コマ
初めての投稿です。
暖かい目で見てもらえると。
感想は書いて頂けるとより良い作品になると思うのでよろしくお願いします。
イーセ国
古くは大陸の始まりの国として栄えた。
度重なる戦乱も小さい国ながら勝ち残っていた。
周囲の国は「ただ歴史があるだけの弱小国」と見下していた。
ただ、イーセだけは独自の発想を元に様々なモノを開発・発明をしてきた。
中でも1番の発明は利術と呼ばれ人々の生活を大きくそして豊かにしていった。
これは利術を発明したイーセ国の小さな村の英雄の話である。
利術の歴史 著者 カーマイル・ハーケン
冒頭の部分より抜粋
イーセ国 ウーリー村
「まーてー。 今日は絶対に逃がさないからな」
顔を赤くしながら追いかけてくるが追いかけられている者の表情は明るく余裕がある。
ふと立ち止まり追いかけて来る者に
「いつも追いかけくるが捕まえた事はあったっけ?」
「いつもいつも、バカにして今日は絶対に逃がさない。観念して働け、シン。」
シンと呼ばれる少年は困惑した表情で
「仕事は終わってるけど? 作業箱は確認したかいケイン? また、確認しないで追っかけてきてるなら班長に怒られるよ?」
ケインと呼ばれる少年は憤怒の表情から焦り顔になり
「……確認してません」
「ケイン。いつも言ってるじゃないか僕は仕事をサボった事は無いし終了報告を班長にしてから出てきてるってさ」
「だが、おかしいだろ? 大人達よりも早く終わるなんて。なんか悪いことをしているに決まってる!」
シンは呆れ顔になり
「はぁー。あのな、僕は決して悪い事はしてないし大人達より早く終わっているのは魔術を使ってるからって何回も説明しただろ?」
「それでも早すぎる……」
ケインはまだ納得できない表情で食い下がってくる。
「…わかった。やり方を教えるから今日は諦めて早く作業場へ戻れ。本当に班長に怒られるぞ」
「絶対だからな」
ケインは表情を明るくして去っていったが後々で班長に怒られるんだろうなと思いながら明日はどうやって教えたら良いかなと考えながらシンはゆっくりと家路を急ぐ。
「ただいま」
「お帰りなさい。今日はケインに捕まらなかったの?」
「捕まったよ。ほんと何度説明しても聞いてくれなくて困ったよ」
「ケインも悪気がある訳じゃないんだから」
「わかってるよ。明日は早く終わらせるやり方を教えるから頭が痛いよ」
振り返らずにゆっくりと糸を紡いでいく母を見ながら
「今日はどの位かかりそうなの?」
「お父さんが帰ってくるまでには終わると思うからそんなに多くないわよ」
「ふーん」
シンは後ろの膨大な山を見ながら、我が母ながら凄い量をこなすなと思い。
「もし、今やってる作業が半分の時間位になったらどうする?」
「そうね」
母は少し考えながら
「何か織物でもしたいと思うわね。でもこれ以上早くすると糸が切れて売り物にならないわよ。それならシンディの所に売って綺麗な布にしてもらった方が良いわよ」
「……それもそうだね。部屋で寝てるからご飯になったら起こしてよ」
「わかったわ」
シンは何かを考えながら部屋へと戻る。
やっぱり、コマを作って楽にさせてあげる方が良いのかな? でも、前世の記憶があるからって何でも出すのは良くないよな。この世界の歴史が変な方向に行ってもダメだと思うし。更に魔法がある世界だぞ、産業革命なんてしてみろ絶対に悪い事しか起こらない気がするしな。更にコマを作って渡したとしてなんて言えばいいかわからないしな。
「……起きなさい。ご飯できたわよ」
「……わかった……」
シンはゆっくりと寝惚け眼な状態で起き上がる。
食卓には父が座って待っていた。
「寝坊助め。腹が減って死にそうだぞ」
「ごめんごめん。ちょっと考え事しながら寝たからさ」
