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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ


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第41話 住み込みバイト 〜俺に出来ること〜

 喫茶『alive』は、ランチタイムのピークを迎えていた。


 今朝知ってしまった、雫ちゃんの過去。

 あれだけ辛い思いをしても、彼女はこの店のために必死に尽くしている。


 それなら、俺もこの店に出来ることはないか。


「つばさくーん? 3卓のお皿を片して」


「……」


「つばさくん!! 手が止まってる!」


「あ、悪い! すぐ行く!」


 蜜柑の鋭い声で我に返る。


「しっかりしてよ、寝不足? ……あ、昨日の課題のせい?」


「いや、大丈夫。体はピンピンしてるから」


 心配そうに覗き込んでくる蜜柑を誤魔化し、笑いを返す。

 一晩くらいの徹夜で音を上げるほど柔な体じゃない。

 しかし、頭の中は「雫ちゃんの力になりたい」という思いでいっぱいであった。


 ◇


 時刻は午後3時。


 今日はやけに時間が経つのが早かった。

 店は特に混んでいなかったが、ずっと考え事をしていたからだろうか。


「みんなお疲れ様! お店の残り物だけど、お昼の賄いを作ったから、みんなで食べようか」


「わーい! 美味しそう!!」


 雫ちゃんが、お昼ご飯を作ってくれた。

 それに蜜柑が飛びついた。


「そういえば、桃果とうかちゃんは??」


「桃果ちゃんなら、午後休みだから、お出かけに行ったよ」


「そうか、午後はお休みだったね」

 

 今日の午後は、桃果ちゃんはお休み。

 午後休みの桃果ちゃんの代わりにシフトに入る田嶋先輩の到着を待つ。

 すると、雫ちゃんがふとため息をついた。


「……最近、お店の売り上げが少し落ちてきているんだよね」


「えっ、そうなの?」


「そう、店長の代わりに売り上げを勘定したんだけど、4月よりも若干落ちてるんだよね」


 雫ちゃんは、店長に代わって帳簿もつけているらしい。


「新メニューも作ったけど、あまり売り上げに影響がないんだよね……」


 雫ちゃんは、新メニューを何種類か開発した。

 新メニューを開発しても、客足に劇的な変化はないという。


「何か、効果的な宣伝ができればいいんだけど……」


 蜜柑も雫ちゃんと一緒に悩んでいる。


 宣伝する方法か。

 何かアイディアが思いつけば良いが……。


「つばさくん」


「雫ちゃん? どうした?」


「そういえば、コーヒーフィルターが無くなりそうだったから、ご飯食べたら買いに行ってきてくれない?」


「え、いいけど」


 俺は二つ返事で答えた。

 すると、雫ちゃんはペコリと頷いた。


「つばさくん、ここが安いよ」


 蜜柑は、安いお店を教えてくれた。

 店長が蜜柑に教えていたようだ。

 流石、バリスタの金の卵。


「ありがとう、じゃあ〜ちょっと行ってくるね」


 俺は、ご飯を食べ終え、買い出しに向かった。


 ◇


 俺は、蜜柑に教わった「地域最安値」のスーパーに到着した。

  

 ――さて、どこにコーヒーフィルターはどこにあるかなー?


 俺は、店の中をふらついた。

 すると、目の前に見覚えのあるパン屋さんの映像が目に入ってきた。


『みんなで行こう!  商店街のパン屋さん!』


 これは、電子掲示板??

 このスーパーには、電子掲示板が置いてある。

 しかも、地元に寄り添ったお店の広告である。


 ――もしかして、この広告に載せられるような映像を作れば、宣伝になるのでは?


 近隣住民が必ず立ち寄るこの場所に、喫茶『alive』の魅力を詰め込んだ映像を流せたら?

 雫ちゃんの料理、店の雰囲気、そして……。


 なんとなく入った、映像系の専門学校。

 映像専攻して、初めて「形にしたい」明確な目的が見えた瞬間だった。


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