24.朱色の乱舞
「……ということがあって、いきなり街にアンデッドモンスターが大量発生して、暴れてるんですにゃ!」
メイカの口から語られたのは、信じられないような恐ろしい話。
アンデッドモンスターが暴れているということは、街の人が危険な目にあっているということだ!
「こうしちゃいられない! メイカ! みんな! 走ろう!」
「はいですにゃ!」
一刻も早く街にたどり着くように、僕たちは走りながら会話をする。
「それにしても、なんでこんなことに!?」
「今朝、緊急クエストでS級パーティが南東の王墓に行ったんですにゃ。もしかしたらそれが関係しているのかも……」
S級パーティが……ということは、セシルも向かっているんだろうか。彼女に危険な目にあってからでは遅い。急いでその王墓とやらに行かなくては!
街の門を潜り抜けると、目の前に広がっている光景に僕は息を飲んだ。
スケルトンやミイラ男など、様々なアンデッドモンスターがまるでパレードでもするように街を歩き回っている。幸い速度は遅いので人は逃げきっているようだが、この量はマズい!
「メイカ、君は街から出た方がいい! なるべく安全なところに避難するんだ!」
「嫌ですにゃ! ルカさんの近くが一番安全ですにゃ。だからメイカはここにいますにゃ」
まったくもう……。ちょっと可愛く言われても困るなあ。
「わかった! みんな行くよ! ミリアはちょっと待機!」
「「「りょうかい!」」」
そう言うと、神器ーズはなぜか全員、僕の体に抱き着いてきた。
「……なにしてるの?」
「ん? 武器化するときはこうする必要があるのじゃろ? レティから聞いたのじゃ」
「レティはいつも通り」
「だってレティばっかりくっついてずるいですよ! だから私もくっつくことにしました!」
「あ、じゃあメイカも!」
もう僕には、君たちが何を考えているのかわかりません!
「ウアアアアアア……」
数匹のモンスターがこちらへ向かってきている。神器ーズが武器の姿に戻り、ミリアには一旦、ストックバッグの中へと入ってもらう。
「くらえっ!」
モンスターの胴に向かって剣を横に薙ぎ払う。人型のモンスターばかりだから、攻撃する箇所がわかりやすくていい。
『私の聖剣パワーでアンデッドモンスターも斬れば浄化できちゃいます! どんどん行きましょう!』
それは便利だ! 一体一体はさして強くないとはいえ、敵モンスターの数には困っていたから、処理に時間がかからないのはありがたい!
モンスターを見つけるたびに斬り、すぐさま走り、次のモンスターを斬る。モンスター自体は弱いが、なにしろ数が多い。斬っても斬っても次から次へとわらわらと湧いてくる。
「聞いていた以上に多い! これじゃあいつまで経っても王墓になんか行けないよ!」
視線を動かすと、アンデッドモンスターは門を通ってどんどん街の中に入ってきている。どこかから――おそらく、件の王墓から――モンスターが街に流れ込んでいるのだ。そりゃ数が減るわけない。
『ここはわらわの出番のようじゃな!』
「ミリア! 何か作戦があるの!?」
『うむ。わらわに任せよ!』
一度リーシャをストックバッグに戻し、今度はミリアに持ち変える。僕の背丈より少し小さいくらいの、長いハンマーだ。相変わらず目が釘付けになるほど朱色が綺麗。
『わらわを地面にたたきつけるのじゃ!』
敵じゃなくて、地面に? 言っている意味がわからなかったが、とりあえずやってみることに。くい打ちの要領でミリアを振り上げ、地面にたたきつける。
次の瞬間、街に地震が起こった。地面がグラグラと揺れ、建物も小刻みに動いている。何が起こっているのかわからず、辺りをキョロキョロと見回してみると。
なんと、街の周囲の地面が隆起し始め、ゴゴゴゴゴ、と音を立てて壁が出来上がった。街を囲む土の壁は、まるでお城の城壁だ。
「ミリア!? これはどういう!?」
『お主、わらわのスキルを見たのではないのか? わらわのスキル、<地殻変動>を使ったのじゃ』
そうか、<地殻変動>は攻撃した対象の形状を自由に変化させることができるスキル。地面を叩いたから地面の形を自由に変えることができるようになって、街の周りに壁を作ったんだ!
「……なにそれ。強すぎない?」
『当たり前じゃ。わらわをなんだと心得ている? 神器じゃぞ神器』
すごいなミリア。リーシャとレティにも劣らない、すごいスキルだ!
『これで街の外からアンデッドは入ってこない。内側のアンデッドを倒せば市民の安全は守られるじゃろ』
「そうだね、よし! この辺りにいるアンデッドを倒そう!」
「ちょっとあなた!」
走り出そうとしたその時、一人の女性が焦った様子でこちらへ走ってきた。
「なんですか?」
「こんなところにいたら危ないですよ! 避難してください!」
服装を見ると、ギルド職員が着ているものと同じだ。ということは、この人はギルドの人なのかな。女性は真っすぐな視線で僕を見つめる。
「大丈夫です! 僕は戦えますから!」
「……失礼ですが、あなたのランクは?」
僕が自信満々で言うと、ギルド職員さんは訝しげな目でこちらを見た。
「Fです」
「駄目です。避難してください」
絶対そう言われると思った。
「なんでですにゃ! ルカさんはFランでも強いんですにゃよ!」
「規則は規則です! F級冒険者が相手してどうにかなる問題じゃないです!」
ギルド職員のお姉さんも引き下がらない。この人も悪意から言ってるわけじゃないからなあ……。
「メイカ、ちょっとこっちへ」
僕たちは少しお姉さんから距離を取って、話し合いを始める。
『ルカさん! あんな女、やっつけちゃいましょう! ルカさんの力でわからせてやるんです!』
「そんなことするわけないでしょ……逮捕されるわ普通に」
リーシャの案は却下。
『ルカ。S級冒険者じゃないかぎり、王墓にも行けないってこと……?』
レティの言う通り、このお姉さんを説得するにはS級冒険者である必要があるだろう。でも僕はFランで、今からS級冒険者になる方法なんかないしなあ……。
『やっぱり気絶させるしかないんじゃないかの。アホは躍らせておくのが一番じゃ』
なんで神器ーズは暴力的な意見しか言わないの……?
「そうだ! 思いつきましたにゃ!」
その時、メイカがポンと手を叩いた。
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