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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ


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第8話 喫茶『alive』閉店危機?

 月日は流れ、6月の梅雨の時期。

 今年は特に雨が多く、湿気も特にすごい。

 癖毛会(自称)代表の妹、杏樹あんじゅにとっては、辛い毎日が続き、毎朝遅刻のピンチ……らしい。


 そんな中、あるお店にもピンチが迫っていた。


「まずいんですよ、田嶋くん、つばさくん」


 神妙は面立ちで、コーヒーを淹れる店長。

 休日のランチ後のこともあり、店は空いている。


「どうしたんですか? 店長」


 今日のシフトは、店長と田嶋先輩のみ。

 最近1週間は、川昇かわのぼり先輩も、就活のため、シフトに入っておらず、3日後までシフトが入らない。

 雫も3日後まで、シフトに入らない。つまり、俺と田嶋先輩は、4連勤が確定している。


「この店のスタッフが、来年2人いなくなってしまうんだよ!! 店の存続の危機だよ」


 喫茶『alive』は、店長とバイト4人のみ。

 来年、学校を卒業する川昇先輩と雫ちゃん。

 そして、再来年に卒業予定の俺と田嶋先輩。

 このまま、来年を迎えた場合、お店は開けなくなる。


「店長、バイト雇ったらどうですか?」

 

 田嶋先輩が真っ当な意見を店長にぶつけた。

 確かに、バイトを雇えば解決は出来る問題だ。


「確かにねぇ……雇えば人数は埋まるよ」


「なら、雇えばいいじゃないですか」


 店長は、沈黙を保つ。

 何かバイトを雇えない理由があるのか。

 そう疑問に思っていると、店長が口を開いた。


「うちのお店、客層はどんな感じだと思う?」


「平均年齢は、高めですかね、家族連れも多いかもしれないですね」


 店長の問いに、俺は答えた。

 すると、店長は持っていたマグカップをカウンターに置いた。


「うちの男女比は……??」


 なるほど……と理解した。

 雫ちゃんと川昇先輩は、2人とも喫茶『alive』の看板娘である。

 それに、2人を目当てに来る客も少なくない。

 考えたくないが、今も人が少ない……気がする。

 野球で言うと、ローテーションピッチャーが2人いなくなるほどの痛手だ。


「よし! 俺が宣伝隊長になるか!」


 っと、冗談混じりで、俺は話した。

 しかし、上品なボケをした俺には目もくれず、店長はすぐに話を切り替えた。


「田嶋くんとつばさくんの周りでバイト探している子はいないか?」


 2人は少し考えたが、答えは出なかった。


 無理難題を押し付けないでくれ。


 〈ミッション:バイトを雇え〉


 店長の依頼は、こうではない。


 〈ミッション:看板娘になりうるバイトを雇え〉 

 

 こうである。


 候補を思い浮かべたが、思いつかない。唯一思い付いたのは、妹の杏樹のみであった。

 俺は「シスコンか?」と思ったが、ソフト部に魂燃やす妹をスカウトするわけにはいかない。


 「いないな……」と小声が漏れた。


 重い空気の中、田嶋先輩が口を開いた。


「店長、ひとり心当たりがあります」


「ほ、本当か! 田嶋くん!」


「俺の妹はどうでしょうか! 可愛いですし、料理もできる! 今必要な人材です!」


 田嶋先輩は、眼光強く店長に提案する。

 俺も店長も、田嶋先輩がここまで饒舌になったことを知らなかった。

 

 ――俺の周りは、妹に甘い人ばかりだな


 さらに深掘りすると、田嶋先輩の妹は、料理系の大学1年生であり、バイトを探しているらしい。

 〈料理系の大学〉と聞き、店長は食いついた。


「もしかして、浦島さんの後継者となる存在かもしれない」


 店長は期待を寄せた。


 田嶋さんの妹とも電話を繋げ、話はあっという間にまとまり、3日後に面接を受けるようだ。

 電話が終わると、店長は俺に向かってプレッシャーをかけてくる。


「つばさくんもよろしくね! 給料上げるよ」


 ――俺も妹を……いや、無理か。


 ◇


 翌朝、俺は学校に向かうため、電車に乗る。


 ――昨日は大変だったな……


 店長から、バイトを探せと命令が下され、誰を誘うかを考えていた。


 電車に乗って4駅通過すると、蜜柑みかんが、電車に乗って来た。


「おはよう! つばさくん!」


「おはよー」


 俺は、電車の端っこの席に座っていた。ちょうど乗り換えで、隣が空いたので、そこにみかんが座って来た。


「つばさくんは、相変わらず朝弱いねぇ」


 朝強い人の方が珍しいと俺は思う。

 ただ、蜜柑はその珍しい人の部類だろう。


「昨日もバイトだったの??」


 学校でも、最近シフトが多いことは話していた。

 まだ1ヶ月しか働いていないが、仕事もかなり慣れた。


「あぁ〜人がいなくてさ、今年卒業の人が2人いるから、シフト入れないんだよね」


「そっか、元々人少ないって言ってたもんね」


 俺は店長からバイトを探していて、〈看板娘〉候補を探していることも蜜柑に伝えた。


「そう、だからバイトを……探してるんだけど」


 ――ちょっと待って?


 俺の周りには、〈看板娘〉になれる友達はいないと思っていた。

 ただ、蜜柑なら出来るのではないだろうか。

 蜜柑は、人見知りをしないし、愛嬌もある。それに、元バイト先はチェーンのレストランだったはず。


 ――接客も申し分ない


 俺は、蜜柑にバイト探していないかを聞いた。

 昔、今のバイト先の先輩が、性格がキツくて辞めたいけど、新しいのを探すのが面倒くさいと話していたのを思い出した。

 

「まぁ探していないことはないけど。もしかして私をスカウトしてるの?? そんなに私可愛いかな?」


 スカウトする相手を間違えたかもしれない。

 俺は取り下げようとした。

 すると蜜柑が「そんなに私が可愛くて、バイトして欲しいと言うなら、まずは面接を受けなきゃだね!」とノリノリになっていた。


 ――そこまでは言っていない


 蜜柑は来年卒業してしまうが、そこは誤魔化そう。


 とにかく、田嶋先輩と協力し2人の〈バイト候補〉を手に入れた。

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