25.S級パーティ、壊滅
今回も、王墓の様子です!
「セシル! 火属性魔法だ! きっとこのアンデッドには火属性魔法が効くはずだ!」
「さっきからやってる! でも全然効かないの!」
ルシウスの言葉に顔をしかめつつも、セシルは手のひらから魔法陣を発生させる。
自分の顔よりも一回り大きい火球をいくつも生成すると、一気に放った。
しかし、巨大なゾンビモンスターが腕をひとたび薙ぎ払うと、炎の弾丸たちは、まるでロウソクが灯りを落とすように、いとも簡単に消えてしまった。
エルドレインが召喚した、体長3メートルは優に超えるゾンビモンスターと、部屋の奥に現れた紫色の魔法陣から湧き出る、大量のアンデッドモンスターたち。
量と質、どちらを取っても今までのダンジョン攻略とは比肩にならないほどで、あまりの激しさにルシウスたちは苦戦を強いられていた。
「クソッ、なんて量だよ!! 俺の速さでもさばききれねえ! なんとかならねえのか!」
「量だけじゃねえ! このデカブツ、攻撃も魔法も全然効かねえぞ!!」
まるで、災害に立ち向かっているようだ。冒険者たちがアンデッドたちの圧倒的な軍勢に手ごたえのなさを感じていると、上の方で人の叫び声が聞こえた。
「まさか、上の連中もやられてるのか!?」
ヴェルディの言う通り、エルドレインが召喚したアンデッドはこの広間にいるものだけではない。他のS級パーティたちも同じようにアンデッドの処理に追われている。
それは、もはや救援は期待できないという残酷な現実を意味していた。
「目覚めの運動にしてはちょうどいいと思ったんだがな……あまりにも、口ほどにない」
エルドレインは祭壇に置かれた玉座に座り、冒険者たちの戦いぶりを眺める。その表情からは、心の底から退屈したという意思が見て取れる。
「なんなんだよアイツ! 座ってるだけで何もしねえじゃねえか!」
「多勢で戦おうなんざ卑怯だぞ! 正々堂々戦いやがれ!」
その時、まるで我慢の糸が切れたように、ルシウスとヴェルディが叫んだ。
目の前のアンデッドモンスターの量を倒しきることができないと悟った二人は、親玉であるエルドレインを挑発し、彼を倒すことで他のモンスターたちも消滅させようと考えたのだ。
エルドレインは召喚術士であり、彼を叩けばモンスターも一緒に倒せる。そんな仮説を立てたのだ。
冒険者としての彼らの経験が、そうさせたのだ。
「フハハハハハ……勝てないと踏んだら今度は挑発か。愚かとしか言いようがないな」
「なんだ? 怖くて俺たちの前で戦うことすらできないのか!? 負け惜しみもたいがいにしろ!!」
ルシウスがそう言うと、エルドレインはゆっくりと玉座から立ち上がった。
途端、邪悪な波動が冒険者たちを襲い、彼らは立っているのもやっとなほどの威圧感を浴びる。まるで室内にいながら強風に抗っているようだ。
「ほう……安い挑発もそこまでいけば大したものだな。では少しだけ、遊んでやるとするか」
エルドレインがそう言った瞬間、玉座から彼の姿は消えた。
「……!? どこだ!? どこに隠れやがった!!」
「隠れてなどいるものか。ここだ」
刹那、エルドレインがルシウスの背後に姿を現す。
「お前っ!? いつの間に!!」
ルシウスは突然現れたエルドレインを確認すると、即座に剣を振り上げる――。
が、それはこの空間の絶対者にとってあまりに遅いものだった。
エルドレインの杖はルシウスの剣とぶつかり合うと、高い金属音を立て、強くはじき返した。剣はルシウスの手から零れ落ち、地面に落下する。
「しまった……剣が!」
「得物がなければ駄目か、この盗人風情が!!」
エルドレインは激高し、呆気に取られているルシウスの腹部に膝蹴りを入れる。ルシウスは自分の内臓がまるで風船のように破裂する感覚を懐き、激しく嗚咽しながら地面に転がる。
「うぐあああああああ!!」
「どうした? もう終わりか?」
「ふざけるなよ……俺が、お前みたいなやつに負けて……たまるかよ!!」
「そうか。だったら全力を以ってぶつかってこい。さもなければ……死ぬぞ?」
ルシウスは地面に膝をつきながら、ゆっくりと立ちあがる。
(きっとこの男は何かのトリックを使って自分の背後に回ったはずだ。その瞬間を見逃すな!)
と、心に刻みながら、一度落とした剣を拾おうとすると。
「その棒切れを拾い上げるまで、余がゆっくり待ってやると思ったか?」
またしても、エルドレインが背後に現れた。しまった、と思った時にはもう遅い。這いつくばる形のルシウスの顔面に、またしても強烈な蹴りが飛ぶ。
「うわあああああああ!! あああ……あああああああ!!」
痛みに苦しみあえぎ、もはや獣のように叫び、地べたをのたうち回ることしかできない。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……もう嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ……」
過呼吸になり、地べたに這いつくばるルシウス。眦から涙が滝のように流れる。それはS級冒険者と言うには、あまりにも惨めな姿だった。
「ふざけんな……ふざけんな!! 俺たちはS級なんだよ!!」
「次は貴様か。多勢で攻撃するのは卑怯だと言っていたような気がするが……まあいい」
ヴェルディは持ち前の攻撃力を活かし、それが最大限発揮される技――すなわち、拳による殴打を図る。常人にとってその速度は目にも止まらないものだが――
「……なっ!?」
「いい拳だ。他のアンデッド相手であればあるいは……通用したかもしれないな」
ヴェルディの拳は、エルドレインの手のひらによって止められていた。こんな体験は彼にとって初めてだった。
「どうやら貴様はこの拳にずいぶんな自信を持っているようだな?」
エルドレインはそう言うと、邪悪にほくそ笑んだ。ヴェルディの背筋が凍り付く。
「ま、まさか!! お前、やめろ!!」
ヴェルディは自分の拳を離すまいとしている手のひらを振り払おうとするが、叶わない。
徐々に手のひらの力が強くなり、ヴェルディの拳がバキバキと音を立てる。骨が粉砕されているのだ。
「あああああああああああ!!!」
あまりの苦痛に絶叫するヴェルディ。エルドレインの手が取りはらわれた後の彼の手は、もはや人間の手の原型をとどめていなかった。
「お、俺の……拳が……」
「武器を失った程度で立ち止まるなと、言っているだろうが!!」
拳を失っても、呟くことすら許されない。エルドレインの足が飛び、ヴェルディの腹部を強襲した。
「がはっ!?」
蹴られたヴェルディは、激痛に襲われ、嗚咽を漏らして床に転がる。圧倒的な実力を持つS級冒険者が二人、いとも簡単に手玉に取られている。
「興ざめだ。どうせなら最後くらい、余を楽しませてくれよ?」
地獄は、まだ終わらない。エルドレインはそう言うと、杖を一振りする。それと同時に、ルシウスとヴェルディの二人の体に異変が起こる。
「な、なんだこれ……」
「苦しい……グアッ!?」
二人は床の上をのたうち回り、苦しさを訴える。目を大きく見開き、全身に汗がダラダラと滝のように流れている。両手は喉を狂ったようにかきむしり続ける。あまりに異様な光景に、パーティメンバーたちは絶句した。
「貴様ら二人にはグール化の魔法をかけた。グールになれば身体能力が飛躍的に向上する。そうすればもう少し楽しくなるだろう。その代わり、人間をやめることになるがな……」
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