その後
俺の任務は、“未来”というメガネを掛けた女を攫うことだった。
なるべく人が少なくなる時に襲い気絶させ、“あの人”に持っていくのが任務。今はその移動中だ。
道中、多少手間がかかったがそれほどじゃない。
俺の能力の“隠密”と、相棒の“触れたものを爆弾に変える”能力があれば付いてくる者を倒し、逃げることだって簡単だった。
さっきの男だって相棒の能力で倒したしな。
そして、ある程度さっきの場所から進んだ時、そいつは居た。
「‘ども〜’」
短い黒色の髪で首輪を付けた女。見た目は…高校生ぐらいだろうか?
頭には獣みたいなもふもふの耳、尻には尻尾が生えていて見るからに獣人だと分かった。
が、スラッとした体型であまり強そうに見えなく、俺は舐めていた。
だからだろうか
「‘突然だけど…その左肩で担いでる子離してくれない?’」
〚……誰がお前みたいなやつの言う事を聞くか〛
いつも喋らずその場から逃げるのに反論してしまった。
…が舐めていても油断はしていなかった。
現に、俺の能力で存在感の消えた相棒が後ろから“大きめの石”を投げる。
それだけで、その石は爆弾に変わり、物に触れた瞬間爆発する。
ドーーーン
さっきの男のときよりも音がでかく、爆発範囲も広い。
終わったな……っと思いながら煙が舞う場をあとにし、走る。
そして女の居た場所を通り過ぎてからそれは起きた。
〚ッ!?〛
いきなり俺の左肩が軽くなり、燃えるように熱く、焼けるような痛みが。
見ると…そこにはあるはずの左肩が無かった。
驚いたのは一瞬、すぐに痛みが襲いかかった。
〚ぐあぁぁぁ!!〛
「‘…うるさいな’」
すると煙の中からそんな呑気な声が。
「‘片腕無くなったぐらいで大の大人がピーピーと’」
そいつは右手で俺の左肩であったものをくるくると回しながら、こちらへ歩み寄ってくる。
「‘あんなことしても私にこれっぽっちもダメージないんだから。
最初からその子を渡してくれたらよかったんだよ’」
そう言いつつ俺の左肩を俺の左肩に投げる。それだけで、
〚グハッ…〛
とあまりの痛さに苦痛の声が。
それでも俺は笑みをこぼし、
〚こんなことで“隠密の沖合”は終わらねぇんだよー!!〛
俺は見逃さなかった。
あの女が頭から血が流れており怪我をしているということを。
「‘これっぽっちもダメージない’」なんて言葉は嘘ということを。
俺は右手をポケットの中に突っ込み、あるものを取り出し、唱える。
〚“保護石!”対象!沖合!!長瀬!!〛
するとその瞬間、俺と相棒の体は光で包まれる。
そして相棒__もとい長瀬は待ってましたとばかりに女の元へ近づき………すぐ下の地面に触れる。
そして、触れられた地面は…爆発する。
「‘うわっ’」
俺等はあの保護石の効果、“一度だけ攻撃を無効”を受けていた。(※名前を言えば複数人可)
さっきの石であの怪我なら地面ごと爆発させれば、何もしてないあいつは動けなくなるだろう。
〚よし!逃げるぞ!!女はまた今度だ!!〛
そう言い脱出を図り、能力も発動し、逃げようとする……が。
ガツンッ
何かにぶつかった。
だが、辺りを見渡しても、何もなく景色が続くだけ。
でも、そこはちゃんと触れ、見えない壁があった。
〚嘘だろ…〛
更に後ろから、
「‘だから無理だって’」という声。
恐る恐る、後ろを振り向く。
「‘まぁ…頑張ってたみたいなだから少し凄いのを見せてあげるよ’」
そう言い、女は右手を自分の横に出し、“何もないところから真っ白な刀”を出した。
「‘それじゃあ行くよ?’」
そして女は刀をおもむろに振った。
ただそれだけ。それだけでポタッポタッっと体の所々から血が垂れる。
〚ガフッ〛
そこで俺らの意識は途絶え、倒れる。
─・─・─・─
「‘えー…。これ、さっきの応用みたいなものなんだけど…。
もう一個能力あったけど…別に使わなくても良さげだね’」
そう言い私は“横たわった2つの物”から目をそらし、未来へと向けた。そして、「‘解除’」と唱える。
すると、未来に張っていた防御結界が解除された。ついでに自分のも。
未来が爆発に巻き込まれなかったのも、私に攻撃が効かなかったのも、この結界のおかげ。…これも応用だけど。
「‘…そう考えるとやっぱり“あの人”の能力って凄いんだなぁ。
……もっと私も頑張らないと。
よしらまずはこの子を連れこう’」
そんな独り言を言いながら私は、未来をおんぶしながら、“転移”で帰った。