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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ


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第34話 住み込みバイト 〜開幕〜

 杏樹あんじゅのソフトボールの練習を終え、次の日を迎えた。


「じゃあ、兄ちゃん! 行って来るね!」


「おぉー気をつけてね! オーバーワークだけはするなよー」


「わかってるよ! 兄ちゃんも仲直りしてね」


「あいよ!」


 今日から、杏樹もソフトボールの合宿。

 この家には、両親が夜帰って来ること以外は、しばらく誰も帰ってこない。


 俺と杏樹は、昨日河川敷から帰って来てから、賞味期限が近いものをたくさん消費した。

 そのため、今日は朝からミートソースになった。

 半ライスとおかず単品で十分な俺にとっては、朝からはちょっと重すぎた。


 しかし、今日から長い1週間が始まる。

 バイト代はすごく期待できる。

 ただ、女性陣3人と過ごさなくてはならない。

 かなり気を使う1週間になることは間違いない。


 俺は、着替えなどをある程度持ち、家から出た。


 ◇


 電車が遅延したため、時間はかなりギリギリ。

 俺は小走りでお店に向かう。


 少し走っただけで、大汗になる暑さ。

 なんとかバイト先に着いた俺は、バイト先のドアを開ける。

 中には既に、雫ちゃんと桃果とうかちゃん、そして田嶋先輩が開店準備を進めていた。

 

 ――あれ、蜜柑はいないのか


「おはようございま……」


「つばさ!! お前妹に手を出したら、許さないからな??」


 田嶋先輩は、俺が店内に入って来るや否や、俺に会議まで話しかけて来た。

 視界がグラグラする理由は、田嶋先輩に両肩を掴まれ、頭をゆらゆら揺らされているからだ……。


 田嶋先輩にも勿論、俺も泊まることは話しているだろう。


「聞いているのか! つばさ!!」


 ――ちゃあんと、聞こえているよぉお


 頭がゆらゆら揺れる。


「にいにい……あ、お兄ちゃん? あれ、外ではなんて呼んでるっけ……」


「外でも、《《にいにい》》でいいんだよ??」


「わ、私がなんとなく嫌なの!」


「え、そ、そんな……!!」


 勝手に2人で盛り上がる。

 ほんの気持ち程度、田島先輩の元気が無くなった。


「とにかく、つばさだから信頼するけど、他の男だったら俺も泊まっているからね! 裏切るなよ!」


「はい、勿論です」


 連日、釘を刺された。

 確かに、他所よそから見たら、不安でしょうがないだろう。


「に、西城さんは、そんなことしないよ?」


「桃果! なぜそんなことがわかるんだ!」


「な、何日も一緒にいればわかるよ」


 桃果ちゃんが仲裁に入ったが、何気ない一言が田嶋先輩に引っかかったようだ。

 そこまで言われると、フラグにしか聞こえない。


「あのーつばさくーん? 早く着替えないと、開店の時間になっちゃうよー?」


「あれ? もうそんな時間??」


 カウンターで会話を見守っていた雫ちゃんが時間を指差す。

 雫ちゃんが話を切ってくれた。


 今日は電車の遅延もあって、ギリギリなことを忘れていた。

 俺は慌てて、更衣室に着替えをしに行った。

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