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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ


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第17話 桃果VS雫 料理対決

 雫ちゃんと桃果ちゃんの料理対決当日。


 店内は、イベント仕様に変更されていた。

 対象の商品を購入するとシールが貰える。

 美味しくて、メニューに追加して欲しいとなったら、ボードにシールを貼ってもらう仕組みである。


 対決の時間は、モーニングからランチタイムまでの8時から15時までである。


「それでは、お互いの料理を作ってもらいます」


 店の開店前、料理対決の準備が始まった。

 手際良く、料理を始める2人。

 俺と店長、蜜柑の3人は、店内で装飾の最終仕上げを行っていた。


 俺は、ひとつ気になっていることがあった。


「店長? 何故、料理対決開いたんですか?」


 そう、何故料理対決を開いたかが疑問であった。

 雫ちゃんは、この店のバイトを何年も経験している。対する桃果ちゃんは、まだ1ヶ月も満たないし、学年も違う。


 ――あまりにも実績が違いすぎるのではないか


「え? 催し物が好きだからだよー?」


 そんな簡単な話なのだろうか。

 下馬評では、雫ちゃんが圧倒的に優勢であろう。

 もしら桃果ちゃんが負けたら、せっかく料理の出来る桃果ちゃんがバイトを辞めてしまう可能性もある。


「まぁ気になるよね。答えは、料理対決を見てたらわかるよ、きっとね」

 

 やはり何か意図があるようだ。

 

 ◇

 

 しばらくすると、料理が完成した。


 そして、2人が作った料理が並べられた。


 桃果ちゃんは、打ち合わせ通りの『フィッシュアンドチップス』を作り上げた。

 何回か試食をしたが食べやすいように、ひと口サイズにアップデートされていた。


 対する雫ちゃんの料理はと言うと。

 これは、お酒のおつまみの定番である。


 ――これは、鶏皮チップス!


 まさかの2人とも揚げ物系の料理であった。

 どちらの料理も美味しそうである。


「それでは、プレゼンお願いします。まずは、浦島さんからどうぞ!!」


「私の作った料理は〈鶏皮チップス〉です。うちのお店は、手軽に摘める料理、そこを埋める料理が必要かと思いました。またテイクアウトも出来るように、カリカリ感やジューシー感を工夫しました」

 

 雫ちゃんも揚げ物系に焦点を当ててきたようだ。

 喫茶『alive』はお酒の提供はしていないが、テイクアウトで人気の出そうな商品を用意したのだ。


 ――素晴らしい視点である


 それでは、次に田嶋桃果さん。お願いします。


「は、はい。私が作ったのは〈フィッシュアンドチップス〉……です。わ、私も揚げ物系に焦点を置いて、こちらを作りました。ま、また、一口サイズでポテトとコンビで頼めるのも良いかと思いました。れ、冷凍もできるので、提供も手軽です」


 桃果ちゃんは、しっかりとプレゼン出来ている。

 ポテトとコンビで出せると言う、強みもしっかりと出せている。


「2人とも、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします!」


 ついにお店が開いた。

 前々からイベントを告知していたからか、お客さんは凄い数であった。


 せっかくのイベントの日。

 水を差さないようにしなきゃ……。


 俺は休む暇もなく、注文を受け、料理を届ける。

 注文量は、桃果ちゃんのチップスの方が頼まれている。

 しかし、お客さんは帰りのお土産として、雫ちゃんのチップスを買う人も多く、両社一歩も譲らない展開である。


「つばさくん、どっちが勝つかわからないね」


 蜜柑もオーダー毎に、ボードを見たり、結果が気になっているようだ。

 蜜柑は、開店前に2人の新商品を2人前ずつ食べてしまい、給料から引かれるらしい。

 

