この日起こったこと……そして現在
「10年前の2140年9月17日午後19時30分。
この日、この時間帯。
人々はそれぞれ幸せな日々を過ごしていた。
そんなとき北海道、熊本、群馬の上空から数mほどの“丸い物体”が3つ落下していて、その物体は音もなく着弾した。
その瞬間、着弾した場所はほぼ壊滅、そしてその場所を中心に何百kmまでをも包み込む強い光が“パッ”っと辺りを照らしだす。
その光は、一瞬にして日本中を覆い隠した。
人々は建物の中外関係なく気を失った。
時間が経ち、少しずつ光が引いて辺りがようやく見えるようになった頃、意識を取り戻した人が見たのは、建物は崩壊し、地面には大小様々な穴がところどころに空いている光景だった。
そしてその穴から、様々な魔物がぞろぞろと湧く。
その非現実的な光景にパニックになり、
〚これは何だ〛
〚ハハ…これは何か悪い夢だ〛
〚夢なら覚めてくれ!〛
など現実から目を背けるような言葉を飛ばした。
そんな大声をあげている獲物を魔物が見逃すはずもなく、魔物は次々に襲っていく。
…ただ一つ、関東地方を除いては。
丸い物体の1つが群馬県に落ちた後、その物体が割れ、中から人間に近しい奴が出てくる。
そいつは少し辺りを見渡し、留まったあと、魔物のように人間を襲うかと思いきや逆に魔物を襲い、人間を助けるような動きをした。
そしてそいつはある程度魔物片付け終わった後、何故か崩壊した群馬県に向かい着くと、いきなりしゃがみ込み、動かなくなる。
少しすると、みるみるうちに家や抉れた地面が嘘かのように戻っていく。
そして数分後。
…群馬県には大きな学校ができた。
その学校がこの、○○○学校である。」
『………意味わかんない』
歴史の教科書を読んで教えていたらそんなことを言われた。
授業の合間に学校の屋上で教えろと言ったのはこいつなのに。
『何で群馬県に戻って、何で建物ができたの?』
「さぁ?その物体から出てきたやつに聞けよ。
…そもそもとしてこの話が本当なのかも知らないけどな。」
ただ確実なのは魔物は本当にいることだ。
なんせ俺達自身が見ているからな。
それと魔物以外にもう一つ、確実なものがある。
「…“能力”な〜」
そう、あの日以来、“能力”というものが使えるようになった。
例えば、手から炎を出すことや、単純に身体能力が上がったりと、人それぞれだ。
最初の頃は、炎…というか火種だったり、少し早くなったかな…程度だったらしい。
…が、どっから湧いてでたかわからないが、数人の能力に詳しい人や、あの日から突如出来た“学校”で使い方を学び、今では様々な応用が効くようになった。
そして学校では、近場の魔物や、まだ関東地方しか安全場がないため、遠くの地方を開拓、もしいたら人も保護するという活動も出来た。
あと貢献度によって、月に一回お金も支給される。
ちなみに、学校の授業数は週3回と少ない。
残りの4日は遊ぼうが、活動をしようが自分の実力にあう活動ならなんでも良いそうだ。
ちなみに授業をするクラスは大体上が強い人、下が弱い人、その真ん中が中間の人、と分かれている。
…が結構曖昧だ。
理由は強い奴が下の階へ行ったり、弱い奴が上の階へ行ったりとよくわからないやつがたまにいるからだ。
そして魔物の強さは南北に近いほど強くなり、逆に遠ければ弱い。
なのでここ群馬の周りにいる魔物はだいぶ弱い。
……そろそろ自己紹介をしておこう。
俺の名前は桐谷白夜17歳。
能力は“身体能力”と“物を出し入れする能力”だ。
身体能力は鍛錬する事に上がっていく。
もう一つはパッと聞いただけだとよくわからないと思うがこれがまた便利なものでこの中の容量は莫大ばくだいなものでほぼ何でも入る。
それこそ、家とかビルも入るぐらいだ。
ただなぜか身体能力だけ上がった気がしないんだよな。
……なぁぜなぁぜ?
『お〜い、厨二ー。生きてるかー?
