開かれた運命の扉
浩輔との勉強会の帰りに、大型トラックに轢かれてしまい、命を落としてしまった俊たち。
そして、俊はある夢を見ていた。
その夢とは、幼い頃に、俊と夏波に恋羽の3人で、遊んでいる夢だった。
「懐かしい夢だな……。たしかあの時俺は……」
「俊起きて〜!遊ぼうよ〜!」
「俊……、寝ちゃダメだよぅ……」
「起きてよ〜、俊〜!ねぇってば!」
……………………。
「……、そうだ、あの時俺は遊びの途中で寝てしまったんだ。それで2人が必死に起こそうとしてたんだっけか……」
「でもなんで、そんな夢を見るんだ?…………、あれなんか体が揺さぶられてる?」
「……ゅん!俊!起きて起きて!」
「俊……寝てる場合じゃないよ……」
「んんっ。ん……、あれどうしたんだ?」
「あれどうしたんだ?じゃないよ!私たち死んだはずでしょ?」
「確かにそうだけど……」
「周りを見てみてよ!」
「周り……?」
夏波に言われて、周りを見てみると、自分たちは小さな部屋のようなところにいるということはわかった。
「不思議な世界だな、ここ」
「んもう、なんで俊はそんなに呑気でいられるの?全くもう」
「えっと、なんかごめん?頭がぼーっとしててさ」
「そうなんだ……、大丈夫?」
「問題ないよ。大丈夫」
文句を言いつつも、心配してくれた夏波。すると、俊たちのいる小部屋らしきところにある唯一の窓から外を覗いた恋羽から呼ばれた。
「俊こっち。こっち来てここから外覗いてみて……」
恋羽に手を引かれ、言われるがままに外を覗くと。
どこまでも真っ白な無の世界がそこには広がっていた。
「なんだここ……。いわゆる死後の世界ってやつみたいだ」
「俊見たことあるの?死後の世界っていうの」
「いやないけど……、本当にあるとしたらきっとこんな感じかなって思っただけ」
「そうなんだ……。ここから出る方法とかないのかな?」
「そういえば……、こっちに通路があるんだ……。俊がまだ寝てる間に見つけてね……?こっちに進めば何かある気がするんだよ……」
「本当だ。ありがとう、恋羽」
「ううん、こちらこそ。お役に立てたのなら良かったよ……」
俊は、気の狂いそうなほど長い通路にやや気後れしながらも、2人を連れて歩き出した。
しばらく歩くと、開けたところに出た。
そこは、今まで歩いてきた通路とはまったく違い、装飾が施されていて荘厳な雰囲気が漂っていた。
「すごい……、綺麗……」
後ろの2人が周りを見て感動している時、俊の目線はその空間の中央に向けられていた。
「あれは誰なんだ?」
「俊、どうしたの?誰かいたの?」
「ああ……、あそこに誰かいるんだよ」
俊がそこまで話した時、その誰かがゆっくりとこちらを向いた。
「あなたがたは……?どうしてここに来れたのですか……?まさかとは思いますが、侵入者ではないでしょうね……」
「もし、侵入者なのであれば、相応の罰を受けてもらいますよ……?」
「いえいえ、侵入者では無いです。実は、事故に遭ってしまって、気づいたらこの世界にいたといいますか……」
「えっ、それではまさか本当に……?もし、本当にそうなのでしたら、打診してみる価値はありそうですね。……よしっ!」
突然後ろを振り向き、ぶつぶつと虚空に向かって喋り出した顔の見えない誰かさんに少しビビりながらも、俊が思い切ってあることを聞いた。
「あのぅ、あなたは一体誰なんでしょうか?顔が見えていないので何もわからないんですが……」
「あらごめんなさい、まだ名乗っていませんでしたね。私は女神アルテュール。運命に選ばれし者を転生させる仕事をしているわ。まあ、この転生の力も、お父様の命を受けてここに来てから、ただの1度も使ったことがないのだけれど」
「な、なるほど……」
「顔が見えないことについてはね、今から私が言うお願いを聞いてもらうことで解決する話なのだけれど。どう?」
「……、分かりました。聞きましょう」
「ちょっと俊!?どこの誰かもわからないんだよ?そんな人の話を聞くの?」
「でも、道はそれしかないよ。どうせ、元の世界には戻れないだろうし。ね?」
何度も、俊が説得するとしぶしぶだが、夏波は納得してくれた。
恋羽は、そんなに気にしていないようで、「恋羽は大丈夫か?」という、俊の問いかけにも「大丈夫」という言葉が返ってきた。
「お願いできますか?」
「分かったわ。簡単に説明すると、私が生まれた世界、あなた達からすると異世界になるのでしょう。その世界をあなたたちの力で救っていただきたいのです。」
「ただし、あなた方は死んでしまっているので、転生という形になるわ。それでもいいかしら?」
「ええ、構いませんよ」
「私も大丈夫です」
「私も……大丈夫……」
「ありがとう。それじゃあ、時間が無いので早速行うわね」
そう言って、アルテュールは何やら呪文を唱え始めた。
「我が祈りに答え、かの者達に転生への道を開きたまえ!」
ギィィィィ
「扉が開いたよ!」
「さあ、どうぞ。扉をくぐると転生となるわ。良き人生となることを祈っているわね」
アルテュールに見送られて、3人は一緒に扉をくぐった。
3人がくぐり終えると扉は閉じて、真っ白な世界が残った。
3人が言葉を交わす間もなく意識が白く塗りつぶされていき、まもなく3人は姿を消した。




