第48話 文化祭:後編 蜜柑とつばさ
蜜柑は、学校が終わると、すぐに帰宅した。
俺は学校に残り、クラスメイトたちに指示を飛ばす。
「蜜柑は大丈夫なの? 目の下クマ凄かったけど……」
女子が心配そうに呟く。
正直、俺だってかなり心配である。
そしてその予感は的中し、蜜柑は翌日、高熱を出して欠席してしまった。
俺は蜜柑に無理をさせてしまった責任を痛感しながら、今自分にできることを必死に考えた。
「みんな、残り2つの映像は、蜜柑が作ってくれている。文化祭までには届くと思うから、先に装飾を作り始めよう」
クラスメイトにそう伝えるが、困惑している人ばかりであった。
「先にって言うけど……映像もないのに作れるの?」
確かに無謀だ。
だが、俺は蜜柑と何度も打ち合わせを重ねてきた。
蜜柑なら、この場面でどんな恐怖をぶつけてくるか。
「大丈夫だ。蜜柑の感性を読み切れる!」
俺は、更に頭をフル回転させて、イメージをクラスメイトに伝えた。
「西城ー、ここはこんな感じか?」
「どれどれー? うんうん。ここを、こうして、ここにお化けの装飾を……」
「西城くーん? ここは、骸骨?」
「はいはい、どれどれ……うん! これで良いよ!」
クラスメイト30人を1人で回していく。
出来れば、分身の術でも使いたい気分であった……。
いつの間にか、窓の外は真っ暗になっていた。
「よし、完成!」
クラスメイトと協力した結果、なんとか装飾が出来上がった。
これで、ひと段落……後は、蜜柑の映像と整合性を取れれば完璧である。
◇
翌日、蜜柑の熱は下がり、学校に登校した。
昨日ぐっすり眠れたのか、目の下のクマは綺麗に消えていた。
「みんな、昨日は休んでしまってごめんなさい」
放課後の作業前、蜜柑は神妙な面持ちでクラスメイトに謝罪した。
「早速、残りの映像を見てもらって、装飾の作成に取り掛かりたいと思います」
蜜柑は、教室のモニターに作成した映像を映し出した。
映し出された映像は、鳥肌が立つほどの完成度だった。
クラスメイトから「すごい」や「怖っ!」などの感想が聞こえてくる。
蜜柑はどこか誇らしげに、少し照れたように笑った。
「みんな、ありがとう! 早速これに合わせて装飾を作っていこう!」
意気込む蜜柑だったが、ふと異変に気づいたようであった。
何故か、クラスメイトたちが誰も動き出そうとしない。
「みんな? どうしたの?」
蜜柑は不思議そうに、クラスメイトの顔色を伺う。
「……私の映像、あんまり良くなかった?」
「いや、そんなことない。最高だったよ」
クラスメイトの男子が蜜柑に声かけた。
「ならなんで、みんな動き出さないの??」
蜜柑が慌てる中、クラスメイトは微笑みだし、ある1箇所に指を指した。
蜜柑は、不思議そうに指された方向を見る。
「これは……!」
そう、蜜柑が見た先には、俺の指示でクラスメイトと作った装飾が置いてあった。
「なんで? 私の映像マッチしてるような、装飾ばかり……!」
「昨日、西城くんが、蜜柑が作る映像を読んで、私たちに的確に指示を出してたのよ……本当にイメージ通りで驚いちゃった」
「え? つばさくんが??」
蜜柑は唖然として、俺の顔と装飾を何度も見比べていた。
しかし、そのお陰で、残りの準備時間をお化け役の演技の練習に振り切ることが出来た。
そして、俺たちは、優秀賞を獲得したのであった。




