河童与之助 14
捕縛が無事済んだのを見てとると銀丸は、安心してドッと疲れが出たのだろう。
銀丸は、クタクタとその場に崩れ落ちていった。
宮が慌ててそれに駆け寄って、失神寸前の銀丸を支えたのだった。
「あっ、これ、銀丸。これ、気をしっかり持てと言うに」
閑話休題。
気を失った銀丸を縁起堂まで連れ帰るのは、一苦労であった。
宮一夭でできるものではなく、結局、水呑童子の二夭の力を借りねばならなかった。
一夭には、水界を伝って、気絶したままの銀丸を縁起堂の風呂場まで連れていってもらったのである。
人界の着衣であれば、水界を通る時にびしょ濡れになってしまうし、もう一つ理由があって、別の水呑童子には、銀丸の衣服と衛士の制服を交換してもらったのだ。
一夭は銀丸を、そしてもう一夭には、宮が縁起堂に普通に電車を乗り継いで帰る時の、連れとなってもらった。
その為に、銀丸と年格好の似た者に残ってもらったのだ。
宮一夭では、家出少年かと、人を呼ばれてしまい兼ねないからである。
宮が、縁起堂に辿り着いた時には、銀丸を運んでくれた水呑童子が気を利かせて、風呂の支度とともに、居間に布団まで敷いてくれていた。
気持ちよく失神している銀丸は、脱衣所に放り出されたままだ。
脱衣所の床だけ濡らさないように、そこだけが濡れている髪の毛の下にタオルが当ててあった。
但し、銀丸を起こすことまでは気が回らなかったようだ。
それとも、そのまま寝かせておいた方が、よほど邪魔にならないと踏んだのかもしれない。
べつに銀丸が起きていても、何かの役に立ったとは思えない。
無事縁起堂に戻った宮は、水呑童子の二夭――まだ三十にはなっていない衛士と捕り方の男達に懇ろに礼を言って、ゆっくり休んでくれと労って、解放してやったのだった。
それからすぐ、宮が寝んだ訳ではもちろんない。
宮は家に帰るなり、水鏡(居間にかけられた代用品だが)を使って、冥府の重役達にそれぞれ連絡事項を通達をし、指示を仰がれたうちの、あるものはその場で答え、あるものは熟考してから連絡する旨を伝え、次から次へと出てくる用事をうまく捌いていったのだった。
重要かつ急ぎの仕事だけでも、宮は忙しいにも関わらず、ほんの少しではあるが、侍従頭とも話をする時間をもうけるのを忘れなかった。
侍従頭――銀丸の兄の金丸は蟄居を望んだが、宮はそれをさせなかった。
金丸は思い詰める性質なので、あれこれ雑用を与えて、休む暇もないほど忙しくさせておいた方がいいことを宮は見抜いていたからだ。




