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赤の道② 自己紹介その2

やっと入力完了、予想以上に入力作業が大変でした。

第一章 珍道中赤の道 その2


麓の村まで自己紹介をしながら歩いて行く七人の男達、空は

雲一つ無い青空で太陽だけが大きく光輝いている。いや、

実際に地球の太陽よりも大きい、なので日差しが強い様に

感じるが標高が高く気温が低いためか程よい暖かさだ。

しかし、歩き続けているうちに額に汗がじわりと滲む、巨漢

なんて既に頭からバケツの水をかぶったみたいに

なっている。

軽く額の汗を拭うと大男が


「射撃というとクレー射撃が一番最初に思い浮かべるのだが

違うのか?」


素直な疑問を緑川にぶつける。


「いえ、正解であります、クレー射撃は空気銃を使う競技の

一つで、ざっくり説明すると飛んで来る的を狙って撃ち、

より多く当てれば勝ち、という競技であります。」


「最近、芸能人がハンデ付きでプロ選手と試合していたり

するのをTVで見ました。」


黄山が言うように最近よく目にする、東京五輪が近いから

だろうか?


「そうでありますな、最近一般の方にも知名度が上がって

きているような気がするのであります。自分は両親がクレー

射撃をやっていて自分にとっては身近な競技でありました

から、14歳の時に競技用の資格を取得したので

あります。」


「ご両親が共にクレー射撃をしているなんて、選手か何か

なのですか?」


黄山が、もしかして五輪の選手なのでは?と期待しながら

尋ねる。


「残念ながら選手ではなくて……その……仕事の関係で射撃

の腕を磨いているといいますか……。」


少し言葉を濁す緑川。


「仕事ということは猟師さんなのかい?」

再び唐突に食い付く橙木、少しでも料理に関する話題だと

敏感に反応する。


「あの…申し訳ありませぬ、両親の仕事は猟師ではなくて

自衛官なのであります……自衛隊の関係者で申し訳

ありませぬ。」


大変申し訳なさそうに深々と頭を下げる。


「親が自衛官であることを謝る必要は無い!おら達国民を

命懸けで守ってくださる立派なお仕事だ、君はご両親を

誇りに思っていいぞ!」


大男が力強く言った。今はインターネットのお陰で自衛隊が

どんな存在なのかとか、災害の時などの活躍ぶりを動画

などを見て知っているので自衛隊に対する印象は良い人が

多くなってきていて、最近ではTVや雑誌とかで自衛隊を特集

していたりもする。

が、残念なことにまだ一部ネガティブな印象を持っている

人達がいて、しかもそれが年配の学校の先生に多く緑川も

両親の職業で色々言われてきたので、こんな反応になって

しまった。


「そうですよ、有事の際に最も頼れる存在なのですから。

例え都心に異世界への門が現れて中からモンスターが出て

きても彼らなら必ず撃退してくれるはず!」


黄山の話は少々フィクションが混じっているので、さらっと

聞き流そう。


「ごめんね、わたしの中では銃=猟銃だったから…。今度

お詫びに可愛い女の子を狩ってきてあげるね。」


そう言って橙木が緑川にウィンクをする。緑川は両手と首を

左右にブンブン振って遠慮する。


「立派なご両親で羨ましいでござるよ……。では緑川殿は

その雄姿に憧れて射撃の資格を取ったのでござるか?」


両親の話で少し悲しそうな表情を見せたが、それを振り払う

ように明るく話題を射撃に戻す。

皆の予想外の反応に嬉しくて何だかこそばゆい感じで

もじもじしていた緑川だったが、再び言葉を濁しながら

答える。


「いや…その…あの…射撃をやりたいと思ったきっかけは、

ある漫画を見たからでありまして……あはは……」


ごにょごにょと言いながら照れ笑いする。


「あ…14才ということは大体中学二年生…ってことは

特有の病的な?アサシンとかスナイパーとかいう単語で

発病しちゃいましたか?」


黄山がニヤニヤしながら緑川を見ると顔が真っ赤に

なっている、どうやら的中してしまったようだ。


「大丈夫、おれも中二の時に自分がチビなのはドワーフ

だからなんだって思い込んで、体を鍛えたり本棚や

犬小屋を自分で作ってみたりしてドワーフになりきって

いましたよ。」


仲間だね~ウフフっ、といった生暖かい視線を交わす

二人。


「漫画ってことは有名なゴ〇ゴか?}


それほど漫画を詳しくは知らなそうな大男が超有名

スナイパーの名前を挙げる。


「いえ、父が読んでいた雑誌を盗み見て、ビビッときた

のは湯け〇りスナイパーであります。」


「またえらく渋い作品に影響を受けましたね。」


と黄山が言うと、珍しくもやし男がぼそりと呟く。


「時々エッチなシーンがありますからねぇ…緑川君も

男の子ってことですよ…」


赤くなった顔を益々赤くして笑って誤魔化す緑川、

でも、その作品を知っている人が二人もいて嬉しそうだ。


「なるほど、まあエッチな本や漫画に興味を持つのは、健全な

少年なら誰しも通る道だから恥じることはない。」


大男がフォローする。体が大きく顔も少し強面だが、優しい

お兄さんといった感じだ。


「君が剣道をしているのも何かに影響を受けたからか?」


続けて前を歩く少年に質問する。


「拙者は…あ、拙者の名前は藍雲 義忠でござる。緑川殿と

同じ18歳で、剣道部だったのは家が古流剣術の道場を

