第21話 妹の才能
季節はついに8月。
本格的な夏に突入し、学生たちも夏休みに突入した。
エアコンが苦手な俺は、クーラーをつけっぱなしで寝れない。
そのため、暑さにうなされながら眼を覚ます。
そして、お風呂に入る。
――夏の日のシャワーは気持ちいい
俺は長風呂も好きなので、ぬるま湯にも入る。
風呂釜には、杏樹が夏祭りで当てたピヨピヨなる、ひよこのおもちゃが置いてある。
――アヒルじゃないのか
こういうおもちゃは、アヒルだと思っていた。
お風呂から上がると、部活休みの杏樹が朝飯を作ってくれていた。
「おかえり! 兄ちゃん!」
今日も杏樹は、朝から元気が良い。
2人は、食卓につき、朝ごはんを食べ始める。
今日のメニューは、味噌汁と納豆、卵焼きに白米という、日本の朝食の定番のようなメニューである。
「兄ちゃん? 今日駅前で祭りだよ! 一緒に行かない??」
杏樹からの祭りのお誘い。
今日は非番なので、行けないこともない。
「いいけど、お小遣いは1000円って決めておくからね」
そういうと、杏樹はちょっと顔色が曇った。
去年の祭りでは、チョコバナナとりんご飴を2個ずつ、焼きそばと焼きとうもろこし、わたあめを1個ずつ、お面のくじを1回買わされた。
お小遣いを決めておかないと、爆買いしてしまう。
それに、こんなに甘いものを食べ続けたら、健康面で不安になる。
俺は、鬼になった。
軽く杏樹を睨む視線を送ると、指を振り、「そんなに食べれるわけないじゃない」と返した。
朝ごはんを食べ終えると、杏樹が祭りに行く準備を開始した。
「兄ちゃん! 蜜柑さんも来れるって!」
杏樹は、蜜柑も誘っていたようだ。
あの居酒屋の日以降、蜜柑はちょくちょく、遊びに来るようになっている。
2人でコスプレを楽しんでいるようだ。
「兄ちゃん? この服装でいいかな?」
杏樹が来ていたのは、花柄メインの浴衣であった。
――杏樹、着付けできるのか
俺は、杏樹が着付けできることに驚いた。
そういえば、前に母さんに教わっていたな。
「蜜柑さんの浴衣も着付けるから、兄ちゃんは蜜柑さんを迎えに行ってきて!」
暑いから家から出たくは無かったが、蜜柑も来るなら、食べ切ってしまったアイスもついでに買ってこようと思い、駅まで迎えに行くことにした。
◇
昼前の駅前ロータリー。
俺は、車で蜜柑を迎えに来ていた。
しばらくすると、蜜柑が駅から出てきた。
――やけに大荷物……
両手には、大きな紙袋が2つあった。
蜜柑は車を見つけ、車に乗車した。
「ありがとー迎えにきてくれて」
蜜柑は移動だけで疲れていた。
俺は、駅に着く前に買っておいた飲み物を蜜柑に渡した。
「何を持ってきたの??」
「え、新作だよ、新作! せっかく車で来てくれるなら、いつもよりたくさん持ってこようかなと思って!」
どうやら、新作のコスプレ衣装をたくさん持ってきたようだ。
これは、祭り行くまでに時間がかかりそうだ。
ちょっとすると、俺たちは実家に着いた。
家に着き、ドアを開けた途端、みかんが手厚く歓迎した。
――まるで、主人を待ってる犬のようだ
「蜜柑ちゃん! たくさん持ってきたよー」
「ありがとうございます!」
2人は、短期間でまるで親友のようになっている。
2人は、杏樹の部屋に入って行った。
「早めに祭り行ってから、遊べよー?」
「はーい、そうするよー」
今日のスケジュールは、俺には知らされていない。
どうやら、先に祭りに行くようで、蜜柑の浴衣の着付けを始まったようだ。
杏樹の部屋の扉が開いた。
蜜柑の着付けは終了したようだ。
「つばさくん? どうかな??」
蜜柑は浴衣姿に包まれていた。
杏樹の浴衣と似たような柄であり、色違いの浴衣であった。
「おー! 似合ってるよ!」
すごく似合っていた。
流石、杏樹が選んだ浴衣である。
蜜柑は和服がよく似合うようだ。
「じゃあ兄ちゃんも浴衣着るよ!」
――え、俺も着るの??
俺も杏樹の部屋に強制的に連れて行かれ、浴衣を着ることとなった。
――俺の浴衣も用意してくれてたのか
二人浴衣着てるのに、ひとり着ないわけには行かないと思い、杏樹に着付けを任せることにした。
杏樹は手慣れた手つきで、着付けを済ませていく。
そして、あっという間に着付けは完了した。
「兄ちゃん! 似合ってるよ!」
着せてくれたのは、杏樹と蜜柑が着ているものと対になりそうな、青い浴衣であった。
「めっちゃいいじゃん!」
俺は、浴衣を素直に気に入った。
「つばさくん! 似合ってるよ!」
蜜柑も褒めてくれた。少し照れくさい。
しかし、これで3人とも準備は完了した。
「じゃあ! 兄ちゃん! 蜜柑お姉ちゃん! 祭りは出発だよー!」
杏樹の合図で、俺たち3人は祭りに出発した。




