表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/312

河童与之助 15

 金丸くろがねまるは、自分の末弟の不始末にすっかり憔悴していて、銀丸しろがねまるが何かやらかしていないか、そればかりを宮に聞いてきた。

 銀丸が今もまた、気持ち良さそうに気を失っていることは、宮は言わなかった。


 かわりに、世辞ではなく銀丸は良い男だと誉めた。

 ただし、単純――では言葉が悪いので、素直と言うが――その性質を誉めただけで、使える者だという意味で言った訳ではない。


 それでは、嘘になってしまう。

 

 それと金丸に、銀丸とうまくやっていけそうだと伝えるのも、宮は忘れなかった。

 銀丸と人界でうまくやっていくには、ひとえに宮の努力にかかっていると言っていいだろう。

 

 銀丸をうまくフォローし、リードしてやらねばならない。



 宮が事後処理をしている間、こうして銀丸は眠っていたのだが、宮が風呂の様子を覗きにくる気配で、さすがに目が覚めた。

 目覚めて身体を起こすなり銀丸は、くしゃんとくしゃみを一つやらかした。


「風邪を引いたのではないだろうな?」

 宮は、銀丸の身体を心配する。

 

 銀丸が、またしても迷惑をかけたことを知って、アワアワと何か言おうとしたが宮は「良い良い」と、銀丸に何も言わせなかった。

 銀丸に悪気はない。

 

 銀丸が起きていても寝ていても、どちらにしても少なからず迷惑を被ることが分かっていたので、宮は気にしないことに決めたのだった。


水呑童子すいてんどうじが、湯を立ててくれてある。先に其の方が使え。私は、まだ幾つか仕事があるからな」

 宮は、擦り硝子の引き戸を引いて、風呂場に入った。

 靴下を脱いで、裸足になるのも宮は忘れていない。

 

 宮は簀子を洗い場に出し、風呂蓋をとって湯の温度を確かめた。

「宮様の湯殿の世話なら、私が」

 銀丸が、風呂場の入口まで来て言った。

 

 縁起堂にある内風呂は、建物よりは少し新しい。

 あとで増築されたからだ。

 築三十年ほどだろうか。

 

 内風呂ができるまでは外風呂で、銭湯を使っていたのだろう。

 ここの風呂は、最近のマンションの風呂と比べれば、広いぐらいであった。


 しかし水ノ宮の内殿にある御湯殿おゆどのは、広さ約五畳ばかりもある。

 無論、比べるものでもないだろう。

 人界での尺度で言えば、五畳は十畳以上の広さに当たる。

 

 本来なら湯女ゆななどが侍って、宮の身体を洗ったりするのであるが、それを宮は面倒がって自分で済ませてしまうのだった。

「いい。向こうでも、他者ひとの手は借りてはおらぬ」

 宮は、洗い桶や椅子を、簀子の上に手際よく並べていく。

 

 そうしながら銀丸に、指示を与えてやるのも忘れなかった。

「これがシャンプーで髪を洗うもの。これが石鹸、これが身体を洗うタオル。バスタオルと着替えは、出しておこう。ブラシはこれに」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