河童与之助 5
「目を刳るという一見異常な行動は、殺したあと子供の目が開いているのに、見られているという強迫観念を感じて、刳るという行為に繋がったのではないかと、お父さんは言うのです。もう現場検証などは終わった後なので、もし次の事件が起きるとしたら何処か、手がかりを二人で探していたのです。このままでは、まだ事件は続くに違いないって、お父さんは見ていますから」
青山も相馬も、宮の言葉に目を白黒させて、え?え?と聞き返すばかりだ。
どう見ても、子供にしか見えない男の子の口から飛び出してくる言葉とは、思えないことも大きかったが、どう見ても普通の、髪を金髪に染めた若者にしか見えない男が、探偵顔負けの推理をしている方が驚きだったと言っていい。
「あなたが、今の推理をしたのですか?」
青山がそう聞くと「はぁ」と、銀丸はいささか頼りない返事をした。
宮が、頷けと手を握って合図をしたからだ。
しかし銀丸は、嘘を吐くのが苦手なだけでなく、咄嗟の対応が利かない部分があった。
青山と相馬には、この頼りない様子の若者があれだけの推理をしたというのも信じられなかったが、実際は宮の作った筋書きだったと言っても、彼等は結局信じられなかったに違いない。
宮は、頼りない銀丸をうまくフォローしてやって、青山と相馬の疑いを消すように努めた。
「お父さんは生活能力はありませんし、頼りないですし、人と付き合うのも決してうまくはありません。お父さんは、小さい頃から難事件の解決に興味があって、お話に出てくる探偵ではなく、実際の事件の中で活躍している警察官になりたかったんだそうです」
宮は一旦言葉を切り、表向きの父である銀丸の全身を眺めて見せる。
「それは見ての通り叶いませんでしたが、事件が起こると犯人を当てるのが、お父さんの生き甲斐となっているのです。しかし、どれだけ早くに犯人像に辿りついたとしても、こんなこと人に言ったら、余計に馬鹿にされると思っているので、僕以外には言いません。それで、僕が助手役を務めているんです」
宮は、笑顔の大盤振る舞いをしている。
その無邪気そのものの宮の笑顔に、青山も相馬も心が解れたようだ。
到底、宮の言葉が子供のものでなくても、人は信じられないものから目を逸らすのが、とてもうまい。
「それにしても、若いお父さんですな。二十四、五ですか。司君は、小さく見えるけどしっかりしてるから、小学生なのかな」
青山がそう言うと宮は、またしても愛らしくにっこりと微笑んだ。
「ええ。九才です。お父さんは若く見えますが、二十八にはなります」




