河童与之助 6
「俺と同じ年?」と、相馬は驚いて呟いた。
相馬は、老け顔らしい。
三十代前半に見えるなどと言っては、失礼だったろう。
ただし、ここで使った二十八という年齢は、縁起堂の本当の息子の年である。
狐は一年で十才になり、二年で二十歳ぐらいの外見にまで成長する。
中には、外見の成長が少し遅れる者もいるが、銀丸は平均的な見た目をしている。
二十歳ほどになれば、その後は十年で二、三才ずつしか年をとらなくなる。
見た目ではなく、実際年齢が三十になって初めて、両宮で行われる登用試験を受ける資格が得られるのだ。
二年で狐としては成人しても、妖かしとしては未熟だからだ。
この銀丸は、実際には三十五年ほど生きていることになる。
登用を受けて、まだ数ケ月しか過ぎないのは、試験に合格するまでに数年かかってしまったからだ。
狐は、見た目で言えば八十近くまで生きる。
つまり、実際には百五十年以上は生きる計算になるのだった。
「それでも、十九才の時に生まれたお子さんですか?」
青山が、街灯に照らされた、繁華街で遊んでいそうなごく普通の若者を、上から下までジロジロと眺めた。
実際は二十八才としても、こんな大きな(言葉の綾である念の為)子供がいるようには到底見えない。
銀丸は単純、ではなく素直に、
「家を勝手に飛び出したあと、早くに結婚したものの失敗して、親に泣きついているような在り様で、まことにお恥ずかしい限りです」
と、言って、頼りなくペコリと頭を下げたのだった。
青山も相馬も、銀丸を悪い人間ではないらしいと思ったようだ。
「でも、お父さんの立てた推理、今まで外れたことがないんです。もしこのまま事件が続いて、しかも目撃証言などがなく、行き詰まるとすれば、さっき言ったことを念頭に、そんな人物像に該当する人間がいないか、探してみて下さい」
宮は、暗示を滲ませつつ、二人の刑事に伝えるべきことを伝えていく。
「お父さんとしても、犯人像を絞り込めていて、それなのになかなか犯人が見つからず、随分あとになって犯人像通りの人間が捕まることに、やきもきしているところがありますから。息子の僕からも、刑事さんにお願いしたいんです」
宮は、縋るように二人の刑事を見上げた。
小さい子供から、無条件の信頼を受けて、何も感じない人間も珍しい。
相馬の方が手帳を出すと、何でしたかねと銀丸に、宮のさっきの言葉を尋ねた。
一度には、一つも覚えられなかったようだ。
とは言え、銀丸だって自分の考えたことではないので、覚えている訳もない。
しかも人間を前にして、緊張しきっている。
幼児期の虐待と宮に言われて「ああそうそう、虐待ね」と、相馬は気乗りしないながらも、項目を作っていったのだった。




