礼なことを考えてる視線を感じました」
案の定、二人は俺の失礼な思考を読み取ったらしい。
「つばさ? 私はね、好き好んで食べてるわけじゃないの。残したら勿体無い……そう思うから、使命感で食べきってるの。わかる?」
――そうは言うが、夏祭りに行った時は、自分から片っ端に注文していただろ……
「わ、私も同じです……それに、いろいろなものを食べた方が、料理の幅も広がりますよね」
――その割には、〈fish and coffee〉に偵察に行った時は、同じような魚料理をたくさん頼んでいたよな……
「桃果ちゃん? 失礼しちゃうね?」
「ほ、本当ですね……木ノ下先輩」
大食いコンビの二人は、妙なところで団結力を高めていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ゲーム好きな女の子って、いいですよね。
もし「続きが気になる!」「面白い!」と思っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】から評価やブックマークをいただけると、執筆の励みになります!




