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3/3

episode.3

「お、おい!!あれはまずいんじゃないのか!?」

「…………」


 焦る魔王にニーナは黙って勇者を見据えている。その顔はいつにも増して真剣なものだった。


(参ったな……)


 ニーナ一人なら避けたついでに攻撃出来るが、今はポンコツ魔王様が一緒だ。

 自分を庇えば魔法を使えない魔王様はモロに攻撃を受け怪我を負う事になる。最悪、死ぬやもしれない。逆に魔王様を庇えば自身が怪我を負う可能が高い。


「おいっ!!」


 ニーナは自分の世界に入り込み、魔王の必死の呼びかけが聞こえない。


 そうこうしている内に、こちらの事情など全く知らない勇者の攻撃が始まってしまった。


 ドンッ!!ドカンッ!!


 城壁を次々に破壊して行くが、ニーナは気にすること無くブツブツしている。


「──ッち!!!」


 痺れを切らした魔王がニーナを腕に抱え、マントで隠しながら逃げ出した。


「えっ!?はっ!?ちょっと!!何してんですか!?女性の身体を許可なく触るのはセクハラですよ!!」

「この状況でセクハラと言えるお前の神経を疑うわ!!」


 魔王はニーナを抱えながらも落ちてくる瓦礫を器用に避ける。

 魔法は使えないが俊敏さは任せろと言うことだろうか。


(ふむ……これなら……)


 ニーナは必死に逃げ回る魔王の裾を引き、声を掛けた。


「このまま逃げながら攻撃を仕掛けます。なので、魔王様は私を隠しつつ円滑に攻撃のポーズを取ってください」

「……それは、俺の負担が大きくないか?」

「何事にも代償は付き物です」


 魔王は眉間に皺を寄せていたが、意を決したように前を見た。


 ──それが合図。


「久しぶりに使う魔法なので吹っ飛ばされないようにして下さいね」

「は!?おい、ちょっ──!!」


 慌てて止めに入ろうとする魔王だったが、声をかける間もなく目の前が光に包まれた。

 次の瞬間──


 ドーーーーンッ!!!!!


 猛烈な風と共に耳を劈くようなけたたましい音が聞こえた。


 土埃が上がる中、魔王はニーナをマントで守り、土埃が落ち着いた頃合で顔を上げると、目の前には先程とは打って変わった景色が広がっていた。


「な、な、なッ!!!」


 地面は抉れ、目の前の森は中心部辺りまで木々がなぎ倒された状態で、それはまさに災害クラス。


「やっべ……完全に加減間違えちゃった」


 てへっと可愛らしく舌を出しながら謝るニーナに魔王は呆れを通り越してに恐ろしいモノを見る様な目をしていた。


「まあ、殺してはいないから大丈夫よね!!」


 親指を立てながら爽快に笑うニーナを見て魔王は「……雇う相手を間違えた……」と今更になって後悔した。



 ❊❊❊



 勇者達の奇襲から数日経った。


 クルトを含めた勇者達はニーナが放った最後の一撃で完全に伸びてしまい、このまま置いとくのも邪魔だし目障りなので、ニーナが転移魔法で街に送り返した。


 するとすぐに魔王は恐ろしく強い。と言う風に広まり、魔王を相手にしようと言う者が大幅に激減。

 街には勇者とは名ばかりの無職者で溢れかえった。


 中には正義感溢れる者もいるが、ちょこっと魔法で脅すとすぐに逃げ帰る始末。最近ではめっきり人の姿も見なくなった。

 そうなるとニーナの出番は無くなる訳で、リストラに……なることも無く、魔族達と意気投合、和気あいあいと三食昼寝付きの生活をエンジョイしている。


(今更、元の人間社会(職場)には戻れない~)


 今日も今日とて侍女を集めて女子会を開いていたところにサイモンが飛び込んできた。


「ニーナ様!!大変です!!異世界から勇者が召喚されたようです!!」


 この世界の勇者がどいつもこいつも約立たずだと言うことに上の人間が気がついたらしく、今流行りの召喚なんぞに手を出した模様。


「ふ~ん」

「ふ~ん……って、そんな呑気にお茶を啜っている場合ではありませんよ!!」

「異世界から来たからって強いとは限らないじゃない」


 ド正論を吐いてやるとサイモンは口ごもった。


 物語では異世界の勇者は最強無敵のチート持ち。と言うのがお約束だろうが、現実はそんな甘くない。


 ニーナはのんびり構えながら再びお茶に手を伸ばした。その時──


 ドカンッ!!!!!


 背後の壁が音を立てて崩れた。


「おいっ!!!勇者が来たぞ!!!」


 慌てた魔王がニーナの部屋に飛び込んできた。


「折角のお茶会が……!!」

「そんな事言っている場合じゃない!!早いとこどうにかしろ!!」


 目の前に散乱したティーカップや茶菓子を見てニーナは静かに怒りに震えた。


 コックのバリーさんが丹精込めて作ったお菓子を……許すまじ!!


「魔王様!!出陣じゃ!!!」

「お、おう!!」


 杖を振りかざし、かっこよく決めた所で勇者の元へ……──







 ここは魔王の森……そこには恐ろしく強い魔王が君臨している。

 この森に足を踏み入れた者は地を這うような唸り声や叫び声を耳にすると言う。

 時折、女性の叫び声も聞こえると言うが……その声の正体は誰も知らない。










最後までお読み下さりありがとうございます!!


終わり方がイマイチなので、時期を見て長編にしようかと思っとります。

後々恋愛モノにする予定……

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