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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ


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第33話 忘れた頃に幼馴染はやって来る

 俺は、杏樹あんじゅにコテンパンに打たれ、意気消沈していた。

 2人は、河川敷のベンチで休憩をしていた。

 

「もうそろそろ帰るか」


「えぇ? まだ足りないよ??」


「明日から合宿だろ? しっかりと休めって」


 杏樹は、まだ元気溌剌である。

 ちょっとタフすぎるところは、長所でもあり短所でもあるだろう。


「わかったよー。帰ろう帰ろう」


 俺と杏樹は、ベンチから立ち上がり、河川敷を後にする。

 河川敷から出るための階段を登っていると、後ろから自転車のベルが(リンリン)と鳴り響いた。


「よ、つばさに杏樹ちゃん! 君らはいつも2人でふらついているね」


 声をかけて来たのは、夏祭かさい沙織さおり

 俺の幼馴染であり、高校で杏樹と同じソフトボール部に所属している妹を持つ。


「沙織。久しぶり!」


 ずいぶん久々に会った。

 顔を見るのは、蜜柑と半紙を買いに行った日以来である。


「沙織さん! こんばんは! 真彩まあやちゃんは元気にやってますよ!」


「おぉ! それは良かった! 最近行けてなかったから不安だったんだよ」


 沙織の妹の真彩。

 彼女が出る試合は、沙織も気になっている模様。

 よく沙織と一緒に2人の妹の出る試合は、応援をしに行っていた。


 だが、最近は2人とも見に行けていない。


「最近行けなくて、ごめんね。バイトが忙しくて」


「気にしていないですよ! また暇になったら見に来てください!」


 月日が経つのは早いもので、俺も5月に見に行ったきり、応援しに行ってない。

 かといって、今は真夏で見に行く気が起きない。


「最近、兄ちゃんもバイト忙しくて、来てないんですよ」


「あれ? そうなの? てっきり言ってるものだと思っていたわ」


「私より、可愛いバイト先の子達がいるらしくて……」


 ――また余計な事を言いよって……


 俺は愛想笑いで誤魔化す。

 しかし、沙織には全く通用しない。


「まぁ、この人も男の子だからね」


「いろんな人に唾つけないように、杏樹ちゃんが見張ってないと駄目だよ?」


「もちろん! 見張ってます! でも、兄ちゃんに良い彼女候補がいるので、今度紹介しますね」


 何を言っているのか。

 彼女候補か……誰のことを言っているのだろう。


「明日から、女の子3人と住み込みでバイトするらしいですよ?」


 また余計なことを杏樹は口走る。

 それを聞いた時の沙織の顔は、まるで汚物を見るようであった。


「おい、何か誤解をしているぞ? 店長に理由があって、仕事出来なくなったから、手伝いするためだぞ?」


「破廉恥なことはだめだよ? そんなことしたら、幼馴染として、かなり軽蔑するし、両親にも報告するから」


 そんなことする予定はないが、肝に銘じておく。

 沙織は、恋愛関係にはかなり厳しい。

 特に、遊んでいる男女に向けては、いつも冷たい視線を送る。

 この話を聞いても、口を聞いてくれているのはある意味奇跡かもしれない。


「まぁ月末には、夏祭家と西城家が集まるから、その時に変な報告がないことを祈るわ」


 ――何その集まり?


 俺は全く聞いていなかった。

 杏樹の方を見ても、「何ですか? その集まり?」と質問をしていた。


 俺だけではなかったようだ。


「え? 聞いていないの?」


「いや、聞いていないよ」


 沙織は驚いていた。

 どうやら、西城家の両親から、久々に集まらないかと夏祭家に連絡があったようだ。


「流石、うちの両親だね」


「全く連絡がない」


 俺の両親は大事な連絡を忘れる癖がある。

 そのお陰で、何度大変になったことか……。


「とにかく、その時に変なことを御両親に報告されないように注意しなさいよ」


 沙織は本当に連絡をするタイプだ。

 何も起こす気はないけど、とにかく注意しようと思う。


 8月は最後まで、気が抜けなさそうだ。

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