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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ


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第13話 買い物デート

 蜜柑みかんが居酒屋で寝込んでしまい、実家に泊まってもらったり、更にはコスプレショーなどなどと、色々と大変な夜ではあったが、朝を迎えた。


 時刻は朝7時半過ぎ。

 昨日の大雨とは対照的に、今日は快晴。

 気温も7月並みの暑さになると予報があった。


「おはよ……にいちゃん」


「おはよう、朝起きれたんだな」


 昨日深夜まで続いたコスプレショーの影響か、杏樹あんじゅはいつもより起きる時間が遅かった。


 ――蜜柑の朝ごはんは、もう少し後にするか


 学校は午後からであり、蜜柑はもう少し寝かしてから起こすことにした。

 俺は先に杏樹の朝ごはんの用意とお弁当を手渡した。

 両親は、基本居酒屋の店で寝泊まりをしている。

 近いから家に帰ってくればとも思うが、俺と杏樹がしっかりしているからなのか、この家では2人で生活をしている。


「にいちゃん、ありがとう……」


 杏樹の目は空いていない。いつもは朝から元気だが、明らかに元気がなく、寝不足である。

 今日は朝練はないらしいが、放課後のソフトボール部の練習は出来るのだろうか。


「学校で寝るなよー?」


「寝ないよ……」


 これは寝そうなので、眠気覚ましの飴を渡した。


 朝ごはんを見ると、全て完食していた。

 今日のメニューは、ごはんとインスタントの味噌汁、お弁当の残りの唐揚げ、納豆である。


 ――眠くてもご飯は完食するんだな


 杏樹はしっかりとお腹を満たし「じゃあ行ってくるねー」と言い、学校へ向かった。


 ◇


 時刻は朝9時ごろ


 俺はそろそろ蜜柑を起こすかと思い、寝ている物置部屋に入った。

 蜜柑はまだ爆睡しており、俺はふと寝顔を見た。


 ――寝顔を見るのは、妹以外では初めてだな


 しばらく珍しそうに見ていると、蜜柑が視線を感じたのか、目を覚ました。

 俺は慌てて誤魔化した。


「おはよ……」


 蜜柑はゆっくりと布団から起き上がった。ちょっと服装が乱れていたので、慌ててそっぽを向いた。


「蜜柑、もう9時だよ。朝ごはんは用意してあるから、そろそろ学校の準備しないと」


「ありがとう……着替えたらリビング行くね」


 調子が狂いそうだ。

 俺は、蜜柑の分の朝ごはんも改めて用意した。


 しばらくすると蜜柑がリビングにやって来た。


「つばさくん、ちょっと買い物に付き合って欲しい」


「買い物?? 良いけど何買うの?」


「洋服が欲しいなと」


 蜜柑は、今日外泊する予定はなかったはず。

 ましてや昨日は大雨で今日は快晴。流石に女の子に2日連続の服を着せるわけにもいかないか。


「昨日のコスプレの服着ればいいじゃん」


 俺は昨日ノリノリで来ていた〈赤いチャイナ服〉を着ればと提案した。


「そんなの、誰にも見せられないよ」


「俺は見ちゃったけどな」


「まぁ、つばさくんならいいかなと」


 蜜柑は昨日の大胆な行動を思い出し、少し顔を赤くした。

 

 朝ごはんを食べ終え、準備も終わった俺たちは通学前に近くのショッピングモールで買い物をすることにした。


 ◇


 時刻は11時。学校までは、残り2時間。

 蜜柑は一旦、杏樹の服を借りて買い物に出ている。


 ――借りるなら、そのまま行けば良いのに……


 俺は、ふとそう思ったが、心に留めておこう。


 女の子の買い物は長いとよく聞くが、蜜柑はどうなのか。


 答えは〈長い〉である。


 もう1時間は洋服を選んでいる。俺は近くの本屋やゲームセンターで時間を潰そうかと思った。

 だが、蜜柑は「ひとりじゃ選べない!」と言うので、一緒に選んでいた。


「こっちの服とこっちの服。どっちが良いかな?」


 1つ目はカーキ色のワンピース。2つ目は茶色い落ち着いた感じのワンピース。

 好みは1つ目のワンピースであるが、蜜柑はどちらが気に入っているのだろうか。


 俺はそれとなく、1つ目は「明るくてオシャレな感じだね」と伝え、2つ目も「靴とかカバンとかにも合わせやすそうだね」と伝えた。


「うーん、結局どっちが似合ってると思う?」


 2択を迫られた。

 

 ――どちらを選ぶのが正解なのか


 答えは決まっている。


「1つ目の服かな? こっちの方が明るい蜜柑に合ってると思う」


 蜜柑は「私もそう思っていた」と言い、1つ目の服を購入した。

 どうやら、2択問題は正解したようだ。


 蜜柑は、洋服を着替えた。

 試着の時にも見たが、改めて見ると似合っている。


「付き合ってくれてありがとうね。あと、昨日も面倒見てくれてありがとう」


 昨日泊めたことと、買い物のお礼を改めて言った。

 そして、蜜柑は俺に〈あるもの〉を渡してきた。


「これは……マグカップ?」


「そう! 杏樹ちゃんと2人お揃いのやつ!」


 蜜柑は、洋服を買ったお店で、マグカップを見つけたようだ。

 そして、杏樹とお揃いのペンギンの絵が書いてあるマグカップを渡して来た。

 色は、水色と黄色と別々の色であった。


「え、ありがとう! 杏樹は黄色好きだから喜ぶよ!」


「また遊びに行くって、杏樹ちゃんに行っておいてね」


 蜜柑と杏樹は、一晩で仲良くなったみたいだ。

 蜜柑が買い物をしたかった理由は、杏樹へのお礼も買いたかったのかもしれない。


「俺も新しい蜜柑を見れてよかった」


「今度は、他のコスプレも見てほしいな」


 「気が向いたらね」と答えたが、少し興味を持ってしまった自分が悔しい。

 新しい()()を見れたが、新しい()()()も見てしまった気がした。


 昨日の夜には、どうなるかと思ったが、何だかんだ楽しい時間であった。


 買い物を終え、俺たち2人は学校へ向かった。





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