夜会にて
ローザ・バルツは美しかった。
金色の巻き毛に蒼い瞳。
意地悪そうに微笑む口元はピンク色。
誰から見ても完璧な美女。
しかも家柄も良く、大金持ち。
有無を言わさない圧倒的存在。それがローザだった。
目立つローザの噂は絶えない。どちらかというと悪い方に。
「ローザ様、何でもメイドをその場でクビにしたとか」
「まあ、なんてひどい」
「この間は持っていた宝石を全て処分して新しくされたそうよ」
「すぐ飽きてしまわれるのね!」
「とんでもない女ですわ!」
「あ!いらっしゃったわよ!」
煌びやかな夜会の中、豪奢な紫のドレスを着たローザが現れた瞬間、視線が彼女に集まる。
「あらローザ様。今日もお美しくて」
「まあ、そのドレス。派手派手しくて素晴らしいわ。」
「ホント、ローザ様はどれだけお金を使われても許されるご身分ですもの」
「私たちにはマネできませんわ」
少女たちは口々に上品な嫌味を浴びせてくる。
ローザは美しく微笑み、口を開いた。
「そうね。あなた方に私の真似は無理ですわ。せめてもう少し頭を使ってくださらないかしら」
「なっ」
「お金は稼いだ分だけ使えるもの。当たり前ですわ。自分に見合うものを身に着けなければ。買えないのなら無理して買うものではございませんわよ?」
ローザは少女たちを上から下まで見ながらクスクス笑う。
バカにしたような視線に、少女たちはカッとなる。
「それにこのドレスの布はうちの領民が丹精込めて作ったもの。目に止まって嬉しいわ。バルツ領の布をご存知ないかしら?ドレスの出来を気にするのなら、知っておいた方がよくてよ?」
確かに、ローザの領地の特産品の布は最高級品で有名だ。顔を真っ赤にして少女たちは口ごもる。
「では、ごきげんよう」
ローザは美しく笑い、優雅にその場を後にした。