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あそこから出たあと、先生を探しながら花流と話をしていた。
「お前は何か気づいたことはあったか?」
『ナーヤのこと?…あんな見た目であの口調は面白可愛かったね〜。態度はだいぶムカつくけど』
「……違う。未来のことでだ」
『えぇ…未来のこと?……特に変わってなかったよね?普通に寝てただけに見えた』
「それだけ?」
『おん。それだけ』
「あのな、思い出せ?さっき向こうにいたときに俺、お前、ナーヤにナイフが飛んできたろ?
でも考えてみろ、“未来にはナイフが飛んでいないんだ”。」
そう、あの時俺は、花流を蹴って避けさせ、ナーヤはナイフを浮遊させた。
けど、未来にはナイフが飛ばなかった。
まるで俺達だけを狙い、殺すかのように。
『あ〜ね、確かに。
…でもそれだけだとただ動ける人を狙ったってことにもならない?
ほら、僕たちはあそこから動けて、未来はあそこから動けなかったじゃん?』
「ただ動けないだけで狙わないか?普通なら動けなくても一応狙うだろ」
少なくとも俺は死んでいたり、重症でない限りナイフを飛ばさないのは不自然だと思っている。
もしかしたら寝たふりかもしれないしな。
「多分だが俺が思うに未来にナイフを飛ばさなかったのは─」
その時、
〚ざわざわ〛「…ん?」
〚がやがや〛『…何か騒がしいね』
俺達の後ろで生徒たちが密集して騒いでいた。
そんななか、1人だけ廊下の端を通ってこちらに向かって歩いてくる男子生徒が居た。
「?…何だあいつ」
取り敢えずいつでも短剣を出せよう、腰に手を当てる。
っとそんなふうに警戒していると、
〚あ、あの〜〛
『ん?…あ!陰キャ君だ〜』
「……ん?」
俺はあまりのあだ名の酷さに驚いた。
確かによく見るとぐるぐるメガネで猫背、そして本を前に抱えているし陰キャっぽく見えるが…。
それで良いのか!男子生徒よ!!
…ま、まぁ花流と知り合いなら警戒しなくていいか。
そう思い、腰から手をおろす。
すると花流が男子生徒に向こうで何があったのか聞き出してくれた。
どうやら陰キャが言うには救護室で十秋先生の悲鳴が聞こえたとのことらしい。
「先生もそうだが2人も心配だな」
『そうと決まれば急いで行こ!ありがとうね、陰キャ君!』
〚は、はい!〛
『じゃあ‘また’付き添いよろしく〜!』
〚は、はい…〛
…陰キャ君の反応見るにろくな付き添いじゃないな。
名前もひどいし可愛そうだな…。
よし、今度なにか奢ってあげよう。
そして俺たちは先生を探すことを止め、救護室へと戻っていった。