第11話 居酒屋ハプニング(仮)
俺は、バイトが終わり、まっすぐ家に帰るはずであった。
俺は何故か、居酒屋でサシ呑みをしていた。
「つばさくん! あの子は危険だよ! きっとあなたを弄ぶよぉ」
「また、あなたはその気になって、あの子に告白して振られるんだよ、わかってるぅぅ??」
――なぜ、俺は蜜柑とサシ呑みをしているのか
目の前には完全に酔っ払いとかした蜜柑。
机の上には、大量の料理が並んでいる。
蜜柑の面接が終わり、時刻は21時過ぎ。
俺は、バイトが終わった後、呼び出されていた。
携帯には「酒呑むぞ!」とメッセージが入っていた。
バイトもあって、「今から呑むのは面倒、疲れた」と返信した。
だが、「ならひとりで呑む!」と返ってきた。
俺と蜜柑は、専門学生2年。2人は先月にようやく20歳を迎え、お酒を嗜めるようになった。
流石に1人で呑ませるのは、危険だ。
最悪な事態を想定して、両親が営む、居酒屋で呑むことにした。
蜜柑は初めてお酒を呑んだのは、宅飲みと言っていた。
次の日に二日酔いで、学校に来ていたので、あまり酒は強く無いだろう。
明日は、幸いなことに学校は午後から。だが、あまり飲ませたくは無い。
「おい、蜜柑。これ以上呑むのはやめな?」
「なんだ?? 私が酒呑めないようにみえるってか??」
正直、あまり酒は呑んでいない。オレンジサワーと梅酒サワーの2杯。
それに、俺は注文の際、お母さんにこっそりアルコールを控えめにと話を通していた。
であるので、アルコールは微量なはずだ。
そうとも知らずに、蜜柑は3杯目のお酒を注文した。
「わたしはねぇ、あなたにこれ以上、悲しい思いをしてほしく無いっ! あなたには高嶺の花! だけど、裏がある! 絶対ある!!」
蜜柑はお酒を片手に、熱弁する。
正直、俺の初恋の相手をそこまで言ってほしくは無いと思ったが、俺は蜜柑に雫ちゃんが、初恋相手とは伝えてはいなかった。
「おまたせしました! アセロラサワーです」
ここのお店のアセロラサワーは美味しい。
俺も、最初にお酒を飲んだのは、このアセロラサワーである。
「ありがとぅございます……」
蜜柑は、目がウトウトしてきている。
――このままだと寝てしまう
俺は必死に蜜柑に声をかけるが、蜜柑は夢の世界に落ちてしまった。
「はぁ、どうしようか」
蜜柑をどう始末しようか、物騒な雰囲気で、悩んでいると、お母さんが近づいて来た。
「つばさ! 良かったわね! これで、お持ち帰りできるね!」
「母さん? 何言ってんだか」
お母さんは、なぜか嬉しそうだ。
この態度をみて、俺は疑問に思ったことがある。
――このお酒、アルコール多い??
俺は蜜柑の飲みかけの酒を少し飲んだ。
明らかに、俺のお酒よりアルコールが強い。
「おいおい、母さん。これ酒強くしたっしょ」
「あら? そう言うことじゃなかったの??」
「いやいや、明日も学校あるから、ほどほどにして欲しいって意味だったのに……」
お母さんの勘違いにより、蜜柑は酔っ払いとなってしまった。
店には、1時間もいなかったが、ここで寝かすわけにもいかない。
仕方がないので、実家におんぶで運ぶこととした。
実家であれば、妹もいるし安心だろう。
店から出ると背後から、お母さんがキラキラとした視線を感じた。
◇
時刻は夜21時半過ぎ
実家に着くと、杏樹が出迎えた。
「にいちゃん、おかえ……は!!!」
そういうと、杏樹は「失礼しました!」と言い、リビングに帰って行った。
「おーい、勘違いしてるぞー」とリビングに声 向けて声をかけたが、返答はなかった。
――さて、とりあえず俺の部屋でいいか?
――いや、一応女の子だし、男の部屋は嫌か
俺はとりあえず、物置の中に最近買い換えたベッドがあることを思い出し、そこで寝かせることとした。
俺は、杏樹に事情を説明して、着替えを用意してもらった。
幸いなことに、2人の体型は似ている。
用意している間も、杏樹は蜜柑のある部屋をチラチラ見る。
まるで、部屋に有名人が来たかのようだった。
「にいちゃんがまさか、女の子を連れ込むなんてね」
「そんなんじゃないよ」
「そんなこと言って、ちょっとは嬉しいんじゃないの??」
「いやーないな! もしそうなら実家に運んではいない!!」
「そ、そうだよねぇ」
俺のボケだったりであったが、杏樹からは軽蔑するような視線を感じた。
俺は蜜柑を凄く信頼しているし、尊敬をしている。
蜜柑は、本当に誰とでも仲良くなれる。
高校の時、誕生日が近く、出席番号が近いだけで、気さくに話しかけてくれた。
まさかここまで、付き合いが長くなるとは思わなかった。
◇
時刻は夜23時過ぎとなった。
「きゃぁぁぁぁああああ」
明日のお弁当の仕込みをしていると、蜜柑が寝ていた物置部屋から叫び声が聞こえた。
俺は、何かあったと思い、慌てて物置の扉を開けた。
「だいじょうぶ……か?」
俺には理解できない光景が目の前に広がった。
そこには、フリッフリの〈メイド服〉を持っている蜜柑がいた。
何故、こんなところにあるのだろうか。
「え? あれ? つばさくん? なぜここに??」
「何故って、ここは俺の実家だから」
一瞬状況を理解できないようであった。蜜柑は今日1日の出来事を振り返った。
そして、理解した。
蜜柑は酔っ払って、男の家に連れ込まれたのだと。
このままだと、俺が蜜柑に〈メイド服〉に着替えをしようとしたと勘違いされる。
蜜柑が〈メイド服〉を持って、こちらに冷たい視線を送ってくる。
――なんだ、この言い逃れできない状況は。杏樹だな? 普通の服を用意しろって、口を酸っぱく言ったのに。
しかし、そんなことどうでも良い。
杏樹を叱ろうとも思ったが、この〈メイド服〉持っていた事実に変わりはない。
なんとか、この状況を打破しなくては。