…なんか「能力か…」って言ったあとフリーズしてどーしたん?やっぱ厨二病なのかー?』
「…お前のこと埋めようか?」
『あっ生きてた』
このアホの名前は紗雨花流。
俺と同じ17歳だ。
こいつの能力は“物に何かを付与する能力”で、物に何かを付与したり、何かを作るのが好きで、何かできたらその日のうちに俺に見せてくる。
こいつの能力の例えを言うと、どこにでもある剣があるとする。
この剣に“炎の力を付与”すると、剣を振ったときに炎を纏ったり、火球が出たりみたいな感じだ。
ついでに、これに風の力を付与すると炎の威力が上がるなど重ねて応用できたりもする。
分かると思うが普通に強い。
…が、本人は自覚がなく、
『……もう歴史いいや。(教科書ポイッ)
なぁ厨二!聞いてくれよ!昨日作ったこれなんだけどな〜?(あっこの袋じゃない)』
「うん」
など遊び感覚で楽しんでいる。
実はあの玉が入ってる袋も付与の効果ついてんだよな…。
まぁ俺は楽しめるほうが良いと思うけど。
ちなみに、さっきから花流が言っている“厨二”とは俺のあだ名のことだ。
『そうこれこれ。じゃん!使うと過去に戻れる玉!』
「うん」
理由は単純で、俺が左眼に“眼帯をしている”からだ。
これは妄想でも何でもなくてちょっと理由があって左眼で物を見れないからしているのだ。
それなのに皆は厨二ってあだ名を付けて。
……全く…やれやれだぜ。
『まぁまだ時間指定できないし、状態が不安定で戻ってこれるかわからないんだけどね』
「うん」
『……聞いてる?』
「うん」
『さてここで問題です。今日の天気は?』
「雲」
『単発で激レアゲット!』
「運」
『…ちょっと雲と雨の数が多いなぁ(?)』
「…雲雨芸芸」
『(…あ〜ね?…よし)…厨二って頭いいよね』
「うん」
『私って頭いいよね』
「ううん」
『いやそこ否定すんなよ!?…でもうんは繋げるんかい!!』
「悪ぃ悪ぃ。あっそろそろ時間だし教室行くぞw」
『…この玉投げてやろうかな』
…そんな冗談じゃ済まされない冗談を言われつつ、俺達は教室へ向かった。
屋上から階段で下に降り、廊下に出てすぐ、いかにもチンピラそうな男三人組がいた。
案の定こちらに気づくなり、
〚おい止まれお前ら〛
〚あのさ〜俺達さ、今金が無いんだよね〛
〚だから、ほら〛
そう言って男の一人が手を前に出してくる。
確かこいつ等は俺達中間のクラスでも高い部類に居るやつ……だった気がする。
…気がするだけね。
まぁ学校の中で弱そうな奴から金をとるとか弱い奴しかやらんけどな。
まぁ、ここで普通の生徒ならお金を出して行くだろう。
しかし、ここには実験好きが居る。
その花流は呆れたように、
『お金ね〜。しょうがないな〜』
と言いつつ、さっき出した玉と一緒の袋を漁る。
『はい!これ』
そう言って男の手に“札束”が乗る。
…何か花流の手に手榴弾の安全ピンみたいなの見えたんだが気のせいだろうか。
本人ニッコニコだし……怖。
〚おおっ!札束じゃねぇか。わかってんなお前〛
そんな事に気づかない男は目の前の札束に喜々する。
がそれもつかの間、
“ パァーーン ”
突如、札束がクラッカーのように破裂し、音が鳴る。
『あっごっめ〜ん!今の札束じゃなくてサプライズ用の札束みた〜い!本当にごめんねぇ〜!』
とても謝っている人に見えない謝り方をする花流。
これには男たちも怒り、
〚て、てめえっ!〛
っと花流に向かって殴りかかる。
…がそれを花流はひょいっと避けて、
『まぁまぁ。そんなかっかしないでぇ、頭冷やそうよ。
あっ、丁度いいのあるよ。
う〜んとね…あった!触れるとそこからシュワシュワ瞬間的に凍ってってしかも!そこから少しずつ凍ってく!
名付けて!“瞬間カチコチ炭酸水!"』
そう言って花流は水が入った容器を思いっきり振って、あたり構わずブシャーっとその炭酸水を撒いた。
〚はっこんなのどうってこと…〛
その時、炭酸水が足にかかった男はこっちに向かってこようとして、
〚あ?動かねぇ〛
その足が凍っていることに気づく。
〚な、何だこれ!?冷てぇ!〛
〚おっ俺の手がだんだん凍ってきてる!〛
男達は自分の足や、手など凍っていくところを見てパニックになる。
その様子を花流は笑いながら、
『あっははっ!それで冷えるでしょ!
あっあと、周りの人で少しでも水飛沫みずしぶきがかかった人はそこから少しずつ凍っていくから気をつけてね〜。
解凍方法……というかここに“高温手袋”置いとくから使ってね〜』
っと可愛く振る舞いながらも、男達のぎりぎり届かないところにその手袋を置く花流。
〚っく!足が凍って届かねぇ!〛
〚ちょっ!待ってくれ!〛
〚おいお前!そこの女だけじゃなくて俺も助け…ってどこ行くんだよ〜!〛
『じゃあ気を取り直して教室に向かおっか!』
「ソ…ソウダネ」
俺は後ろから聞こえてくる断末魔を聞きながらやりすぎでは?と思いつつも、男達を横目に教室へと向かった。
この物語を見てくださった方。
初めまして、水夜です。
誤字脱字があるかもしれませんが、温かい目で見守ってください。
もしも見つかったら、指摘してくださるとありがたいです。
まだ始めたてでわからないことも多々ありますが今後も宜しくお願いします。