死神佐平 1
彼等の存在は、別にそれほど害となる訳でもない。
銀丸は、まあいいかと気にしないことに決めたようだが、宮の考えはもっと深いところにあった。
「それに、あの者ら。役に立つやも知れぬ」
宮は、無邪気に歓声を上げている二人の刑事を見て、決して子供のではない笑みを浮かべた。
それは、水宮司という指導者に相応しい表情であった。
其の二 死神佐平
冥府
黒と白と赤の三色が、まるで鞠のようにぶつかり合ったり離れたり、またぶつかったりと、目まぐるしい動きを見せている。
それは鞠ではなく、三頭の獣である。
獣の背には、それぞれ人が跨って、獣を駆けさせているのだった。
白い獣は、白魔と呼ばれる獣だ。
全身抜けるように白い、猫科の獣である。
白魔を操っているのは、白い狩り装束に身を包んだ男童だ。
男童の手には、水神刀が握られている。
同じく白い狩り装束に身を包んだ女童は、赤熊に跨っていた。
獣は、燃える炎の色をしている。
女童の手に握られているのは、火炎刀だ。
白い獣と赤い獣に乗った二夭が追っているのは、黒い獣に乗っている者である。
女童は、黒い獣――黒犬に跨った相手に火炎刀を振り降ろしたが、剣は水の防御膜によって弾かれた。
相手が突き出してきた槍を女童は躱して、赤熊を蹴って間合いを空けさせる。
間髪を置かずに白魔が突っ込んできて、男童は黒犬に跨った相手に切りかかっていった。
またしても防御膜によって、男童の水神刀も弾かれてしまう。
黒犬の背に乗っている者は、黒い覆いのついた布を頭からすっぽり被っていた。
但し、布は穴が開き、鉤裂きだらけである。
その為、布の下の姿は、良く見えていた。
布から覗いているのは、骸骨だ。
頭には、頭皮の破片と数本の髪の毛がへばりついている。眼窩は、ぽっりと暗い穴が空いているだけだ。
槍を掴む手も骨ならば、黒犬の腹を蹴る足も骨である。
その骸骨が黒犬を乗り回し、火炎刀と水神刀を、身体の周りに張り巡らせた防御膜によって防ぎながら、逃げ惑っているのだ。
黒犬は、そろそろ体力が尽きかけてきていた。
黒犬よりもずっと持久力のない赤熊は、時々素早く動いて黒犬を牽制するだけで体力を温存してあり、疲れ知らずの白魔が、執念深く右に左に黒犬を追い続けているのだった。
機は熟したとばかり、その時、赤熊が素早く黒犬の前を駆け抜けた。
その途端、黒犬が激しく転倒する。
赤熊が、主人の命令通りに、地面に這わせてあった紐をくわえて引っ張り、黒犬の足を引っ掛けたのだ。




