第26話 雫の人生相談
喫茶『alive』にて、馬場さんと桃果ちゃんが口論して2日が経った。
桃果ちゃんは、今日シフトの予定であったが、お休みをしていた。
そして、蜜柑とも話すことができていない。
この2日で、かなり居づらい雰囲気になってしまった。
「つばさくん、今日店長いないし、桃果ちゃんもいないから、夜の営業はお休みだって」
今日のシフトは、俺と雫ちゃんの2人であった。
最近、店長は店を空けることが多い。
時刻は15時頃。今日の営業は終了しており、雫ちゃんは、厨房でお皿を洗っている。
雫ちゃんは、あの日はいなかったため、いつも通り接してくれている。
俺は、適当に返事をした。
すると、雫ちゃんが気に障ったのか、皿洗いで冷えた手で頬を触ってきた。
「冷たっ!」
俺は、ビックリしてしまい、変な声を出してしまった。
「なんか、元気ない??」
雫ちゃんが、洗い終わった皿を拭きながら、質問をしてきた。
「私で良かったら、相談聞くよ??」
蜜柑の話は、俺が悪いから、今度会うときに素直に謝ろうと思っている。
ただ、桃果ちゃんはどうであろう。
事故だったとはいい、彼女の心の声を聞いてしまった以上、返事は返さないといけない。
好きだった人に、自分が告白をされた話を話すのは、ちょっと勇気がいるなと思った。
「うーん、どうしようかな」
「困ったときは、お互い様だよ。私に話してごらん」
「少し話は長くなるよ?」
雫ちゃんは恋愛経験は豊富そう。
ここは素直に、相談をしてみるか。
「実はね……」
俺はバイト終わりに、近くのファミリーレストランで、雫ちゃんに相談することとした。
◇
俺は、2日前に起こった出来事を、雫ちゃんに相談をした。
改めて、整理してあの日の出来事を話す。
あの日は、色々と濃すぎる1日であった。
ある程度話し終えた、雫ちゃんが放った第一声はこうであった。
「なるほどねー。酷い女だね」
みんな口を揃えて言う。
馬場さんは、完全にこの店の敵になっている。
「つばさくんは、桃果ちゃんのことどう思っているの??」
雫ちゃんは、ドリンクバーの紅茶を飲みながら、俺に質問をした。
俺は、桃果ちゃんのことをどう思っているのか。
桃果ちゃんは、可愛い後輩と思っていた。
後輩や友達としては好きであるが、恋愛感情では考えたことがなかった。
「恋愛感情で考えたことがなかったから、テンパっているんだよね」
「なるほどね、私も異性の友達に告白されたときは、どうやって返事すれば良いか迷ったからね」
恐らく、桃果ちゃんも自分の本心は、気持ちを伝えるつもりは、あの時はなかっただろう。
きっと、告白すると決めて話す感情と、無意識に言ってしまった感情では、本人の心の整理も追いついていないであろう。
「つばさくん、これは私の予想だけど」
「予想??」
「つばさくんは、バイト先の関係が全て壊れてしまうことを恐れているんじゃないかなって」
「関係が壊れる……」
雫ちゃんが予想していることは正しい。
俺は、あの喫茶店のバイトが好きだ。
そして、従業員も含めて、あそこで働いていることに生きがいを感じている。
「関係を壊したくないなら、桃果ちゃんの返事は曖昧にしちゃだめだよ。本人には、返事がないと言うことは振られた。振られていづらいと思っちゃうと思うからね」
雫ちゃんの意見は真意をついている。
俺が逆の立場でも、告白の返事がなければ、振られたと思ってしまうに違いない。
「嫌いじゃないなら、そう伝えないと。まぁ好きなら付き合えばいいんじゃないかな?」
雫ちゃんは、紅茶を飲み終えて、おかわりを注ぎに行った。
ありがとう、雫ちゃん。
恐らく、相談をしなかったら、曖昧で誤魔化す、最低な人間になっていたかもしれない。
その後、雫ちゃんと1時間ほどお店にいた。
昔の俺が見ていたら、きっと羨ましがるだろうが、そんなことを考える余裕はなかった。




