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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ


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第44話 住み込みバイト 〜観察〜

 俺は、構成案を練りながら、夕方のシフトに合わせて店内へ向かった。

 更衣室で着替えを済ませ、店内へ繋がる厨房の扉を開ける。


「つばさくん? 案は思いついたの?」


 厨房で料理を作っている雫ちゃんが、不安そうに声をかけて来た。

 しかし、どこか期待を込めた視線にも見えた。


「うん、なんとなく、方向性は見えてきたよ」


「そっか……あとで、私にも詳しく聞かせてね」


「雫ちゃんも、何か良い案あったら教えてね」


 そう話していると……


「つばさ、俺も話を聞いたぞ。そして、良い案を思いついたら、伝えるな」


「あ、ありがとうございます! 田嶋先輩」


 田嶋先輩も、試行錯誤してくれるようだ。


 店内に出ると、蜜柑みかんの他にも、桃果ちゃんが注文を受け付けていた。

 午後は休みのはずなのに、俺の代わりに、苦手なウェイトレスをやってくれていたようだ。


「桃果ちゃん、ありがとう! あとは俺がやるから」


「に、西城さん! お疲れ様です、大丈夫ですよ、これくらい……っ」


 控えめに笑う彼女だが、額にはうっすらと汗が浮かんでいる。

 夏頃から「殻を破りたい」と接客を志願するようになった。

 彼女の成長が、今はとても心強かった。


 俺は、賑やかなお店をテーマに撮影するために、いつも以上に店内を観察しながら、仕事を進めた。


 まずは蜜柑……。


「アイスコーヒーですね! 少々お待ちくださーい!」


「おじいちゃん! いつもありがとうね! こないだ言ってたお孫さんの話、どうなった?」


「そうなんですか?? 今度行ってみますね!」


 ――相変わらずのコミュニケーション能力だ


 流石、俺が看板娘候補として、スカウトしただけのことはある。

 蜜柑はどんなお客さんにも、笑顔で接する。

 この店を賑やかにしている要因のひとつだろう。


 次は厨房か。


「つばさくん! 2卓へお願い!」


「あ、おっけー」


 ウェイターをこなしながら、厨房を見に行く余裕はない。

 ここは仕方がない……。

 後で、雫ちゃんと桃果ちゃんに雰囲気を聞いてみるか。


 ◇


 ようやく閉店の時間を迎えた。

 普段より気を配って仕事したから、いつもより疲れた気がする。

 俺は、最後に閉店作業を終え、2階へ向かった。


「に、西城さん、お疲れさまです」


 リビングで、桃果ちゃんが迎えてくれた。


「桃果ちゃん、お疲れ様!」


「今日のご飯、お魚のムニエルにしてみました。お口に合うか分かりませんが……」


「うわ、本格的! 美味しそう!」


「は、はい……自信作です!」


 食卓には、昨日の鶏肉料理と雰囲気が変わり、魚料理が並ぶ。

 俺は、辺りを見渡したが、雫ちゃんと蜜柑が見当たらない。


「あれ、2人はどこいったの?」


「ふ、2人はお風呂に入ってます」


「え? 一緒に入ってるの??」


「はい……その方が、光熱費が浮くからって……」


 正直、驚いた。

 最近仲良くなってきているとは思っていたが、一緒にお風呂に入るまでになっているとは。


 男と女で感性は違うのだろうか。

 俺は、冷蔵庫から冷えたお茶を取り出して、一口飲んだ。


「に、西城さん!」


「ん?」


「1人のお風呂が寂しかったから、私も一緒にお風呂、入りますか……?」


「ブッ!!  ゲホッ、ゴホッ!!」


 桃果ちゃんの突然の大胆発言に、飲んでいたお茶を吹き出した。


「な、何を言っているの?」


「あ、あぁ、ごめんなさい、変なこと言っちゃって……」


 俺の吹いたお茶を慌てて拭く桃果ちゃんに、静止をかける。


「こ、こないだ雫ちゃんに言われたでしょ? 女の子の体は簡単に見せるものじゃないって……」


「そ、そうでした……!  雫さんに、また怒られちゃいますね。ぜ、前言撤回します」


 この子は、どこまで本気で言っているのか、わからない。

 俺は、今日はずっと考え事をしていた。

 創作のプレッシャーで凝り固まっていた頭が、彼女の《《冗談》》?のおかげで、ふっと軽くなった気がした。

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