第三話『再会は忘却と共に』
「後ろを向いても、意味がなくて、前を向いても、何も見えないから、今を精一杯生きるんだ」
その高校は丘の上にある。
私立・潮見ヶ丘高校、S県鳴海市にあり、生徒数四百人程、校風はごく一部の規則を除けば自由気まま、進学校では無いが独自の雰囲気が人気で県内県外からも入学希望者が多い人気校である。そして、昇、裕一、舞の母校となる高校でもある。そんな、潮見ヶ丘高校略して潮高は今入学式の真っ最中である。昇達はどうにか入学式に間に合って、いい言い方をすれば一生に一度の経験をしてるのだが、つまらない大人達の長話など語る気も失せるので、全部省略する。さてと、潮見ヶ丘高校の入学式が始まりそして終わった。
昇達はといえば、これから一年を過ごすことになる教室に移動していた。クラスわけ、昇と裕一は腐れ縁が導くままに、同じクラスになった、ちなみに舞とは別のクラスである。いってなかったが彼等は、これで小中合わせ十年間の同じクラスである。はあ、これでようやく説明臭い文は終わり、昇のところに戻りましょう。どうやら教室で裕一と論議してるよう、裕一は自分に当てられた席に座り、昇はたまたまあいていた他人の席に後ろ向きに座りしゃべっていた。
「裕一さんよぉ、何か仕組まれてないかい、十年だぜ十年!いくらなんでもおかしいって!」
「そうかな?これも数奇な縁だと思えば一興だよ。それとも僕と一緒じゃ嫌かい」
「嫌だね、大体、おまえとの縁が有っても腐っていて嬉しくないさ」
昇がうんざりしたように悪態をつく、付き合いの長い裕一にしてみればこれも照れ隠しをしてるくらいにしか取られないものだが。もちろん昇も、本気でいってるわけでは無いが、少しいってみたかっただけである。
「確かにこの縁は腐ってるかもね。でも、これからも切れそうに無いよ」
「それもそうだな、まぁ一緒のクラスになっちまったんだから、一年間よろしくな」
そうゆうと二人は、がっしりと握手をし友情を確かめあった。暑苦しいことこの上ない。そしていま昇のしている行為は迷惑この上ない。なぜなら空いていた席といえどそこに座るべき人はいるのであって、その人が座ろうと戻ってきたところ男が一人自分の席に陣取ってるではないか。これを迷惑と言わず何を迷惑と呼ぼうか。もちろん昇は注意されるべきであり、立ち退くのが必然、その自明の理に乗っ取り、今まさに昇に話掛けようとする少女がいた。
「楽しく話してるとこ悪いんだけどさ、そこボクの席なんだよね退いてくれるかい」
「ああ、すまない」
昇は反射的に席から離れると少女に対して向き直り謝った。少女も謝れば別に良いといった感じで、そのまま席に着くと、前を向いてしまった。ここで昇は、ふとこの人物を最近どこかで見たような気がした。確認できればいいがあいにくどこで見たのかも曖昧で、何もできずにただぼーと眺めることしかできなかった。
「そんなに彼女のことが気になるのかい」
「ああ、いやただどこかで見たような気がするんだがどこで見たかも思い出せないんだ」
裕一にそう話しかけられることで昇は、再び裕一の方へ向き直った。その顔には自分困ってますという表情がありありと浮かんでいる。
「またかい昇、この前もすれ違う日に対して同じことを言っていたよ、だいたい同じ町に住んでるかもしれないんだから、どこかであった気がしてもおかしく無いじゃないか」
「それもそうだな、で、裕一聞いてくれよこの前この高校の噂を聞いてだな・・・・」
まぁ、このようなことは昇にとっては、日常茶飯事なのだから、しばらく裕一と話した後にはすっかり忘れていた。そうこうしているうちに、休み時間が過ぎ教室に新たに担任となる人が入ってきたことで昇と裕一は話すのを止め、昇は席に戻っていった。このときさっきの少女に見つめられているとも知らずに。
「皆さん初めまして、って入学式の時にもあいましたね。私このクラスを担当する、神流 弥生【かんな やよい】と言います。何か解らないことがあったらどんどん訪ねてください、じゃあ初めてのHRを始めちゃいますねまずは・・・・」
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HR中・・・・・
