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#6 頼りない腕

青峰高校の体育館は、校舎の裏側にある大きな建物だ。少し茶色がかった壁に、アーチがかかった灰色の屋根が乗っている。2年前に改修工事をしたらしく、見た目が比較的新しい。


部活の時間帯は、バスケ部、バレー部、卓球部、バドミントン部が体育館を使う。そのため、バドミントン部が使えるのは入り口から一番遠い1/4のスペースだけだ。それだけのスペースでは全員で練習できないため、男子と女子が交代で練習することになっている。


必然的に、部活の時間の半分は体育館の外にある廊下でトレーニングをして過ごすことになる。それが、体が細いことがコンプレックスである悠也にとっては地獄だった。今日の一発目のメニューは、腕立て伏せだ。


「どうした悠也、プルプルしてるぞ」


隣で煽ってくる幸大を睨みながら、なんとか腕に力を入れる。

やばい、腕がもう限界...


「3、2、1、はい終了ー」


その合図とともに、ほとんどの人が床にへたり込む。もちろん、悠也もその一人だ。幸大は、ものともせずにスポーツドリンクで水分補給をしている。


「なんでそんなに余裕なんだよ」

「まあ、日頃の成果といいますか」


確かに、幸大の腕は程よい感じでがっしりしている。


「家で筋トレとかもしてんのか」

「まあね。モテるためにも必要でしょ。悠也もあまり細いと頼りなく見られるぞ」


コンプレックスを的確に言われて、思っていたよりショックを受けた。もう一度、自分の腕を見てみる。確かに、僕は細々としていて、頼りなさそうだ。


…有季さんも、そう思うだろうか。


「筋トレしよっかな」


ボソッと呟いたつもりだったが、この悪ノリが激しい友達は聞き逃さなかったみたいだ。


「え、何その反応。めっちゃ気にしてるじゃん。もしかして好きな人でもできたのか!?」


自覚したその日に言い当てられ、一気に顔が赤くなった。ダメだと思うほど、赤くなってしまう。


「いや、なんでそうなるんだよ。違うわ」


ごまかす時ののテンプレートみたいなセリフしか出てこない自分に腹を立てる暇もなく、顔を隠そうと下を向く。露骨に下を向くからかわれることが目に見えているので、顎を引くような格好になる。たぶん隠しきれてない。


「うわー、好きな人できたんだ。おーい、みんな。悠也が好きな人できたんだって」


急に口の横に手を当てて叫び出した幸大を慌てて止めようとするが、幸大は華麗にバックステップを踏んで、ひらりと後ろに逃げた。幸大の悪い所が最大限に出てしまった。


いつのまにか、悠也の周りを囲むように輪ができていた。さすが高校生。色恋沙汰が絡んだ時の反応は素晴らしい。お前ら死体に群がるハイエナかよ。



__________

続く...





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