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プロローグ ここは…どこ?

この作品は2019年の正月にインフルエンザで3日3晩寝込んだ時に夢の中で自動再生されていた物語を元に再構築したものです。自分的に面白くて寝込んでいる間退屈しなかったので、忘れない内に書き残そうと思い記録しました。

 プロローグ


「…おうふ……ふあんたじい………」


体の中心から絞り出す様に言葉が小男の口から漏れた、そう

言わざるを得ない光景が眼下に広がっていたのだ。しかし、

この小男は困惑するどころか喜んでいる様に見える。背は

低く小太りで、そのどっしりとした体から伸びる短い腕で

ガッツポーズをしている。その腕は意外と筋肉質なので、

もしかしたらただの小デブではなくて相撲取りの様な筋肉の

塊なのかもしれない。


「はぁ…はぁ…はぁ…な…何が見えたんだ?…はぁ…

はぁ…」


息を切らせて巨漢が登って来る。


「はぁ…はぁ…簡単に…はぁ…登れる…はぁ…はぁ…丘だと

思ったんだけど…はぁ…結構…勾配がきついな…はぁ…

はぁ…」


そう言ってゆっくり歩を進めて何とか小男の隣にたどり

着く。両膝に手をついて暫く息を整えると、すぅーと大きく

深呼吸しながら背を伸ばす。2mはありそうな身長で横も

凄いので、並んだ小男が子供に見えてしまう。


「おおっ!!いい感じでファンタジーしてる

じゃないかっ!!」


この男も嬉しそうだ。


「?うーん?おらにはどの辺がファンタジーなのか解らない

な、未知の格闘技があれば良いんだけれど…」


キョロキョロと周りを見渡す大男。巨漢の隣に並んでも見劣

りしない背の高さと、見事に鍛え上げられた筋肉が直感で 

コイツ…強いぞっ… と思わせる。


「確かにただの田舎の風景でござるが、日本の…と言われる

といささか違和感を感じるでござるな。」


ござる口調の少年が大男の発言に応える。


「もしここが日本、それどころか地球ではないとしたら、

未知の格闘技や剣術があるのかもしれぬでござるな。」


笑顔で大男を見上げるその少年は制服を着ているので高校生

だろうか、その肩には背と同じくらい長い筒状の袋を掛けて

いる。


「だと嬉しいな!!」


大男が目をキラッキラ輝かせて少年を見る。どうやらこの

二人も現在の状況を好意的に受け止めている様だ。


「皆よく現状を受け入れられるね、わたしは少し混乱して

いるよ。」


そう言ってゆっくり登ってくる色男、エプロンをしている

ので料理人か何かだろう。如何にもモテそうなルックス

だが、歩きながら道端に生えている草を観察して料理に

使えそうな草を物色している。

真面目な男なのかな?


