第43話 住み込みバイト 〜構成〜
俺は、コンテストに向け、映像作成の準備を進めた。
後半のシフトに関しては、「忙しい時間帯以外は、一旦出なくて良いから、案を捻り出してみて!」と雫ちゃんに言われた。
蜜柑にも、「言ったからには、最後まで責任持って作りなよ! 何か案が思いついたら、伝えに行くね!」と、ゲキを飛ばされた。
いつも映像を作るよりも重圧を感じる。
今まで何気なく作っていたが、今回は喫茶『alive』の未来がかかっている。
――失敗は許されない
俺は、まずは構成を考えることにした。
この店の長所はやはり、料理の質の高さ。
雫ちゃんの腕はもちろんのこと、田嶋兄妹の腕も素晴らしい。
俺が作る時は……来てほしくはないが、よく放ってきている気はしている。
まだまだ長所はある。
コーヒーは美味しいし、種類もある。
店長の淹れるコーヒーは格別に美味しいが、蜜柑の淹れるコーヒーも様になってきている。
そして、立地もかなり良い。
駅も近いし、展示されるスーパーとも距離は近い。
この3個をアピールしていきたい。
(コン! コン!)
俺が、悩んでいるとドアがノックされた。
「はーい! どうぞー!」
「に、西城さん、お疲れ様です」
ドアが開くと、桃果ちゃんが、部屋に入ってきた。
「せ、先輩たちから聞きました。宣伝の映像作ってるんですよね」
「そうだよー!」
「じゅ、順調ですか?」
「大体の構成は思いついたんだけどね」
「こうせい??」
そうだった、桃果ちゃんは映像に関しては、素人であった。
「そう、視聴者の方に伝えたいメッセージやストーリーなどを、どのような順番や組み立てで、配置するかを考えているの、レシピみたいなものだね!」
「な、なるほど……! 調味料や具材をどの順番に入れるかを考えてるってことですね!」
「そういうこと」
伝わったかは分からないが、〈レシピ〉という、良い例えを思いついた。
「桃果ちゃんは、この店の1番の長所ってなんだと思う??」
「ちょ、長所ですか??」
「そう、長所!」
俺は、試しに桃果ちゃんに、聞くことにした。
桃果ちゃんは、しばらく悩んだ。
「そ、そうですね、やはり、賑やかなところじゃないですか??」
「賑やかなところか……」
確かに、この喫茶店は賑やかである。
店員とお客さんは、よく話しているし、オフの時もボードゲームをしたり、〈賄宴〉をしたり、住み込みバイトをしたりしている。
ここは、実際に働かないと分からない部分である。
「他のクリエイターの人たちで、実際にその店で働いている人は少ない……」
「に、西城さん??」
俺がボソボソと喋った声に、桃果ちゃんが反応する。
「そうか! そこを伝えられれば……!」
「び、びっくりした」
「あ、ごめんごめん!」
俺が急に大きな声を出したことに、桃果ちゃんは驚いてしまった。
「ありがとう! 桃果ちゃん! 良い構成が思いつきそうだ!」
「そ、そうですか……お役に立てて良かったです」
そう言うと、桃果ちゃんは嬉しそうに部屋を出ていった。




