第52話:番外編 桃果ちゃんの憂鬱
西城さんと木ノ下さんが、珈琲の撮影をしていた時の出来事である。
「わかってるって……」
離れた場所から二人の様子を伺っていた私は、胸の奥がチリチリと焼けるような感覚に陥っていた。
珈琲の撮影に没頭している二人の声が、私の耳に嫌でも入ってくる。
――二人とも距離が近いな……
ファインダーを一緒に覗き込んだり、機材を受け渡したりするたびに、二人の肩や指先が何度も触れ合っている。
――もしも、木ノ下さんがその気があったら……
私は、この住み込みバイトで、西城さんとの距離を詰めようと色々と計画を立てていた。
だが、今の光景を見せつけられては、焦らざるを得ない。
私は静かに、現状の分析を始めた。
――本命は間違いなく、浦島さん
ただ、西城さんは「浦島さんには彼氏がいる」と言っていた。
もしそれが本当なら、最大の壁は回避できていることになる。
――そうなると、対抗馬は木ノ下さん
二人は同じ高校から専門学校であり、将来は同じ業種に進むだろう。
きっと二人だけで、通ずる世界もあるはず。
――木ノ下さんを、徹底的にマークしないと
しかし、現実は厳しい。
店の宣伝のPVを作るために、料理は浦島さんが担当し、撮影は木ノ下さんが担っている。
料理の腕も浦島さんには程遠く、撮影なんて素人も同然。
――私も何か、西城さんの手助けにならないと
技術で力になれないなら、せめて彼が疲れたとき、悩んでいるとき。
一人になった瞬間に、一番に寄り添える存在になろう。
私は、小さく拳を握り、自分の戦い方を心に決めたのだった。
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