縁起堂 11
火宮で第一線で活躍していた頃は、菅公の若さ故の過ちは、良いからかいの種にされていた。
「十妖のうちの半分だけでも、捕縛できたのは、やはり暁光と言うべきでしょうか?」
銀丸のその言葉に宮は、如何にもその通りだと答えた。
運が良かったのだと、宮達は思っている。
決して自分達の力だと、傲り高ぶることはない。
二体が絵となっておらず、しかも十体とも人界へと抜けていれば、いま現在、一体だって捕縛できていなかったに違いない。
五体が、神名帳に芳名できたのは運がよかったから。
残りの五体が人界に下りたことは不運、それでも五体全部が日本の一都市にいることは、幸運であった。
「青龍の辰は、相変わらず愚かであった。天狗藤吉郎は、うまく立ち回ったつもりだろうが、我等とて振り回されてばかりではない。悪党連を抱き込んで時間を稼ぐつもりであったろうが、そうは問屋が卸さぬ。烏天狗連の勝も、これまでだ。悪党連と藤吉郎を、一網打尽にできたのは良かった。冥府一の烏天狗連の親玉である、深峰の親父はもう年だからな。しかし、後継の者がいない。跡目を譲る、後継者選びで揉めた時こそ、潰し時であろうな」
銀丸は、とぼけた様子で「はぁ」と呟いた。
これが衛士頭や捕り方頭であれば「御意」と答えて、宮の最後の言葉を頭に叩き込んでおいたことだろう。
銀丸にかかっては、宮の有り難いお言葉も、日常会話に過ぎぬようである。
日常会話にしては、宮の話す内容は分かり辛いと、銀丸などは思っているかもしれなかった。
宮は、音量は下げたままでつけっ放しになっていたテレビに、ふと目を止めた。
公共放送が、七時のニュースをずっと流していた。
宮はリモコンに手を伸ばし、音量を上げた。
「その日の出来事を、やっているのか」
暫く画面を見つめていた宮は突然、目を光らせた。
「早速、それらしいのが、いるではないか」
ニュースを見る宮の顔に、満足げな笑みが浮かんだ。
其の一 河童子
男性アナウンサーが、新しいニュースですと前置きして、原稿を読み上げ始めた。
――今日の午後四時三十五分頃、××区にある住宅街の路上で、××××君、六才が、水溜りで溺死しているのが、発見されました。今日の昼までの雨でできた水溜りは、深い所でも二センチしかなかったとのことです。××君は、両目が何者かによって抜きとられたものか、ありませんでした。
銀丸は、アナウンサーの言葉を忘れない為にと、メモをとろうと思ったようだが、書く物が見つからずあたふたとしていた。




