表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/131

29.人間の想い

「面白い……ならばやってみよ!!」


 エルドレインが持った剣は魔法陣(まほうじん)に吸い込まれて消えていき、代わりに一本の杖が現れる。モンスターを召喚していたものとは別物だ。


 ヒノキのような木材で作られた黒い杖は、彼の手のひらにピッタリと収まり、僕の方へ向けられた。


雷杖(らいじょう)ダーククラウド……闇に染まった雷を受けるがいい!」


 杖を振りかざすと、僕の上に小さなサイズの暗雲が立ち込め、落雷(らくらい)が一直線に僕の方へ向かってくる!


『ルカ。あの雷は私の反魔法効果では(はじ)くことはできないみたい』


「わかった!」


 まるで弓矢のような速さで降ってくる雷。転がって回避するが、次から次へと、僕の真上に雲が現れる。きりがない!


『ルカ、回避してるだけじゃジリ貧じゃぞ!』


「わかってる! だったら……雷を切り裂くだけだ!」


 敵を斬り上げる要領(ようりょう)で、下から雷に向かって光の斬撃を放つ。すると、まるで海が裂けるようにして、雷は真ん中から二つに分かれ、床に火花が弾け散った。


「雷を断ち斬っただと!?」


『さすがです、ルカさん! ルカさんなら出来ると思いましたよ!』


 エルドレインの驚嘆(きょうたん)と、リーシャの称賛(しょうさん)の声が入り混じる。瞬間、僕は思いきり床を蹴ってエルドレインに向かって肉薄(にくはく)した。


「くっ……!」


 すでに、僕のスピードは雷を凌駕(りょうが)している。エルドレインは寸前(すんぜん)で僕の剣戟(けんげき)を止めるが、腕にはかなり力が入っていて、杖が震えているのが見えた。


 命拾(いのちびろ)いをしたように見えるが、僕とリーシャの二人のパワーに勝てるわけがない。思いきり力を込めて一歩前に踏み出すと、エルドレインは衝撃で後ろに吹っ飛ばされ、壁に衝突した。


「ガハッ!!」


 背中から壁にぶつかり、まるで隕石(いんせき)が落下したように、エルドレインを中心にクレーターができる。


「雷を斬るほどの速度と、余を吹き飛ばすほどの力を()(そな)えるとは……貴様は次元ですら断ち斬れるのではないか?」


「どうだろうな。斬ったことがないからわからない。……だが、目の前に立ちふさがれば、何がなんでも斬る!」


 エルドレインを逃がすつもりはない! 今、奴は壁にめり込んで逃げ場がない! チャンスだ!


 僕はエルドレインの方へ突進し、剣を思いきり振り上げた。


「させるか! 冥盾(めいじょう)ディストピア!!」


 剣を振り下ろした瞬間、目の前に、エルドレインの体を覆うほどの大きな半透明の盾が現れる。剣と盾がぶつかり合い、ガガガガガ、と激しい音が立つ。しばらく拮抗(きっこう)するが、さすがはレアアイテム、僕は()り負けてジャンプで後退(こうたい)した。


「駄目だ、盾を破れなかった!」


『いや、そうでもないですよ! 見てください!』


 リーシャに言われて見てみると、さっき弾かれた冥盾にヒビが入り、バラバラと崩れてしまった。(たまご)(から)のように細かく砕かれた盾は、エルドレインの足元に散らばり、力なく床に横たわる。


「かつてこの盾に傷を付けられた人間はいなかったんだが……まさか破壊されてしまうとは。生身で今の攻撃を受けていれば、もはや体がいくつあっても足りなかっただろうな」


 そう言ったエルドレインの肩は激しく揺れ、ぜえぜえと荒い呼吸をしている。アンデッドの身である彼も、どうやら疲弊(ひへい)することはあるらしい。


「ルークよ。そこまで強いのなら、貴様もアンデッドになってはどうだ?」


「そんな誘いに乗ると思うか?」


「人間は弱い。体は(もろ)く、軟弱(なんじゃく)精神(せいしん)は自身の成長を妨げるどころか、他者に危害を加えることだってある。アンデッドにはそんなものはない。どうだ?」


