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7/11

夜会にて5

 「何を言ってるんだ?君は」

「あなたこそ何を言ってらっしゃるの?その宝石が処分されることにどれだけの経済的な価値があるかご存知?」

「経済価値?」

「そうですわ。」


ローザは毅然と男を見た。

分かっていないのだ、この国の貴族は。物事の本質というものを全く理解していない。


「いいですか?詳しいことは申し上げられませんが、その宝石は我が領民を潤すためのもの。たとえたった一粒でも、よその方の利益になってはならないのです」

「は?領民?」

「そう。領民です」

「なぜ我々が領民のことを気にかける必要が?」


 ―― 誰も彼も本当に。


 ハァーっと深いため息をついて、苛立ちを隠してニコリと美しく笑う。この際だから言いたいことを言っておこう。

「いい機会ですから、教えて差し上げますわね。この煌びやかなドレスも、豪華な食事も、全ては領民が運んで来るのです」

「……は?」

「領民が貧しければわたくしも貧しく、領民が豊かならばわたくしもそれにあやかれる。お分かりかしら?」

「領民の貧しさと我々は関係ないでしょう」


 ……この人とも話が通じそうにないわ


「……もう貴方と話す必要はありませんわね。わたくし、無駄な時間が嫌いなの。その宝石に関してはバルツ家から使いをやりますから、そのおつもりで。失礼ですが、お名前は?」

「……レナードです。レナード・コンフィ」

「では、コンフィ様。ご機嫌よう」


ローザはドレスをひるがえし、その場を去る。振り向いた風にあおられて、無性に自分の香水が香る。強く、むせかえる花の臭い。今日はこの臭いは好きじゃない。こんな場所に、もう用はない。



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