「でも、未知な民族衣装の女の子も悪くないかもね。」


残念 チャラ男でした。


「ふぅ…未知の文化かぁ…ぼく的にはネタになるから

嬉しいけど、元の世界へ帰れないと意味が無いからなぁ…」


今にも消えそうな声でふらふらになりながら丘の頂上に

たどり着く男、もやしの様にひょろひょろで強風が吹いたら

飛んで行ってしまいそうだ。


「全員無事に到着であります!!」


元気な声を張り上げて、倒れそうなもやし男の背中を左手で

支えながら右手で敬礼をする。息が切れていないので、

もやし男が置いてけぼりを食わない様にゆっくりと歩いて

殿をつとめたようだ。

気配りの利く、心優しい少年だ。


「まずは情報収集が必要でありますな、何事も情報が

無ければ行動出来ませぬゆえ。」


そんな少年に男達が一斉に突っ込む。


「「「「「「まずはお前の服が必要だ!!」」」」」」


何故か少年は迷彩柄のパンツ一丁の姿だったのだ。皆最初

から気になっていたが、現状確認を優先して突っ込まないで

我慢していたのだ。とりあえず日差しは強く、暑いくらい

なのでこのままで大丈夫だと言うが、本当は少し日焼けが

したいというのが本音だ。が、状況が状況なだけに内緒に

した。

マイペースな変態少年だった。


最初に意識が戻ったのは草原で、近くに小さな丘があった

ので皆で登ることにした。しかし、丘だと思っていたのは

山頂で、草原の反対側は麓まで三千mはあるのではないかと

思うほどの“山”だった。幸い大きな木は生えておらず、

麓に見えている小さな村まで真っ直ぐに下山出来そうだ。

改めて七人が並んで眼下に広がる景色をみる。


「壮大な自然って感じだがやはり日本ではないな、三千m級

の山頂付近に…」


くるりと後ろの草原を振り向く大男。


「何十㎞も先の雨雲から雨が降っているのを目視出来る

ほど、何も無い平地がある地形は日本には無い。あの絵

に描いたような雨雲をみたのは、モンゴルのブフ(モン

ゴル相撲)を体得するために大草原を馬で移動していた

時だ。だけどモンゴルには…」


そう言って視線を前に戻す。


「海は無い。」


麓の村から更に奥へと延びる道があり、その先には家が

2~3軒の漁村がある。そこから白い砂浜が横一文字に

広がり波打ち際が太陽の光を反射してキラキラと宝石の様な

輝きを見せている。エメラルドグリーンの海は大きくうねり

ながら、絶えず白波を生み出し浜へとそれを押し出して

いる。あまりにも遮る物が無くて距離感が掴めないが、村の

家の大きさを基準にすると海までは富士山から駿河湾までの

距離はありそうだ。


ここまではこちらの世界でも探せばあるかもしれない景色

だが、麓の村と漁村の間の平地に“それ”があった、という

か浮いていた。最初は見間違いかと思ったが、家と同じか

それ以上の大きな岩が動いていたのだ。しかも地上を

ゴロゴロと転がるのではなく、すぃーと真っ直ぐに横へ

動いていくのだ。


「あれ?あの岩…もしかして浮いているのでござるか?」


「やっとファンタジーポイントに気が付きましたね!!

そうなんです、あの岩達は浮いているんです!!」


ほっぺたを紅潮させて小男が少し食い気味に興奮して言う。


「見て下さい!風の流れに沿って岩達が移動している

でしょう?きっと岩には浮くだけの力が発生しているだけ

で、推進力は無いんです。岩に含まれる成分が浮かせて

いるのか?それとも何らかの魔法が関係しているのか?

だとしたら誰が?何のために?………」


ぶつぶつと独り言を言って自分の世界に入っていって

しまった。


「それにしても、あの一番大きな浮き岩のてっぺんに木が

生えているのを見たら、もしかしたら探せばあるんじゃ

ないかと思ってしまうな。」


そう巨漢がわくわくした声で言うと、それを聞いた数人が

顔を見合わせて同時に叫ぶ。


「「「「ラピ〇タ!!」」」」


小男、巨漢、もやし男、パン一少年が、へへっと照れ臭

そうに鼻を擦る。四人の間に何やら友情みたいなものが

生まれた様な気がした。


「なんだっけ?」


いまいちピンと来ていない大男。


「あー確かアニメ映画でござったかな?」


名前を聞いて思い出したござる少年。


「んーアニメはちょっと分からないかな。」


でしょうね、と言われそうなチャラ男。


「岩にしっかりと根を張っているから、かなりの長い年月

が経っていると思うよ。近くで観察したいなぁ。」


もやし男がのんびりした口調で言うと、小男が


「それよりも、そろそろ麓の村に向かわないと途中で夜に

なってしまいます。今のところ危険な生物とかには遭遇して

いませんが夜になれば真っ暗闇になり、おれ達は無防備な

状態になります。」


と皆を見渡しながら言った。


「今は暑いくらいだけど、日が沈んだら寒くなるかも

しれないしな。」


そう言って巨漢がパン一少年を見る。


「一番装備が脆弱で恐縮であります。」


申し訳なさそうに敬礼する。


「お腹もすくだろうし水も無い状態だからね、早く下山

するのは正解だと思うよ。」


チャラ男が下り始める。


「よし!行こう!麓の村へレッツゴー!!」


大声で叫びながら大男が走り出す。


「下りで走るのは危険でござるよ!」


慌てて止めるござる少年、かろうじてズボンのベルトに指が

かかったが大男のパワーに引きずられてしまう。


「おおっ!?すまん少年、大丈夫か?」


ガクッと少年を引きずる抵抗で我に返る大男、少々猪突猛進

なところがあるようだ。


「なるべく怪我はしない様に気をつけて下さい、まだこの

世界の医療レベルが解らないので。下手をしたら簡単な怪我

で死亡ってことになり兼ねないのです。」


小男が、必死に倒れないように大男のベルトにしがみつく

少年を支えて助け起こしながら注意する。


「なるほど、これからは慎重に行動する!」


うんうんと頷く大男。本当に分かったのだろうか、疑問だ。


「怪我の前に麓の村まで歩けるかが不安だよぅ。」


もやし男が消えそうな声で喋る。確かに距離が相当ありそう

だ、普通に下山しても数時間はかかるだろう。


「わしの膝は耐えられるだろうか?」


同じく絶望的な声で巨漢が立ち尽くす。


「残念ながらここには山岳救助隊は来ませぬ、自力で下山

するしか無いのであります。さあ、行きましょう!」


パン一少年に背中を押されてゆっくりと歩き出す二人。


「そうだ、気を紛らわせる為に自己紹介しながら下山

しようよ。」


先頭のチャラ男が振り向いて提案してきた。


「良いですね、太陽の位置から日没まではまだ時間はある

と思いますし、意外と下りの勾配はきつくないので長時間

歩く辛さを紛らわす為に、ゆっくりおしゃべりしながら

下山でも大丈夫だと思います。」


小男はすでに死にそうなもやし男と巨漢を見ながら、

チャラ男の提案に賛同してこう言った。


「では、おれから自己紹介します。」


                  続く



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