41.黒龍
岩肌のようなゴツゴツとした表面に、墨汁を塗りたくったような真っ黒な肌。それはまさしく、物語に出てくるような巨大なドラゴンだった!
「ルカさん! ドラゴンですよ! かっこいいです!」
「かっこいいのじゃ! わらわも乗ってみたいのじゃ!」
「馬鹿みたいなこと言ってる場合じゃないから! モンスターだから!」
冒険者ギルドにいた時に、『エルダリードラゴン』といったようなドラゴンという名前がついたモンスターたちを見てきたが、あれとはもはや比べ物にならないスケールだ。そもそもあいつら空なんか飛ばないし!
すかさず、僕はスキル<サンシャイン>を発動し、ドラゴンのステータスをチェックする。
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ブラックドラゴン レベル50
特徴:正統なドラゴンの種族。
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うん、やっぱりさっきまでのクモ型モンスターたちなんかよりも圧倒的に強い! レベル差が倍じゃん!
「みんな! 装備になって! 行くよ!」
「「「りょーかい!!」」」
リーシャ、レティ、ミリアの三人は息をそろえて、神器の姿へと戻る。僕はリーシャを手に取り、ミリアをバッグの中で待機させた。
ドラゴンは船の帆みたいな大きさの翼をゆったりとはためかせ、空中を自由に飛び始めた。その姿はまるで鳥のようで、同時に空を支配する王者のような厳格さを感じさせた。
猛禽のように鋭い目で、こちらを睨みつけている。おそらく奴を倒すのも試練の一環ということらしく、戦闘になりそうだ。
『ルカさん! キラっと終わらせちゃいましょう! あんなトカゲ、ルカさんなら楽勝です!』
「トカゲではないでしょ……でも、試練は試練だからね! 倒そう!」
僕は空中を飛んでいるドラゴンに向かってリーシャを振り、光の斬撃を飛ばした。
かまいたちのようにして真っすぐに飛んでいく斬撃は、ドラゴンの15メートルはありそうな巨体にぶつかり、大きな音を立てた。
「グオオオオオオオオ!!」
ちゃんとダメージは入っているらしく、ドラゴンはライオンのような叫び声を上げている。
一時はひるんだドラゴンだったが、口を大きく開けて威嚇してきた。すると、口の前に真っ赤な炎の球が生成され、徐々に大きくなっていく!
「レティ、来るよ!」
『大丈夫よ。あれなら』
「ガアアアアアアアアア!!」
人間の体ほど大きくなった火球は、ドラゴンの咆哮と同時にこちらへ向かって一直線に飛んできた! 一息でこのスピードと思うと、恐ろしい肺活量だ。
しかし、僕は動じることなくその場に立つ。火球は僕の体を飲み込み、城の一室を爆発で吹き飛ばした。
ドラゴンの勝利に思えた次の瞬間、黒い煙の中から突然、火球が奴の方に向かって戻ってくるではないか。それはまるで、跳ね返されたように!
