真冬に亡くした君を想う
なかなか長めのが書けなくなってきた…。
私はこの乙女ゲームの世界の悪役公爵令嬢。ムーン・アストロロジー。転生者です。私にはまあ、悪役令嬢ですから当然婚約者がいるわけで、しかもそのお相手はよりにもよって乙女ゲームでも一番人気の王太子殿下。ヴンダー・ヴァークザーケン王太子殿下。ヒロインちゃんことマリアちゃんに奪われるのは時間の問題でしょう。
私は銀髪に藤色の瞳。きりっとした顔立ちのグラマラスな美人系。マリアちゃんは恐らく乙女ゲーム通りならスレンダーで、誰もが守ってあげたくなるタイプの華奢で可憐な可愛い系。勝ち目がない…。
そんな中で私は基本的には傍観の構えを崩さなかった。どうぞどうぞ、私は断罪されるより男を取られる方がまだマシ。最悪修道院に行けばいいし。それよりも断罪されてギロチン処刑の方が怖いわ。
と、思ってマリアちゃんには出来るだけ関わらず、むしろなんなら応援した。ヴンダー様と二人きりにさせる工作もした。うん、ヴンダー様も満更でもなさそうだし、いいんじゃない?
と、思っていたのに、急にヒロインちゃんが発狂した。
「あんた、なんで悪役令嬢のくせに私を虐めないのよ!」
「え」
「おかげで王太子殿下に庇われてよりラブラブになるルートから外れかかってるのよ!ていうか、殿下あんたにぞっこんじゃない!ふざけんじゃないわよ!」
何やらよくわかりませんが、これはまずい。
マリアちゃんがどこからか短剣を取り出す。
「あんたが…あんたさえいなければ!」
私は突然のことで動けない。刺される、と思ったその時、何故かヴンダー様が転移魔法で現れて、私の代わりに刺された。
マリアちゃんは顔面蒼白になり逃げ出す。
「ヴンダー様?」
「…よかった。ムーン、無事だね」
「…っ、良くないです!早く治癒魔法を!」
「さすがに、間に合わないよ。だから、最期まで僕の側にいて」
「ヴンダー様…」
「好きだ、ムーン。愛してる」
今更になって理解する。私、この人が好きだ。諦めよう諦めようとしていたけど、それは好きだったからこそだった。
「ヴンダー様、私も、お慕い申し上げております」
目を見開いて、でも次の瞬間には瞼を閉じるヴンダー様。それはもうとても優しい表情で、お眠りになった。
ー…
あれから数年。ヴンダー様を刺したマリアちゃんは早々に捕まって、処刑された。せっかくの美貌も、長らく牢に入れられた上処刑の野次馬たちに処刑直前まで石を投げつけられぼろぼろのボコボコだった。
ヴンダー様は、あの真冬の日にお亡くなりになられた。冬が来るたびヴンダー様を思う。
「ヴンダー様…」
「呼んだ?」
「え?」
そこには…ヴンダー様がいた。
「…?え、私を迎えに来てくださったのですか?」
「そうだよ。王太子としての私はあの時死に、今はただの宮廷魔術師ヴンダー・アストロロジーだ。あの女のおかげで自由が手に入った。そういう意味では、マリアとかいう馬鹿にも感謝だな」
「理解出来るようにおっしゃってください」
「あの騒動を利用して王籍を捨てたんだよ。魔法ですぐに傷を治してから、仮死状態になる魔法を使ったんだ。ムーンを王族なんてドロドロした世界においておきたくなかったからね。君の家、跡継ぎいないだろう?俺が婿養子になるよ」
「いや…いやいやいや、私跡継ぎとしての教育受けてますけど」
「じゃあ、二人で頑張っていこう!」
「…とりあえず一発殴らせてください」
「あー、うん」
私は本気でヴンダー様をぶん殴ります。
「痛…手加減してよ」
「いやですよ。どれだけ私が泣いたか聞きます?」
「いやそれは…面目無い」
「もう。…プロポーズ、待ってますから」
「…!任せてくれ!」
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