河童与之助 21
宮は愛くるしく微笑むと、
「ありがとう。警察のおじちゃん」
と、いかにも無邪気な子供を演じて見せた。
微妙に暗示をかけるのも忘れていない。
青山も相馬も、宮の言葉遣いなどあっさり忘れて、司君はいい子だねぇなどと、にこやかに笑っていた。
二人に見えないように宮がソッと、疲れると溜め息を吐いたことは、青山も相馬も知らない。
青山と相馬は座敷に通されると、銀丸の推理のやり方に興味をあれこれと尋ねたが、銀丸はしどろもどろで、何一つうまく答えることができなかった。
宮はそれをフォローするにも、銀丸の推理方法がどこからくるのか、本人は口下手で説明できないのだということにしておく。
筋書きを考えた宮に聞かれても、答えようのないことだ。
犯人がいて事件があるのではなく、事件が先で犯人は後なのである。
推理も何もあったものではない。
事件に相応しい犯人を、作り上げているだけなのだ。
それを、疑いすら挟まずに人間達は、精神分析や科学的鑑定法などを振り回して、犯人像はここから解けるなどとやっているのだ。
理由の後付け、意味付けなど幾らでもできる。
そもそも犯人の男は、実行犯ではないのだ。
しかし、事件をどういじくり回すのも人間の勝手だし、分かり良い犯人像を提出したところで、宮達のすることは終わっている。
達、と言っても、実質やっているのは宮一夭であるが。
推理小説に出てくる名探偵もかくやですななどと、青山は銀丸を持ち上げていたが、難事件にぶつかった時は、これからも協力して欲しいと、彼等は言っているのである。
真実、銀丸の推理力を認めた訳ではないが、うまくすれば自分達の昇級に、利用できるのではないかという気持ちが、彼等に僅かでもあったことは確かだ。
青山と相馬は、ここが縁起堂という駄菓子屋であることを知ると、興味をもったようで、店舗の方を少し覗いても構いませんかと聞いてきた。
ああどうぞと、銀丸は気の抜けたような返事をする。
この三日ほどで、ずいぶん銀丸も人と接するのも慣れたが、とぼけっぷりは相変わらずであった。
そもそもこの銀丸、冥府にいた頃から、ぼんやり者として通っていたのである。
青山と相馬は、懐かしいなどと言って、昔と変わらぬ駄菓子たちに目を輝かせていた。
二人で勝手にやってもらっておいて、その間に宮は茶の支度をすることにした。
台所で飲み物の用意をする宮にくっついて、銀丸は宮に囁きかける。
「宮様。いいんですか?」
もっと強い暗示にかけて、彼等を二度と宮達に近付かないようにさせることは、簡単だ。
しかし宮は、日本茶を湯飲みに手際よく注ぎながら、
「まあ、当分、放っておいてもよかろう」
と、結論づけた。