「ガアッ!?」
自分が吐いた火球が戻ってきたことにいち早く気付いたドラゴンは、卓越した動体視力で判断し、素早く体をよじって回避した。外れてしまった火球は、奴の背後で再び激しい爆発音を起こす。
レティの反魔法効果だ。この前のエルドレイン戦では機能しなかったことがあったが、あれがレアケースなのだ。並大抵の魔法なら、同等の威力で跳ね返すことができる。
「よーし、もう一回リーシャの斬撃を当てるぞ!」
意気込んでリーシャを振り上げた、その時。
「あ、あれ!? あいつさっきよりちょっと離れてない!?」
ドラゴンの姿が小さく見える。とはいえ、小さくなったわけではない。ドラゴンが僕たちから距離を取ったから、遠近感で小さく見えるだけだ。
『ちょっと離れたくらい、なんてことないですよ! もう一度、斬撃を飛ばしましょう!』
「いやあ、さっきの火球を避けるんだから、これだけ距離があったらさすがに避けられちゃうよ」
『ええ!? じゃあどうしろって言うんですか!? このまま黙って指をくわえて見ていろと!?』
「そうは言ってないよ。こっちはレティの反魔法効果があるから、あいつの攻撃は効かないしね」
『わらわならこの建物の形を変化させて、レンガを槍のように伸ばすことで攻撃が出来なくもないが……雀の涙って感じじゃのう』
リーシャの剣による攻撃も、ミリアの地形操作による攻撃も、正直言って有効打にはならない。なにより、奴はレベル50のモンスターなのだ。
エルドレインのせいで感覚がマヒしているけど、S級冒険者が総出で戦っていたようなトロールでさえ、レベル30なんだぞ。
あれ、待てよ。これって、『神器を手に入れるための』訓練なんだよね。僕は奇跡的に神器を持っているけど、そもそもこれは神器を持っていない資格者に向けた試練のはずだ。
さっきも振り返ったように、レベル30のモンスターですら、一人の人間では倒すことができないのだ。なのに、神器も持ってない、一人用の試練でレベル50のドラゴンを出してくるっておかしくないか?
いや、待てよ? このドラゴンとの戦いも試練の一環だとしたら?
「そうだ、思いついたよ!」
『なんじゃ? わらわが活躍できるような作戦を思いついたか?』
「残念だけど、それはまた今度。僕に力を貸してほしいんだ、嵐弓ツイスタリア!」
僕がそう言うと、部屋の隅で体育座りをしていたツイスタリアがこちらを見た。
「えっ!? ここっスか!? ここであたしっスか!?」
「そうだよ。この試練を攻略するには、君の力が必要なんだ!」
この試練は、嵐弓ツイスタリアを手に入れることができるかという試練だ。だったら、その中で彼女との適合の度合いを調べることがあってもおかしくない!
それに、そう考えると、つじつまが合う。神器を使えば、格上のモンスター相手でも戦うことができるからだ!
「無理っスよ! さっきのセンパイの戦いを見て、本当に死ぬかった思ったんス! あんなのと戦ったら死んじゃうっス!」
「頼む! 君じゃないとこの戦いに勝つことはできない!」
頭を下げるが、ツイスタリアは完全に委縮してしまっている。よく考えたら、さっきの火球の爆発に巻き込まれてるし、怖い気持ちはわかる。
『まったく、どうしたものか……そうじゃ!』
そこで、ミリアは何か思いついたような声を上げた。
『ま、しかたないじゃろ。あんなにカッコ悪い口上しか思いつかないやつじゃ、戦っても意味ないのじゃ』
「な、今なんて言ったっスか!?」
「聞いてなかったのじゃ? 口上がカッコ悪いっていったのじゃ」
なぜかミリアはツイスタリアを挑発するようなことをいいはじめる。ツイスタリアは座ったまま怒り始めた。
『口上というのはの、かっこいい人が言って初めてかっこいいのじゃ。お主のような臆病者が言っても、せっかくの口上が台無しなのじゃ』
「くっ……!」
ツイスタリアは悔しそうな表情をして、立ちあがった。
「わかったっスよ! 戦うっス! 戦えば口上がカッコいいと認めてくれるっスよね!!」
『もちろんじゃ。戦えば、じゃけどな』
ミリアの挑発に乗ったツイスタリアは、僕の横に立ってドラゴンを見据えた。
「あたしは嵐弓ツイスタリア。イスタって呼んでほしいっス。センパイ、あのトカゲを倒しましょう!」
「わかった! 戦おう、イスタ!」
ミリアの巧妙な作戦によって、嵐弓ツイスタリア、改めイスタがやる気を出してくれた!
「走る姿は突風で、立った姿は凪のよう。ビュウビュウ吹かせる心の風で、今宵も謎をスパッと解決! 呼ばれなくてもやってくる、みんなの心に神風起こす!
後輩系美少女、嵐弓ツイスタリア! 戦闘開始ッ!」
やっぱり、あんまりカッコよくない。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
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