 もっともな意見だ。人間は脆く、弱い。ルシウスは自分の功名心のために僕を手にかけ、殺そうとした。アンデッドに比べれば弱い生き物なのかもしれない。


 でも、それだけじゃないのが人間だ。


「……だが、人間には『想い』の力がある! 心を通わせ、手を取り合うことができる! アンデッドのその手では、誰と手をつなぐこともできないだろう!」


 僕の答えを聞いて、エルドレインはニヤリと笑った。そうこなくては、という表情だ。


「……面白い。愉快(ゆかい)だ。余は実に愉快だルーク! 余は貴様に『全力』を出したくなった!!」


 エルドレインが両手を大きく広げると、彼の頭上から何本もの杖、剣、槍などの武器が現れ、ゆっくりと降りてくる。おそらく、どれも人間では手に入れられないようなとても強い武器だろう。


『力比べなら、わらわに任せてもらおうかの』


 僕はストックバッグを使ってリーシャからミリアに持ち変える。相手の方も武器は出そろったようだ。その数は百にも近いだろう。無数の一級品たちが、エルドレインの後ろで、まるで兵隊のように整列している。


「どうだ? 圧巻(あっかん)だろう。一本一本が、人間が一生かけても手に入れられないような代物(しろもの)だぞ」


「……ああ、いい武器だ。今から粉々にしなければいけないのが残念なくらいに」


 元々、武器が好きだった僕にとって、どれも心が躍るような逸品(いっぴん)だ。本当なら手に取りたいくらいだけど……覚悟しなければいけない。


「ミリア、レティ。心の準備はいいか?」


『うむ、同じアホなら踊らにゃ損じゃ。ここはせいぜい踊り狂わせてもらおうかの!』


『ええ。この戦いには興味がないわ。――だって、結果はわかりきってることだもの』


 僕は二人の返事を聞き、ミリアを思いきり振り上げた。


「これで終わりだ! <|蒐集された宝物による大災害カタストロフィ>!!」


 エルドレインの背後に並んだ武器たちが、一斉に先を僕に向けて、風を切って突っ込んでくる!


「<獄炎破壊演舞(ごくえんはかいえんぶ)>!!」


 ミリアを力いっぱい振り下ろすと、炎でできた巨大な拳が出現する。


前方から僕を貫こうと飛んでくる剣や槍と、炎の拳とがぶつかりあう。凄い熱量だ!


立っているだけで皮膚(ひふ)を焼かれてしまいそうな熱気。ミリアから放たれた炎の拳は、次から次へとエルドレインの武器たちを飲み込んでいく。


威力でもスケールでも、百を超えるエルドレインの武器たちに負けていない! 両者はしばらく拮抗した後、熱風を放って爆発した。


 建物がグラグラと揺れ始め、風で天井が吹きとばされる。まるで嵐の中に巻き込まれている衝撃だ。だが、エルドレインも僕も、互いに(まばた)きひとつせず、睨みあっている。


「「うおおおおおおおおお!!」」


炎の拳の中で渦巻いたエルドレインたちの武器は、まるで砂の城が崩れるようにして粉々になっていく。そして、あれだけたくさんあったエルドレインの武器たちは、ひとつ残らず消滅した。


『飛んで火にいるなんとやら、じゃの』


 炎の拳によって、エルドレインの武器は全てもみ消されて、粉々にされてしまった。百を超えるような武器たちが、一つも僕に届くことなく消えたのだ。


 代わりに、まるで(ちょう)鱗粉(りんぷん)のようにして、エルドレインの武器たちだったものの(ちり)が空中で舞い、輝く。


「馬鹿な!? ありえない……!! 我が宝物が、1000年間の全てが!!」


『ラストは任せたのじゃ! リーシャ!』


『わかりました! ミラクル起こしちゃいますよ!!』


 ミリアからリーシャに武器を持ち変え、僕はエルドレインの方へと走り出す。


「そんなことはあり得ない!! 余は王だぞ!? この世で最も強く、決して死なないアンデッドの王であるぞ!?」


「教えてやる、エルドレイン! これが仲間との絆の強さ、そして――人間の想いだ!!」


 床を思いきり蹴り上げ、リーシャを上に掲げる。


『キラっと決めちゃいますよ! ミラクルな一撃を!!』


「『<セイクリッド・ストライク>!!』」


 僕が放った剣による一閃は、エルドレインの体を真っ二つに切り裂いた。


「これが人間の……想いだと……?」


 エルドレインの体が、床に倒れた。

ここまで読んでくださってありがとうございました!


「面白かった!」と思われましたら、↓の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしてくださると、作者がなつきます!

1秒で出来ますので、続きをお楽しみになる前に、ポチっとどうぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