河童与之助 17
良き助けがあればこの男、立ち直ることも可能でございましょう。
塀の中であろうが、人生にかわりはないということにございます。
そう、たとえ捕われの身であろうとも。
では、この次には、ちょっと珍しいお話をいたしましょう。
昔、十妖の一夭、今は永久犯罪者の汚名を免れた者の、話でございます。
変わった――いえ、変わったと言えませぬか。
罪を犯す者も、妖かしに代わりはないんでございますから……と、そういうお話にございます。
さてさて、まだまだ物語は続きまする。
お目を、お離しなきように】
縁起堂 一階 台所と続き間になった居間
午後二時頃 薄曇りの空が広がっている
水溜りで溺死した子供が、両目を刳られているという世にも怖ろしい事件は、警察の尽力により見事早期解決となった。
犯人は、事件の次の日の夕方には任意同行で、所轄に連行されているのである。
初動捜査がうまくいき、目撃証言などが全くないにも関わらず、犯人に辿りついたという事実は、警察の不始末が続き、離れがちであった人心を見事に捉えることとなった。
初動捜査の指針を与えたのは、宮である。
そして、彼等はうまく宮の誘導するままに、真実の犯人とは違う者に辿りついた訳であった。
真実の犯人とは、無論、河童子の与之介という妖かしなのである。実際の犯人の方は、一足先に宮によって捕縛されていた。
子供の両目が刳られているという、信じられないような残酷な事件は、マスコミの気を引いて、大々的に報道されていた。
宮が行った事後処理によって、全身がズブ濡れであったという真実は消されてしまった。
そして溺死は、雨で水量の増えていた側溝に、頭を突っ込まれたゆえとなった。
刳った目が見つからなかったのは、それも側溝に捨てた為だ。
犯人が目をどうしたかは、宮も迷うところだった。
与之介が啖ったので、目をとり返すことは不可能である。
しかし、犯人が刳った目を食べたことにしてしまうのは、いくら何でもまずいかと宮も思ったのだ。
人の倫理観に照らせば、それはあまりにも異常な行為としか言いようがない。
結果、この事件は、宮が望んだ通りに、幼児期の精神的外傷に起因する事件として人間達に処理された。
犯人とされた男の過去が明るみに出ると、人々の同情を誘うことにもなった。
但し、罪は罪。しかし精神的なケアも必要という見方も強い。
宮が見るところによると犯人は、本人が心から反省している為に死刑だけは免れ、無期刑となりそうな気配だった。




