第42話 住み込みバイト 〜覚悟〜
俺は、店の宣伝用の映像を作ることを決めた。
しかし、いくつか課題がある。
この電子掲示板に載せるためには、月1回行われるコンテストで、4作品が選ばれるようである。
その4作品が、1ヶ月1日3回流れるらしい。
しかも、その締め切りは3日後。
映像は30秒と、かなり尺が短いのが救いではあるが、かなりきつい日程になりそうである。
まずは、お店のメンバーに相談してみるか。
幸い、住み込みバイト期間中であるため、協力は仰げそうである。
俺は、コンテストのチラシを持ち、忘れずにコーヒーフィルターを買い、喫茶『alive』に戻った。
◇
俺は買ってきたコーヒーフィルターをカウンターに置き、2階へ登った。
「みんな! 良いアイディアを思いついた」
「おかえりー!」
「おかえりー、アイス冷蔵庫にあるよ!」
リビングに行くと、雫ちゃんはお皿を洗い、蜜柑はアイスを食べながら、テレビを見ていた。
――バイトの休憩時間とは思えない光景であった
まだ、17時までは、1時間ある。
その光景を見ると、後半を休みたくなった。
いやいや、違う。休んでは行けない。
「つばさくん? 良いアイディアって、店の宣伝の件??」
「そう! これに応募するってどう??」
俺は、雫ちゃんにコンテストのチラシを見せた。
「コンテスト?」
「そう! コンテスト!!」
雫ちゃんは、不思議そうにチラシを見つめていた。
そして、蜜柑もアイスを片手に、コンテストのチラシを見にきた。
「ふーん、なるほどね。選ばれると、スーパーの掲示板に流れるようになるんだ」
「そう! すごく良いアイディアじゃない??」
「そうだね、確かに良いアイディアだと思うけど」
「けど……? 何??」
蜜柑は、残っているアイスを食べ切った。
「このコンテストって、商店街の人たちが、映像系の学生や有志の学生に力を借りて、作るものだったよ?」
「え、そうなの??」
「そうだよ、うちの学校にも来てたよ。多分、由宇希も今作ってるよ?」
「え、由宇希も作ってるの??」
由宇希は、専門学校からの親友であり、ゲーム友達でもある。
まさか、その由宇希と戦うことになるのか。
「その由宇希さんって人は、すごい人なの??」
雫ちゃんの問いに、俺は顔を引きつらせた。
「あぁ、最近は、ゲーム配信者として活動しているけど、息抜きで配信の中で映像を作ったりすると、そっちの方が視聴数が伸びるって……ゲームより視聴数多いから、悩んでいたよ」
由宇希は、イラストも描けるし、映像の構成を考えるのがピカイチで上手い。
4枠のうち1枠は、彼で確定だろう。
「まぁ残り3枠あるから……」
参ったな……俺は、構成を由宇希に相談する予定であった。
「残り3枠って言うけど、他も強者が多いんじゃない?」
「そ、それもそうか……」
蜜柑が現実を突きつけてきた。
ちょっと前の覚悟はどこに行ったのか。
俺は自身が少しずつなくなってきた。
「大丈夫! 私たちなら出来る!」
「え?」
そんな俺の背中を押したのは、雫ちゃんの真っ直ぐな言葉だった。
「映像のことはよく分からない……期限も短くて、満足いくものが出来ないかもしれない。だけど、私が料理を完璧に作るよ。それを素材として使えば、なんとかなる! もちろん、つばさくんの力も信じてるけどね」
自分の料理を信じてるのと同時に、俺への信頼も感じた。
正直、ライバルを知り、現実に戻ってくると、自信がなくなってしまったが、やるしかない。
この短い期間で、なんとしても、期待に応えて見せると心に決めた。




