コマ その後
コマからの製糸の時間はあくまでフィクションです。
1布は1反と同じくらいと思って下さい。
「さーてと、せっかくシンが作ってくれたのだから今日はいつも以上に頑張るわよ。」
ティナは昨夜の感動が忘れられないのか朝からとても張り切っていた。
昨日の夜だけでも凄く早くできたのだから今日の分がどれだけ早く終わるかとても楽しみだった。
コロコロとコマは回っていく。
いつもは慎重にゆっくりと伸ばしていた糸があっという間にできていく。
糸作りは村ではとても大事な仕事の1つだ。
ウーリー村の布は他の所では真似する事が出来ない色合いを出すことで有名だからだ。
祝い事の席では必ず出てくると言われるほどに取引量も多く。
他国でもウーリー布は別格の地位にある。
昼前には今日の分の糸が出来たので早速シンディの所へ持って行くことにした。
「シンディ。いるかしら?」
「ティナどうしたの?この時間ならまだ糸を作っている時間でしょ?」
シンディは何かあったのかと慌てて出てきた。
ティナは昨日の夜の事をシンディに話した。
「シンが作ってきた、コマ?だったかしら。それを使うといつもの半分の時間で糸が作れるようになったのよ。だから、早く持ってきたのよ。」
ティナはシンディに笑顔で答え作ってきた糸を手渡した。
「時間があるなら布作りを手伝ってくれないかしら?今回は祝い事が重なってるみたいで量が多いのよ。」
「良いわよ。ちょうど他の家にも教えようと思ってた所だから。」
ティナは快諾して布作りを手伝う事にした。
布作りもとても根気がいる作業だ。
1布を作るのにとても時間がかかる。
布を作った後に色を入れないといけないからだ。
シンディの家は代々ウーリー布を作る家。
家族揃って布を作っている。
「でも、シンは凄いわね。糸作りを半分の時間にするなんて」
シンディは感心した顔をしながらこっちをみた。
「私も凄く驚いたのよ。何がどうなってるのやら私にはさっぱりわからないけどね」
ティナも同意しながらも困った笑みを浮かべた。
夕方まで作業が続き村の女衆がシンディの家に集まって来た。
「みんな、シンが早く糸を作る事ができるものを作ったのよ。もし、欲しい人はロジーさんの所にいったら作ってもらえるみたいだから行ってみて。」
コマを見せてながらその場で糸を作っていくティナ。
村の女衆はみんな驚いた。
本当に早くそして簡単に作っていくからだ。
これは手に入れないととみんな一様にロジーの店へ向かっていく。
「ティナ。今日はありがとう。おかげで明日の分まで作る事ができたわ。」
「それは良かった。 そういえばシンが時間ができたら何がしたいって聞いてきたから布が作りたいって言ったのよ。もしかしたら布も早く作れる様になる道具を思いつくかも。」
「ぜひそうなって欲しいわね」
ティナとシンディは顔を見合わせて笑った。
その頃ロジーの店では。
「ロジーさんコマを作って下さい。」
「なんじゃみんなで一気に来おって。コマ?とは何の事じゃ?」
「ティナからロジーさんの所に行けばコマを作ってくれるって」
「……昨日の夜にシン坊が作っとったものか。」
ロジーは昨日の夜にシンが作っていた道具を思い出した。
あれならばワシでも作れるが本当によいのかのと思いながら。
「作るのは良いが、あれはシンが作った物ぞ。かってに作って良いものかどうかワシにはわからん。急に来られても作れんぞ。シン坊には聞いてみるから明日来てくれ。」
女衆は期待して来たのに明日までお預けになってしまい残念そうだがロジーさんも明日には作ってくれるといってるし明日まで我慢とその場は薪を買って帰っていった。
ロジーは今日は徹夜かのうと思いながらもシンを探さないと明日はえらい事になってしまうと思い
足早にシンを探しに出かけた。
翌日、シンから同意を得たロジーはコマを必死に作り女衆の怒りを買わなかったそうだが久しぶりの大仕事に「今度からは先に言え」とシンを怒っていたそうだ。