第23話 失恋との再会
夏祭りの次の日。
「つばさくんと蜜柑ちゃんが二人でデートしていたのよ」
今日のシフトは、俺と川昇先輩と蜜柑と桃果ちゃんの4人シフトである。
バイト準備早々に、川昇先輩が桃果ちゃんに、夏祭りに行っていたことを話している。
――予想通りか
俺は、川昇先輩がこの話をすることを予想出来ていた。
蜜柑も予想はしていたようで、あまり動じていない。
桃果ちゃんも別にリアクションはない。
2人とも、川昇先輩の扱いを分かっている。
動揺する姿を見たいだけなのであろう。
「桃果ちゃんは、なんとも思わないの?? つばさくんに彼女いたんだよー??」
「な、何も思いませんよ……」
川昇先輩の《《だる絡み》》は続く。
「西城さんは、気を使える優しい人なので、ちょっと抜けている木ノ下先輩にあっていると思います」
「はぁ? 急に何言うの? 桃果ちゃん!」
桃果ちゃんが、急に蜜柑に棘をむけてきた。
あまり絡みがなくても、蜜柑の気が抜けていることを見抜くとは、なかなかお目が高い。
蜜柑は、後輩に急に気が抜けていると言われ、唖然としていた。
「私、気抜けていないよね? しっかりしてるよね?」
――なんと言い返すべきか
俺は蜜柑は、しっかりしている方だと思っていた。
しかし、最近の蜜柑を振り返ると、居酒屋で寝てしまったり、杏樹とコスプレをするために、実家に出入りする。
普通、男の家には行かないのではと思う。
祭りでも、なんだかんだ一番食べていたし、その後ちゃっかり実家にも来ていた。
知らないうちに、両親とも仲良くなっていた。
俺ですら、最近会っていないのに。
「ちょっとつばさくん? その目はなんですか?」
どうやら、考えているうちに、視線が冷たくなっていたようだ。
俺は慌てて、「蜜柑は元気だし、しっかりしているよ」と当たり障りない返答をした。
「は? 馬鹿にしてるの? もう知らない!」
どうやら、適当な返事をバレてしまったようだ。
みかんを怒らせてしまったようだ。
「あぁ怒らせちゃった! つばさくん何やってるんだか」
――川昇先輩、あなたのせいですよ
「西城さん、木ノ下先輩に謝ってください」
――桃果ちゃん? あなたも原因あるよ?
俺は、《《完全》》に2人に流されてしまった。
どうやって、仲直りしようかと考えるために、一旦店の外に出ることにした。
◇
さて、どうやって仲直りするか。
俺は店の路地裏で、朝に杏樹から貰ったグミを食べながら考えていた。
――このグミ美味しい
味はいちご味。最近バズっている商品だ。
このグミを渡したら、機嫌が直らないかを考えていたが、食べ物で釣ったら、逆効果になりそうな気がした。
グミをもう2つ食べて、店内に戻ろうとすると、俺は声をかけられた。
「あれ? つばさくん?」
聞き覚えるのある少し高い声。
聞いたのは数ヶ月ぶりのはず……であるが、鮮明に思い出した。
俺は人違いを長い振り向いた。
するとそこには、俺に彼氏がいないと嘘をついた『茜』こと、馬場さんがいたのであった。