 ◇


 昼過ぎの15時


 ランチタイムの営業が終了し、料理対決は大繁盛で終わることとなった。

 休憩時間となり、俺と蜜柑はお店の片付け、雫ちゃんと桃果ちゃんは、店長に呼び出され、売り上げをチェックしている。


 そして、運命の結果発表の時間。


 店長は、全員をお店に呼び出した。


「みんな、今日までご協力ありがとう! お陰様で売り上げは、かなりウハウハでした」


 働いててもわかったが、売り上げは絶好調だったようだ。


「それでは、本日の料理対決の勝者を発表します」


 店内に緊張が走る……。


「今回の勝者は……」






「浦島さんの〈鶏皮チップス〉です!」


 結果は、雫ちゃんの勝ちであった。

 売上数は、桃果ちゃんがわずかに上回ったが、お土産に出来ることや、こちらも冷凍として保存もできることが評価されたようだ。


「よし!」


 雫ちゃんは、小さくガッツポーズをした。

 桃果ちゃんも悔しそうではあるが、そこまで落ち込んでいる様子はなく、売り上げに大きく貢献でき満足もしているようだ。


「う、浦島先輩……おめでとうございます! いつか、リベンジします!」


「桃果ちゃん、今日はありがとうね! いつでも受け付けてるよ!」


「は、はい……!!」


 2人はお互いの健闘を讃え、雫ちゃんと桃果ちゃんの料理対決は大繁盛で幕を閉じた。


 ◇


 その夜、俺と蜜柑、雫ちゃんは1日シフトが入っていた。


 俺は、この料理対決の真相をずっと気になっていた。

 ある程度、答えは思いついたが、確信は無かったので、店長に聞いてみることとした。


「店長。そろそろ、料理対決の真相を話してください」


 店長は、カウンターで閉店作業をしていたが、店長が売上の書いてあるノートを机に置いた。


「そんなに真実が知りたいなら、教えてあげよう」


 俺はついに、料理対決の真相を聞けることとなった。

番外編 桃果は念入り?


 雫ちゃんと桃果とうかちゃんの料理対決前、喫茶〈fish and coffee〉に視察に行った、その日の夜のことであった。


 俺は、喫茶『alive』で働いていると、今日はシフトはないはずであった、桃果ちゃんがお店に来た。


「に、西城さん。これ食べてみてください」


 桃果ちゃんは紙袋の中から、小包を取り出した。


 その中には、視察後に作った〈フィッシュアンドチップス〉が入っていた。


 どうやら、俺に試食して欲しかったようだ。

 俺は更衣室に戻り、そこで一口食べてみた。


 ――美味しいけど、ちょっとべちゃっとしてる?


 べちゃっとしているのは仕方がない。

 おそらく完成してから、1時間弱は経っている。


「ちょ、ちょっとべちゃっとしてしまいましたね」


 桃果ちゃんは、俺の感想を一言聞き、すぐに帰って行った。

 まさか、試食をしてもらうためだけに、店に来たのか??


 ――頑張っているんだな! 

 

 そんな桃果ちゃんの試食会は一回だけではなく……。


 翌日、夕方からシフトだったため、俺は16時半ごろに出勤をした。


「に、西城さん、お疲れさまです」


「あれ? 桃果ちゃん? お疲れさま」


「今日も作ってきたので、食べてください!」


 桃果ちゃんは、今日は非番であるが、試作品を持って来ていたのだ。

 食べてみると、昨日よりも暖かく、べちゃっともしていない。

 おそらく、学校が終わってからすぐに持ってきたのだろう。


「うん! 美味しい! ちょっと冷めてもサクサク感残ってるよ!」


「あ、ありがとうございます。もう少し……」


 またもや、桃果ちゃんは感想を聞いてすぐに帰った。

 喫茶店の厨房を借りれば良いのにと思ったが、今日シフトであった、雫ちゃんに手の内を見せたくないのだろう。


 閉店後の20時過ぎ


「に、西城さん、お願いします!」


 試食をする毎に、どんどん美味しくなっている。

 俺はこの日、桃果ちゃんを自宅まで送った。



 そして翌日は、シフトも入っていため、合間に試作品を作っていた。


 なんとこの日は、5回ほど試食をしたのであった。

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