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『世界最後の日』

作者: 苺と黒猫のワルツ

 自宅のベッドで目を覚ます。

 時計を見ると、8時12分。我ながら早起きしたと思う。もはや日課となっているSNSを開くと、ある言葉が話題となっていた。

 ━━『世界最後の日』。

 は? よくある冗談だろ? と思ったが、それに対する投稿を読み漁っているうちに、これが本当であることを知った。

 『世界最後の日』? 今日が? 嘘だろ? まだやり残したこと沢山あるのに━━そう思ったとき、ふとアイディアが頭に浮かんだ。

 そうだ、これなら……これなら、『世界の滅亡』を防ぐことが出来るかもしれない。

 すぐに実行しなければ、と着替えて家を飛び出した。

 街に出ると、やはり『世界最後の日』が話題となっていた。それを信じている人が大多数だが、信じていない人もいる。だがそれは関係ない。今はただ、頭の中に浮かんだアイディアを実行するだけだ。

 戸惑う人々を尻目に、ただ目的に向かって走る。走る。走る━━……

 時間は過ぎ、辺りはすっかり暗くなり、月が空高く昇っている。

 結局、アイディアが成功することは無かった。

 まあ、そりゃあそうか、と半ば諦めの気持ちで自宅へと帰還し、そのまま布団へと入る。

 風呂だとか飯だとかどうでもいい。走り回ってクタクタだし、明日『世界の滅亡』を迎えるのなら、意味が無いしな。……もし、明日に『世界の滅亡』を迎えなければ、明日風呂に入り飯を食えばいい。そうだろ?

 そうして就寝する。


 ━━……が……しました━━


 目を覚ます。時計を見ると7時3分。やはり『世界最後の日』は嘘だったか━━そう思い、SNSを開く。

 再び、『世界最後の日』が話題となっていた。

 どういうことだ? それは昨日の出来事だろ? そう思い日付を確認すると━━昨日の日付だった。

 時間が巻き戻っているのか? だが丁度良い。今度は別のアイディアを実行するチャンスだ。

 こうしちゃいられないと家を飛び出した。

 だが、結論は同じ。成功することは無く、溜息をつきながら自宅へと帰還する。

 まあ、そう上手くはいかないよな。今度は風呂に入り飯を食った。これには深い意味は無いが、なんとなくだ。そうして就寝。


 ━━……が……しました━━


 目を覚ます。ん? と違和感を感じながらSNSを開くと、また『世界最後の日』が話題となっていた。三度目の正直ってやつか? と思った。

 どうやらまた時間が巻き戻っているようなので、またアイディアを実行することにした。

 ……結論は、同じだったがな。就寝。


 ━━……が……しました━━


 目を覚ます。SNSを開くと『世界最後の日』が話題となっている。━━またこれか。また時間が巻き戻っているのか。

 アイディアが浮かんでくるが、もう実行する気力は無かった。今まで何回繰り返した? 今まで何回失敗した? もう覚えていない。どうせ今回も失敗する。

 何かをしようとしたって、成功することは無い。もう自宅から出なくていいか。

 あーあ……結局やり残したことって何だったんだろうな。でもまあ、それもどうでもいいか。

 ━━就寝。


 ━━実験が失敗しました━━

 ピー、と警告音が鳴り響き、『機械』から『被験者』が解放された。

「……こいつも駄目だ。連れて行け」

 意識の無い『被験者』は、『処分場』と書かれた部屋へと連れ込まれた。


 

 ある日、政府は予見した。近い将来に『世界の滅亡』が訪れることを。

 政府はこれを覆すために、とあるものを開発した。『機械』だ。この『機械』に『被験体』を接続し、『世界の滅亡』を防ぐ打開策を得ようとした。

 『被験体』は国民の中からランダムに選ばれ、寝ている間に『機械』へと接続され、脳を支配される。

 脳を支配された『被験体』は、それぞれ最後に寝ていた場所で目が覚め、『世界最後の日』にいるように錯覚する。

 政府は有効な打開策を得るために『機械』を通して『被験者』に打開策を実行させるも、期待通りの結果は得られなかった。

 しかしそれでは『世界の滅亡』を迎えてしまう。そこで政府は、有効な打開策を得られるまで『世界最後の日』を繰り返すことにした。

 だが実際には何度繰り返しても有効な打開策は得られず、先に『被験者』が諦めてしまう事態に陥った。

 政府はそうなった『被験者』を『処分場』へ送り込み、新たな『被験者』を国民から選ぶことにした。

 選ばれた『被験者』は『機械』へと接続され、『世界最後の日』を迎える。


 そして繰り返す。決して成功することの無いアイディアを。

 『世界の滅亡』を迎えるそのときまで━━━━



何かを壊すのは、いつだって人間である。

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