死神佐平 2
背から振り落とされた骸骨が、地面に転がったところを、赤熊を反転させて戻ってきた女童が火炎刀で、肋骨の隙間を刺して地面に縫い止めた。
「火呑童子」
すかさず上げられた女童の呼び声に答えて、離れた所から様子を窺っていた火呑童子達が、投げ網を骸骨の上に投げかけた。
火呑童子と水呑童子が、力を合わせて網の端を押さえた為に、骸骨はついにとり押さえられてしまう。
「嫌だ。私は、もっと好きに生きたい。放っておいてくれ」
骸骨が、必死でもがきながら叫び声を上げた。
白魔から降りた男童が、優美な動作で骸骨の側に近付く。
「其の方の好きに生きるは、許されることではない」
男童は、水神刀は腰に戻していた。
手を伸ばすと男童の手にはもう、神名帳と筆がある。
水宮司は、無表情に骸骨を見下ろしながら、罪状を読み上げるとともに、神名帳にその旨を記していった。
「無差別大量殺戮の罪により、其の方を永久凶悪犯罪者として、芳名する」
最後に水宮司は、骸骨の真名を神名帳に美しく流れるように書き留めた。
そして、開いたままの神名帳を空に向かって、投げ上げる。
「捕縛」
男は布団を剥ぐ勢いで飛び起き、それでようやく今までのことが全て夢であることに気付いたのだ。
寝汗がひどかった。
悪夢にうなされていたのであろう、着衣も髪もひどく乱れている。
男は荒い息を吐いて、暫くジッと布団の上に座っていた。
男は、ただの夢だと自分に言い聞かせる。
しかし、それは全くの夢幻ではなかった。
悪夢は、現実に起きた出来事をなぞっていたに過ぎない。
八百年前の記憶は、まだ生々しかった。
男は夕方の、カーテンで窓を覆った為に薄暗い部屋の中をゆっくりと眺めて、自分を落ち着ける。
部屋は、1DKのアパートだ。
壁には、アイドルのポスターが張ってある。
パイプベッドの横の床には、マンガ雑誌と週刊誌が積んである。
ベッドの反対側にはサイドボードがあり、上にコンポとCDが置いてあった。コンポの周りにはCDが積み上げてあって、崩れているのもあった。
二十代前半の、男の部屋だ。
適度に散らかっている。
テーブルにはカップ麺の空容器や、スナック菓子の空き袋などが散乱している。
一緒に放り出してあるケータイの電源は、切ってあった。
ベッドの足元側の床には、下着と靴下が転がっている。
ベッドから、キッチンまですっかり見渡せた。
ガスレンジは、湯を沸かす時にしか使われない。
料理器具らしいものも見あたらなかった。
コンビニ弁当と、カップ麺と外食で済ましているからだ。
親元を離れて自活しているフリーターの若い男など、大抵がこんなものだろう。