「まっ、俺も今帰ってきた所なのだがな。ハッハッハ」
豪快に笑いながら食卓に座っている父は母のご飯が大好物だ。好物を前にした人間程シャレにならないものはないからな。早く席に着いて食べてしまおう。
「母さん、少し材木屋の爺さんの所に行ってくるね」
「あら、こんな時間にどうしたの?」
「ちょっと作りたいものができたからさ」
「わかったわ」
「いってきます」
まだ日暮れ前だし村では夜の薪などを買いに爺さんの所に行く人がいるしな。やっぱり母さんには楽になって貰いたいしな。
コマ位使っても大丈夫だろ。流石に紡績機とか作るとマズイとは思うけど。ただ、爺さんの家にそれに適した木材があるかどうかだけどな。
「爺さん。いるかい」
「シン坊。こんな時間になんじゃ薪はティナが買っていたったぞ」
「夕飯は食べたよ。僕の用事は別の件さ」
「なんじゃ急に。ティナが作るの失敗でもして変な物でも食べたのか」
「母さんの料理はこの村1番さ。じゃなくて、薪にする前の木材はまだある?」
「まだあるが何に使うんじゃ?」
「コマって物を作ろうと思ってね。工具を貸してくれと有難いんだけど?」
「なんじゃそれは? まっここで作っていくんか?」
「そうだよ。じゃ後ろの作業台借りるね」
中位の丸太を半分に割ってから平たくしてっと。
片方は削ればいいよな。そこまで手の込んだ物じゃなくてもいいし。とりあえず、しっかりと回る様にすればいいしな。
爺さんが後ろから
「ほー。これがコマか? 何に使うのじゃ」
「うん? 糸を紡ぐのに使って貰うんだ」
爺さんは色々な角度からコマをみて。
「こんな物で糸が紡げるのかの?なんとも不思議じゃわい」
「いや、これだけじゃダメだよ。台と一緒じゃ無いといけないから。ここに差し込んで回すと糸が紡げるん様になるだ。爺さん工具ありがとう」
「なに、よいよい。中の丸太は銅3枚じゃよ」
「はいよ。それじゃ帰るね」
形にはなったから後はしっかりと使えるかだね。
母さんに試して貰うか。
僕でもできるけどやっぱり本職の人が使いやすい様にするのが、1番だからな。
「ただいま」
「お帰りなさい。なにその木は?」
「母さん、糸ってまだあるよね?」
「あるけど? 一体なんなの?」
母は少し困惑した表情をしながらたずねてきた。
「糸を紡ぐのを楽にする道具だよ。とりあえず使ってみて欲しいんだ。使い方は今から説明するからさ」
母は更に困惑した表情をしながらも糸の原料を持ってきた。ちょうど父もいたので一緒に見て貰うことに。
「こことここに原型を付けてからこの部分を回すと糸が紡げるからやってみて」
台座に原料を置きコマの部分に糸を括り付けて回すと。
シュルシュルと丈夫な糸ができだした。
「どう?」
母にたずねてみた。
「凄いわね。こんな簡単にできるの?」
母は歓喜しながら糸を紡いでいった。
「いつものよりしっかりとしているに時間がかからないなんて」
「これ、他の人にも教えてもいいかしら?」
「いいんじゃない? ただ僕は作らないよ? 材木屋の爺さんが後ろで見てたから爺さんに依頼してっていってね」
「わかったわ。ロジーさんに言っておくわ」
「んじゃ寝るね。明日はケインに魔法の使い方教えないといけないから早くでるよ」
これで母さんが楽になれば良いけど。爺さんごめんね忙しくなると思うけどと心中で謝罪しながら意識が遠くなっていく。
のちに、ロジー式糸紡ぎと呼ばれる紡績機が誕生したのはシンが12歳の時である。当時はコマと呼ばれウーリー村から発祥していき世界へ広がっていった。
この時は後々に様々な機械を作り出した発明の父シンは明日の事をどうしようかと頭を悩ませているだけで自分が歴史に名前を刻むなんて思ってもいなかった。