していて、拙者も幼き頃から祖父に剣術を習っていたからで

ござる。」


そう言ってござるな少年、藍雲が肩の竹刀ケースをクイッと

上下させる。


「ほう、でも剣術と剣道は似て非なるものとよく聞くが…」


柔道と柔術は、柔道が国際スポーツ化により(競技)になって

しまい別物になってしまったが、剣道は国際スポーツ化を

拒んでいるので原型を留めている方だ。しかし、使う道具が

真剣と竹刀とで違うため、真剣は寸止めしないと本当に

斬ってしまう、竹刀は軽いため剣を振る速度が速いなど、

別物と言っても良いかもしれない違いがある。


[そうでござるな、今は道場で食べていくために子供達を

中心に剣道を教えているのでござるが、本筋の古流剣術で

真剣を使う指導は数人の大人に対してしか教えておりませぬ

、しかし祖父は拙者に対して最初から剣道ではなく剣術を

教えてきたのでござるよ。」


やれやれといった感じで両手を広げ、首を左右に振る。最初

に剣道で作法を学び、剣の基本を身に付けてからの方が剣術

をスムーズに覚えていけるからだ。


「しかも最近は寸止めせずに振り抜いてくるので、

殺す気かー!!って感じでござるよ。」


そう言って右目の下から頬にかけて、真っ直ぐ縦に走る

切り傷を摩る。


「まさか、その顔の傷は剣術の練習中に?」


気にはしていたが聞けなかったことを本人が明るい感じで

話したので、大男が思いきって訊いてみる。


「そうでござるよ、道場では無く居間で斬りかかって

きたので、ボケて拙者を泥棒だと勘違いしたのかと思った

のでござるが、どうやらそうではなくて藍雲流の本当の姿は

日常の中で使う実戦的な、所謂 人を殺めるための剣術の

ようで、大人の弟子達に教えているのは表の綺麗な剣術だけ

でござった。」


話を聞くだけでも警察沙汰な案件だが、身内の、しかも家業

が関係しているので大事にしなかったのだろう。


「しかし、祖父とはいえやり過ぎではないか?まだ高校生

だというのに……」


大男がポンっと藍雲の頭に手を乗せる。


「心配してくださり、かたじけないないでござる。」


頭に大男の手を乗せたまま後ろをチラリと見て軽くお辞儀を

する。


「でも斬られたのは意表を突かれた最初だけで、それ以後は

全て躱しているでござるから安心してくだされ。先日などは

反撃して着物の袖を少し切り落としてやったでござるよ。」


どうやら剣術の才がこの少年には有る様だ、だから祖父も

藍雲流の本当の技を教えることにしたのだろう。その堂々と

した物言いに大男は、この男なら大丈夫だと安心した。

しかし、話の中に両親が出てこなかったのが少し気になった

が、藍雲の口から語られるまでは触れないでおこうと思った

のだった。


「えっと、お兄さんは何か格闘技とかをしているので

ござるか?山道でも体幹がブレないので体を鍛えている

ことは分かるのでござるが……。」


足元が緩やかとはいえ下りの坂で、、所々で土が柔らか

かったり硬かったりする。運動不足の巨漢やもやし男は足を

取られて時々転びそうになるが、この大男は全くよろめく

ことも無く上半身だけを見ると、まるでエスカレーターで

下りているみたいに揺れない。


「おおっ分かるか少年っ!!そのとおり、おらはありと

あらゆる格闘技を研究、実践、習得、応用、混成し、世界一

の格闘家を目指しているんだ!!」


そう言って隊列から離れると、ボクシングのシャドーを

始めたかと思えば地面に手をついてリズミカルに足技を繰り

出す、これはカポエラだろうか?続けて回し蹴りをして

空手の正拳突きで締める。


「セイッ!!!」


ボッと空気を切る音がしそうなほど鋭い突きに


「「「「「おお~~!!!!!」」」」」


と思わず歓声を上げて拍手する。どんどん先へ行く巨漢以外

の皆が注目しているので、大男はこのまま自己紹介をする

ことにした。


「押忍!!おらは赤岩 紀雄、26歳だ、仕事は世界各地を

巡り、その地に根付いた伝統的な武芸から僻地の村長の

”俺が考えた最強の喧嘩殺法”まで色々な格闘技を取材して

雑誌に投稿している、まあフリーライターってやつだ。」


素人に毛が生えた程度の村長の話など真面目に取材する必要

は無い気がするが、赤岩は真面目に取材するどころか、技を

一つ一つ何日も寝泊まりして学んでいた。マスターして帰る

頃には村長が泣いて、お前はもう俺の息子だと言い出す

ぐらいだ。そこまでするのは意外と型が決まってしまって

いる複数の武術の技と技との間に、型が決まっていない

自由な喧嘩殺法が繋ぎに使えたりするからだそうだ。


「あっ!もしかして去年発売された、世界の軍隊が採用

している格闘術を特集した雑誌に寄稿してはおりません

でしたか?」


緑川が何やら思い出したようだ。


「あ~確かロシアのスペツナズが使うシステマを取材した

やつだったかな?所謂 相手を黙らせるための実戦を想定

した格闘術だから、体得するのが大変だったぞ。」


大変だったと言いながらも体得してしまうのが凄い。

技を見たから、教えてもらったからといって実際に動ける

わけではない、やはり筋肉を上手く使う才能が無くては

武術などは出来ないし強くなれないのだ。


                     続く


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