蚊の恋
私は蚊。おいしい人の血を吸う、人間にとってはあまり好まれない存在。そして、今日も私は人がいわゆる学校という場所で子孫を残すために活動を行う。
学校という場所にはたくさんのおいしい血を持っている人たちが集まっている。頑張って人に気づかれないように侵入する。この侵入に気づかれるとすぐにつぶされてしまうから気を付けないといけない。
いい血吸えるといいなぁ。
そんなことを思いながら、私はふらふらと人の間を気づかれないように飛んでいた。
バシッ
うわっ!
私は一瞬にして人の手によって床に叩き落とされてしまった。
「お前殺ったか?」
「いや、ミスった。近くにまだいるはずなんだけどな」
「マジかよ、俺、あんま蚊が好きじゃないんだよ」
「そうは言われても逃がしてしまったものは仕方ないし」
「今度は逃がすなよ」
「おう!」
キュン……かっこいい。
この時、私は人間というものに恋をしてしまったのだった。
そしてこの時から私は私を叩いた男の子の周りを気づかれないように浮遊するようになった。
叶わないのは十分理解はしていたが、少しでも側に居たいという気持ちになった。たとえ叩かれたとしても。ただ見つめるだけでいい。それ以上は望まなかった。
あまりにもその男の子に夢中だったからか、いつからか人間の血を吸わなくなっていた。そのせいか、以前よりだいぶやせ細ってしまってあまりうまく飛べなくなっていた。だからと言って、人間の血を吸おうとするとあの男の子の顔が思い出されて吸えなかった。
そしてある日の事、私はいつも通り筆箱という大きなものの影に隠れて男の子の様子を見ていた。すると、その男の子がいきなり筆箱動かした。
あっ、気づかれちゃう。
……かっこいい。キュン。
バシッ
私はもう飛ぶ気力がなくて、私の恋した男の子の手によってつぶされた。最後に見たのはやっと仕留めた! っていう感じの爽やかな男の子の満面の笑顔だった。
最後に好きな男の子と目が合った。もうそれだけで私は本当に幸せだと思った。
本当にこの世に生まれてきてよかった。
ありがとう、私に恋を教えてくれて。
始めて一人で書きました。
まだまだ未熟者ですが、よろしくお願いします。
機会があればまた書くつもりです。