令嬢と秘密のベランダ
ベリンダは侯爵令嬢でありながら、王太子の婚約者という重責を背負っていたが、小さな幸せを大切にする心を持っていた。
「ベリンダ、大丈夫? 元気出して!」
「ほらほら、宙返り~」
キラキラした鱗粉をまとう妖精たちが、ベリンダを元気づけようと踊っていた。
「ありがとう、皆。大丈夫よ。私は恵まれているわ」
ベリンダは微笑み、ベランダの椅子に身を預けた。
小さなテーブルにはお気に入りのコーヒーとチョコ、周囲には集めた植物が並び、珍しい花には妖精たちが集まっていた。
この憩いの時間が、彼女の心の支えだった。
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幼い頃から自由を制限されてきたベリンダにとって、ベランダは唯一の安らぎの場。
だが、王太子には「面白みのない女性」と映り、邪険に扱われ続けていた。
……そして、
「面白みのないお前とは婚約破棄だ! この可愛くて笑顔で俺の心を癒してくれるマーガレットを俺の新しい婚約者としよう!」
王宮の夜会でそう告げられたベリンダは、何も言い返さず、家のベランダに逃げ込んだ。
ベランダでは大事にしている花が咲き乱れ、妖精が遊んでいる。
「ベリンダ、どうしたの? 大丈夫?」
妖精が、ベリンダに寄ってきた。
「私は面白くもないし可愛くもないのよ。だから殿下に捨てられてしまったの」
「じゃあ、ベリンダは拾って良いの?」
ベリンダの言葉に妖精が無邪気に尋ねる。
ベリンダの頬には涙が伝っていた。
「泣かないで、ベリンダ。妖精の国で楽しく暮らそうよ」
妖精たちは彼女を囲み、光を降らせながら優しく誘った。
「行こうよ、ベリンダ。苦しいことも悲しいこともないよ」
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「ベリンダはどこだっ! 側妃にして政務をやらそうと思ったのに話の途中で逃げ出して!」
「ねえ、いいじゃない。ベリンダなんて。他の人に仕事をやらせればいいんだってー」
「そうはいくか!」
「えー?」
翌日、王太子が侯爵家を訪れるも、ベリンダは跡形もなく消えていた。
屋敷中が騒然とする中、突如妖精が現れた。
「あんなに頑張ってたベリンダ捨てるなんておかしいね。この人で良いの?」
「何よ、この変なの?」
突然現れた妖精に王太子に張り付いてたマーガレットが顔をしかめる。
妖精はマーガレットを指し、
「他の男とも裸で仲良くしてたのにね」
「不思議な人が好きな王子様」
と告げてケラケラ笑って消えた。
「な、なんだと!」
「そんなの知らない!」
蜂の巣をつついたような騒ぎの屋敷の中で、更に大騒ぎの喧嘩を始める王太子とマーガレットだった。
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