22.勇者アレンの独白
「自己紹介が遅れたね。僕の名前はアレン・カーディオ。調和の女神の祝福を受け、勇者と呼ばれていたものだ」
男性の声は、自らを勇者と名乗り始めた。聞いたことある。勇者アレン……! メイカの家で読んだ本に書いてあった。 たしか2000年前に魔王と戦った英雄の名前だ。
「僕は、魔王をはじめとする復讐の女神の勢力と戦っていたんだ。激しい戦いだったが、最後には神器を使って魔王を倒すことができた」
レティが前に言っていた、『自分を使っている人がいる』というのはもしかしたら、このアレンなのかもしれない。
アレンの声はさらに続ける。
「しかし――調和の女神は復讐の女神に敗北し、消えてしまった。復讐の女神も戦いでかなりダメージを受けて自ら眠りに落ちたとはいえ、厄介なことに、まだ完全に消えたわけじゃない」
っていうことは、また後の時代に復讐の女神がよみがえるかもしれないってこと!?
「復讐の女神が復活させるものが現れれば、人類は再び魔族による脅威に晒されるだろう。なんとしてもそれは阻止しなければならないが、僕とて人間だ。ずっと生きることはできない」
なるほど、なんとなく話が見えてきたぞ。
「そこでだ。僕は神器を各地にバラバラに配置した。君には、それらの神器をすべて集めて、復讐の女神の復活に対抗してほしい」
おそらく、リーシャやレティは元々別の場所にあったのだろう。時間の流れとともに位置が少しずつ移動して、僕たちが出会った場所に来たのだ。リーシャは特に、事情を知らない人間が捨てでもしなければゴミ捨て場になんか行くはずがない。
「調和の女神が消えた今、復讐の女神に対抗できるのは彼女が作った神器だけだ。もし君にその覚悟があるなら、ここにある朱槌ヴァーミリアを持って行ってほしい」
部屋の奥に置かれている宝箱に目が行く。あの中にヴァーミリアがいるということらしい。
「……おっと、そろそろ時間みたいだ。この部屋の奥にゲートがある。これを使えば一気に入り口まで戻ることができるから利用したまえ。それでは――あとは君の決断に任せるとしよう」
勇者アレンの声はそこで途切れた。
「ルカさん……どうしましょう?」
リーシャやレティの他にも神器があって、それらが唯一、復讐の女神に対抗できる力になるだって……?
「うーん、いまいちピンとこないなあ……二人はどう思う?」
「私も信じろと言われたら難しいですが……なんだか、あの声には懐かしい感じがしました。嘘をついているような気はしないです」
「私もそう思うわ。昔誰かに使われていた記憶があることにもつじつまが合うもの」
二人とも、勇者アレンの話は本当だと思うらしい。
「とはいえ、復讐の女神がこんなタイミングよく復活するわけないと思いますけどね!」
だよね。復讐の女神が復活するという前提で話を聞いていたが、そんな都合よく話が進むわけがない。勇者と魔王が戦ってたのって千年くらい前の話だった気がするし。
だったら答えは一択。そこにある宝箱を開けてヴァーミリアを仲間にしよう。だって何かあった時に一か所に固めておいた方がいいし、リーシャとレティも仲間がいた方が嬉しいだろう。
「よし、宝箱を開けようか」
僕は部屋の奥に進み、宝箱の蓋を開ける。中には大きなハンマーが入っていた。名前の通り陶器のように綺麗な朱色をしている。まるで芸術品だ。
「よし、触るよ……」
僕がハンマーの柄の部分を握ると、リーシャやレティがそうだったように、ヴァーミリアも強い光を放ち始めた。
「お主か。わらわを眠りから覚ましたのは」
光の中から姿を現したのは、朱色の髪を長く伸ばした童女だった。見た目は完全に子供なのに、一人称はやけに大人びている。
「うむ、どうした? わらわの着物に見惚れてしまったか?」
「着物?」
「なんじゃ、着物も知らんのか。雅の心も知らんとはアホなやつじゃのう」
出会って一番にアホ呼ばわりとは……また個性的な神器が来ちゃったなあ。
「しかし……これはどういうことじゃ? わらわが人間の姿になっておるぞ? お主が何かしたのか?」
「うん。僕はルカ。君は僕のスキルで人間になったんだ、朱槌ヴァーミリア」
「ミリアでよい。しかし、なかなか奇怪なスキルを持っているもんじゃのう。こんなのは初めてじゃ」
ミリアは自分の体をよじり、着物を色々な角度から見る。紅葉の柄のある綺麗な服だ。
「で、お主はわらわにどうしてほしいんじゃ? 何も用がないってわけじゃなかろう?」
「うん。実は……」
僕はこれまであったことをミリアに話した。リーシャとレティと出会ったこと。そしてさっき勇者アレンが話したことを。
「ふむ……なるほど、つまりルカは復讐の女神の復活に備え、神器を集めているというわけじゃな?」
「と言っても、復讐の女神が復活するかはわからないけどね。でも、リーシャとレティにとっても仲間がいた方がいいと思って」
「そうか、確かにそれはそうかもしれぬ。よし、同じアホなら踊らにゃ損じゃ。わらわもお主らの仲間に入れてくれ」
『地上の世界も見てみたいしの』とミリアは付け加える。また新たに神器が仲間になってくれた。
「ありがとうミリア。ステータスを確認してもいいかな?」
「そんなことができるのか。構わん。好きにせえ」
僕はリーシャのスキル<サンシャイン>を発動する。
▼▼▼
ルカ・ルミエール レベル:76
スキル
<アーマー・コミュニケーション>
装備品と心を通わせることができる。程度は装備品に形成された人格に依存する。
装備品:
朱槌ヴァーミリア
スキル
<烈火の舞>
所有者の攻撃力・素早さを2倍にする。
<業火一撃>
攻撃を当てた対象を5メートル以上ノックバックさせる。
<地殻変動>
攻撃を当てた生命体以外の物質を自由に変形できる。
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これはなかなか強烈なスキルだな。僕の攻撃力・速度を高めるという基本的なものから、攻撃を当てた相手に干渉するトリッキーなものもある。
「ミリア! 地上に帰ったらカレーを食べましょう!」
「カレー? なんじゃそれは」
「そりゃあもう、色々な野菜が入っていて、辛くて美味しいものですよ!」
「全然言っている意味がわからんぞ。リーシャはアホなのか?」
ステータス欄を確認している間に神器ーズは既に仲良くなっているらしく、すっかりご飯の話で盛り上がっている。
「よし、じゃあ帰ろっか!」
視線を移すと、部屋の隅に半径2メートルくらいの白い魔法陣があるのを発見した。勇者アレンが言っていた、入り口まで帰ることができるゲートだろう。僕たちはその上に乗る。次の瞬間、視界が白い光に包まれた。
「うわっ!?」
気が付くと、ダンジョンの周りの景色が変わっている。ダンジョンの入り口だ。本当にこんな簡単に移動することができるんだ……。
四人でダンジョンの出入り口から外へ出ると、空はなんだか曇っていた。僕たちがダンジョンに潜っている間に天気が悪くなっていたらしい。
視線をずらすと、メイカの姿を見つけた。
「ルカさん!」
「メイカ。こんなところまで迎えに来てくれたの?」
そう言って、メイカはなんだか焦った表情をしたまま走ってくる。慌てているみたいだけど、どうしたんだろう?
「街が! 街が大変なことになっているんですにゃ!」
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