表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/312

死神佐平 12

 男はクスクスと笑いながら、

「あーあ、おたくらテレビ見てないの? 最近、流行ってんだぜ。原因不明の肺とか胸のビョーキ」

 と、あらぬ嘘を吐いた。


 少年の喉は、ゴボッガボッとおかしな音を立てている。

 呼吸困難の恐怖に少年は目を見開き、胸を、喉を掻き毟っていた。


 原因不明の病気と言われても、おかしくない姿だ。


「その病気、伝染うつるとか言ってたっけ」

 男は、どう対応していいのか分からずに困惑しているリーダー格の少年に、ニヤニヤと笑いかける。


「友達だろう? 病院にでも連れていってやれよ」

 男は、まだ笑いが止まらなかった。


 少年は、もう限界に近い。

 何とかして息をしようともがく少年を見下ろして、あとの二人は顔を見合わせると、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「べつに、友達なんかじゃねーよ」


 二人は地面をのた打ち回る少年を気味悪げに見ながら、互いを突つき合うようにして、

「い、行こうぜ」

 と、言って、慌てて路地から駆け去ってしまった。


 男の顔から、笑みが引く。


 友達を、仲間が苦しんでいるのもそのままに、彼等は他人を見捨てても平気でいられるのだ。


 それが人間なのだ。


 冥府にいた時、男が殺した連中は、自分が殺される直前まで仲間のことを気遣っていた。

 それが仲間でなく、たまたま居合わせた者同士であっても、他者の身を気に掛けるのが、妖かし一般だと男は思っていた。

 その一般は、人間には当て填まらないらしい。


 それと気付くと男は、むかついてしょうがなかった。


 これがムカつくという感情かと男は思いながら、足元で痙攣している少年を見下ろした。


 男が力を使った為に、気管をコーラが玉となって塞いでいる。


 男は、苛立ちも露わに少年の胸を蹴り上げた。

 その反動で、気管を塞いでいた玉は喉から飛び出し、少年は気を失った。


 男は、倒れた少年をもう一顧だにせず、路地を逆戻りして、自分が出てきたのとは違う横道を見つけると、その道を折れた。

 

 人目を避けて男は、人気のない路地を選んで、ただひたすらウロウロしていた。

 

 迷子になるという感覚も、知らない場所を歩いている不安感も何もない。

 

 男にとって、路地は全て路地であったし、街もまた全て街であった。

 それだけでなく、街というれ物に入った人間達も、顔のない一括りにできるたぐいのものでしかなかった。



 男は暗い空を見上げて、ぼんやりとする。


 どうして自分は、一夭ひとりなのだろう、と。


 こんなに沢山人間がいても、やっぱり男は一夭だ。


 死神と怖れられた冥府にいた頃と、変わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