お菓子の家、できたーー!
「やれやれ、お前に期待した俺が馬鹿だったよ。いいか、子ども、特に人間の子どもが好むものはなんだ?」
「ミミズ寒天!」
「阿呆!それが好きなのはお前だろ。しかも確かにブームではあるが、魔女の間でだろが。」
べしんっと黒くてツヤモフな尻尾で頬を張られた。
ちくしょう痛い。なめらかなのに痛い!
気をとりなおして、「じゃあ、人間の子どもって何が好きなのさ。」
さっぱりわからん。低カロリー高タンパクで、お口でとろけるミミズ寒天がだめなら何。
コリコリ食感が楽しくて噛めば噛むほど味が出るツチノコ?
「...何。」
あれこれ思考をめぐらせていると、視線を感じた。私のかわいいかわいーい使い魔こんちくしょうがこちらを見ていた。あれだ、目からブリザードが吹き出してて凍えそう。
「お前、馬鹿だろ。馬鹿だな、すまん。」
酷くない?
「あれだよ、子どもが好きなのは菓子だよ。クリームだの、砂糖だのがたっぷりのやつ。今頃なら、飢饉がひでえらしいから、イチコロだ。食うにも困ってるとこに大量の菓子。こんな贅沢が目の前にあったら喜んで飛びつくだろうよ。そこを捕まえりゃいいだろ。」
ん、なるほどねえーーー!すごい!うちのこすごい!
お菓子か。お菓子ね。何がいいのかさっぱりわからん。でもいいや!そうと決まれば、お菓子作りだ!
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さて、なにを作ろう。
アルちゃん曰く、「チョコレートなりケーキなり、クッキーなり砂糖のバケモンみてえなの作っときゃぁいいだろ。」
とのことなので、張り切って作ります!砂糖のモンスターを!
テレテッテッテッテテ♪テレテッテッテッテテ♪
「マルグレーテの、三分間クッキング~!」
「阿呆。菓子は三分じゃできねえよ。あとそれ、下手したら訴えられんぞバカめが。」
うん、話のわからない猫はほっといていっくよーー!
まずはチョコレートを作ります。材料はカカオ、ヤモリ、アオダイショウの舌!これらを半液状になるまですりつぶす!親の敵をすりつぶすがごとく力強く、怨念込めてやるのがコツです。
あっれれ~?おかしいなあ。でろでろしたペーストになったよ~?
デモ、ダイジョウブ!
秘密の呪文を唱えたらアラ不思議~。
「チョコレート、完成です!」
「いや、何でだよ。魔法ってご都合主義な。俺もう突っ込まねえわ。」
この調子でガンガンいきます!
数時間後、そこには砂糖の化け物の山が...!
ここにいたるまで、数々の苦難がありました。ケーキに使ったクラーケンが実は生きてたり、通りすがりのサラマンダーに家屋半焼させられたり、使い魔の視線がブリザードだったり...。
私は!成し遂げた!
ついでに、森のド真ン中にお菓子の山って不審だから、お菓子の家にしてみたよ!
うん、我ながらフォトジェニックだね!ちなみに同じことをしたご先祖様がいたらしいよ!
その魔女、今も健在で嫁いびりに精を出してるらしいけど。
「お前バカだろ。かまどに突っ込まれてーなら俺がやんぞ。」
イヤン、この使い魔目が本気ィ。こわっ。
「大丈夫だよ。対策はあるし、私にはアルちゃんがついてるもん。」
「アルちゃん言うな。アホ娘。」
さあ、かかってこい!人間!
次回、とうとうグレーテルが!?