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「・・・・・それでは皆さん、これでHRも終わりです、明日からいきなりだけど授業が始まるから遅刻しないように来てくださいね」
そんなこんなでHRもつつがなく終わった。昇も帰りの支度を初めていたが少し困ったことになっていた、それはと言うのも、さっきの少女が机の目の前にたってこちらを見ているのである。
「轟昇だよね、きみの名前」
「そうだがどうかしたか、恨みを買うような事はなかったはずだが、もしかしてさっき席に座ってたことまだ怒っているのか」
いきなりそう聞かれたら素直に答えるしかないだろうそして相手の目を見れば明らかに怒っている。昇には、なぜ怒っているのか解らなかった。
「別にそんなこといちいち根に持ったりはしないよ。それよりボクのこと解らない、あれだけ一緒にいたのに」
「はっきり言えば、解らん。名前を聞かなきゃ思いだせんかもしれんし、第一俺に同年代の女性の知り合いなど数えるほどしかいない」
胸を張って昇はそう答えた。胸を張るようなことでもないだろうし、昇自身いっていてむなしくなっていた。目の前の少女はあきれたというか、哀れんでるというか、そんな目を昇に向けていたが、気を取り直すと再びしゃべり始めた。
「名前か・・とっくに覚えてもらってると思ったんだけどな・・・。まいっか、改めてって事でボクの名前は五十嵐 明【いがらし あきら】、昇バイト先の同僚の顔と名前くらいしっかり覚えとかなきゃだめじゃないか」
「バイト?同僚?ああ、アキラかおまえ!!全く気づかなかったぜ!」
「だからそういってるじゃん、もしかすいて本気で忘れてた、いつものバイトのユニフォームじゃないからっていくらなんでもひどいって」
目の前の少女、五十嵐明を昇は知っていた。昇のバイト先の一つである、コンビニ龍孫【ろんそん】で一緒に働いている同僚である。いつもは、短い髪をさらに後ろでまとめおり、元々中性的な顔立ちでスレンダーな体格のためか最初昇が男性と間違えてこっぴどく注意されたのを今でも新しい記憶として残っていた。今はそのまとめていた髪を下ろし、高校の制服に身を包んだ彼女は中性的な顔立ちとスレンダーな体格はそのままだが、バイトで見る雰囲気とは違って見える。昇はなるほどと思った、これは解らないと。
「悪い悪い、龍孫でのイメージが強くてな、こうして髪を下ろしてるのも新鮮で良いな」
「そ、そんなお世辞はいらないって、全くそんなこと言うよりちゃんと人のことを覚えなきゃだめなんだから」
「世辞や冗談じゃないいだがな、まぁいいや、同じクラスになったのも何かの縁だ、これから一年よろしくな」
「こちらこそ、知り合いが一人でもいてうれしいよ。でもさせっかく同じ高校に通うんだから、1年と言わず3年間よろしくね」
「ああ、言われずともそのつもりだ」
こうして、二人は笑いあった。また一つ友情を結び終えた昇だが、男女間の友情が本当に成立するかしないかは現実においても至上命題であります。さてさてこれからどうなる事やら・・・・・・・つづく
次回予告
こんにちは、初めましてかな?五十嵐明です。次回予告を任されました。えっと、次回は、『昇は入学して早々校舎で裏での生徒と先生との密会を見てしまった。そこから巻き起こる高校を舞台にした連続殺人事件、疑われる昇、昇の疑いを晴らすべく奔走する明、そんな明に嫉妬する舞、事件以来姿を見せない裕一、犯人はいったい誰なのか・・・・』学園推理ミステリー第一弾『若ツバメの予言』こうご期待ってっっっっっ全然話が違うじゃなですか!!!!ほのぼの日常ストーリーはどこに消えてたんですか!!!
読「やっぱこうで無くちゃおもしろくないな、では次回、”バイトするのも楽じゃない”『迷い込んだ珍客』こうご期待!!」
タイトルコールまでとられた〜〜〜!
どうもこんにちは、きょう第3話まできました、作者は一安心です。ですがこの先、なんとプロットがない!!これからできる限り、間をおかず、更新したいと思います。ではここまできてくれた方たちに無量の感謝を。次話でまたお会いしましょう。