-プロローグ- 窓辺にて青い鳥に未来を見る
秋空の下、窓を開けた。
空は抜けるような青で、外の空気が吸いたくなったのだ。身体を冷やしてしまうことは承知の上で、それすらも心地よいだろうと思ったから。
思った通り、冷たい空気が肺をきゅっと締めつける。
窓開けて息を吸う。たったそれだけのことなのに、乾いた風の匂いや、震える木々のささやきがあたしの五感を刺激する。普段から過保護に守られてきた身体のあちこちが、鋭敏に反応して痛みさえ伴う。
あたしは、んーっと深呼吸して伸びをした。
青く澄んだ空を一羽の鳥が飛んでいく。
バサバサバサと赴くままに風を切る翼を見て、なんて気持ち良さそうなんだろうと思った。
とっても羨ましくて、一歩もここから出られない自分が疎ましくて。
あたしにとっての空は、のっぺりとしていて、表情の変わらない天井だったから。
手をばたつかせても、揺れるのはベッドと、あたしの脳みそくらいだ。本当に手をばたばたさせてみたらクラっと来た。うぅ、頭が痛い。
あたしがこの空の下で許されていることは、動画を観たり、ゲームをしたり、漫画を読んだり、電子のペンを使ってデジタルの絵を描いたりすることくらいだった。
まあ、言ってしまえば許されたニート生活、のようなものだ。
学生時代、誰もが望んだものが今のあたしの手の中にはあって。そして、今のあたしが望むものを同年代の学生たちは持っている。ないものねだりは人間の性なのかもしれない。
とはいえ、今あるものを大切に想う気持ちも大切なわけで。取り分けあたしは選択肢が少なくて、今あるものを大切にせざるを得なかった。
まあ、その結果が、動画配信サイトを見まくって、気になったゲームや漫画に触れまくっている現状なわけで。これでいいのかな、と不安に思う。
もし、仮に。あたしが熱中している動画配信サイトの、見る側じゃなくて、作る側に立てるなら。
そうしたら、さっきの鳥が自由に空を飛んでみせたように、あたしも広い電脳世界を自由に飛び回れるのだろうかと思った。
初投稿で右も左も分かりませんが、投稿日(2021/03/31)が何かを始めるにはうってつけの日らしく、筆を執ってみました。
今日思い立って今日書き始めたので短くてすみません。
それでも何かしら、気持ちが前へ進むことを祈って。
ヒューマンドラマ系の作品になったらいいなあ。